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親から子への預金名義変更は生前贈与とみなされる?

相続税対策として生前贈与というものがあるのをご存じでしょうか。相続した際には、相続財産全体から相続人数などによって、相続税が発生したり、しなかったりします。

 

相続税を低くする税金対策として、生前(生きている間)に持っている財産を贈与して相続税を低くできる、というものが生前贈与と呼ばれるものなんです。

 

今回は、親から子への預金名義変更は生前贈与とみなしてもらえるのか、について説明していきたいと思います。

 

結論としては名義変更した瞬間に贈与が成立するわけではありません。口座についての真の預金者は誰であるのかどうかによって、その口座が子へ贈与されたものなのか、それとも名義預金になるのかが分かれていきます。

 

注意点と名義預金とはなんなのかどうかを見ていきましょう。

1、生前贈与ってなに?

そもそも贈与とは何でしょうか。言葉自体は「ぞうよ」と読みますが、簡単にいいますと「自分の持っている財産だったり物を誰かにあげること」を贈与といいます。

 

そして、その贈与を生前(生きているうちに)におこなうことを生前贈与といいます。ちなみに亡くなってから財産が渡ることを一般的には相続といいます。

 

贈与を成立させるためには、あげる人の意思表示(あげますよ、という表現)ともらう側の意思表示(もらいますよ、という表現)があって初めて成立するものになります。一方的な「あげますよ」、という意思表示だけで、もらう側が、「もらいますよ」という意思表示をしていない場合には成立しないんです。

2、相続税対策としての贈与の方法

贈与を受けた者には贈与税という国の税金が課せられます。贈与税は年間110万円までが非課税、つまり税金がかからないものなんです。なので、相続税対策として自分の持っている財産を家族等に移動しておくことで、将来発生する相続の際の税金を安くしようとする人も多いんです。

 

贈与を成立させるためには、あげる人の意思表示(あげますよ、という表現)ともらう側の意思表示(もらいますよ、という表現)が必要になります。そして現実的にはそれを証明する必要があるんです。つまりお互いに口で言っていたとしても証明ができなければ贈与だとみなされません。特に税務調査等で贈与なのか相続なのかを判断する際に、しっかりと贈与だと証明できるものを用意しておくことが一番いいんです。

 

ではどんなものが贈与だと証明できるものになるのか、ですが、これはズバリ、贈与契約書が一番いいでしょう。「あげる・もらう」という意思表示が客観的に証明できます。契約書なんて作成が難しそう、と思われる方もいるかも知れませんが、契約書ではなくても合意書的なものでも、ないよりはあったほうがいいでしょう。

 

要はきちんと書面にして残しておくことが最重要となり、書面の形式は極論言えばなんでもいいのです。とはいってもやはり一番客観的に証明力が高いのは贈与契約書になりますので、ご自分で作成が難しければ専門家に依頼するのもいいでしょう。

 

専門家といっても相場的には弁護士よりかは行政書士のほうが比較的コストは低いみたいです。間違った形で生前贈与をしてしまい、それを証明できなくて相続の際に多額の税金が課されてしまった、とならないようにきちんと証拠を残しておくほうがいいでしょう。

3、名義預金に気をつけろ!

名義預金ってご存じでしょうか。これは口座名義人と口座を管理等している真の預金者が別のものである口座のことをいいます。どういうことかというと、父親が子供に内緒で子供名義の預金口座を開設し、そこにお金を入れているような場合が典型的なものになります。

 

これは、口座名義人は子供ですが、その口座を管理等している真の預金者は父親ということになります。これが名義預金と呼ばれる口座になります。この名義預金の怖いところですが、この口座の所有者は新預金者である父親のものと判断されます。父親のものと判断されると何が怖いかといいますと、父親が亡くなった時には、父親の財産として扱われ、相続財産として相続税の対象になるということなんです。

 

つまり、例えば父親が相続税対策で、子名義で口座を開設しそこに預金していたとしても、それは贈与ではないと判断されすべて無駄になってしまうということです。怖いですねぇ。なぜ贈与だと判断されないのか、それは受け取る側が「もらうよ」という意思表示がないからなんですね。では「もらうよ」という意思表示さえしておけばいいのかというと、そんな簡単なものでもありません。

 

仮に「もらうよ」という意思表示があった場合でも、口座の通帳やキャッシュカード・届出印等の管理を父親が継続している場合には、それは偽装贈与(贈与したと嘘をつくこと)とされて、脱税の疑いまでかけられてしまいます。そこで、名義預金だと判断される基準を下記に記載しておきますので、相続税対策としてするならばきちんと贈与の形をとりましょう。

① 管理者しているのは誰か

→これは、通帳やキャッシュカード、届出印を管理しているのは誰であったかどうか、です。

② 口座名義人はその口座について知っているか

→これは言葉のままですね、その口座の存在について口座名義人は知っているのかどうかです。

③ その預金の出所はどこか

→預貯金口座の中にあるお金の出所、つまり原資ですね、はどこなのかどうかです。贈与を受けたのならば、それを証明する必要があります。

4、親から子への預金名義変更は生前贈与とみなしてもらえる?

それでは最後に、親から子への預金の名義変更は生前贈与とされるのかどうかについてです。結論としては名義変更した瞬間に贈与が成立するわけではありません。口座についての真の預金者は誰であるのかどうかによって、その口座が子へ贈与されたものなのか、それとも名義預金になるのかが分かれていきます。

 

贈与だと判断されるためには、贈与契約書や通帳・キャッシュカード・届出印等の管理もきちんと子供へ渡すことが必要です。

 

いかがでしたでしょうか。今回は親から子への預金の名義変更は生前贈与とされるのかどうかにについて説明をさせていただきました。単純に名義を変えることで贈与とはされない難しさもあったものと思います。贈与の証拠を残し、管理等も移し、そして年間110万円までの金額であれば贈与税はかからないものとなります。贈与契約書の作成や相続税と贈与税を比較して、どちらがいいかどうか等、判断に困ることがあれば士業の専門家に相談してみることをお勧めいたします。