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技能実習生の外部監査人の要件や資格について解説
「技能実習」は、技能・技術・知識を外国人に伝授し、国際貢献を目的とした在留資格です。技能実習生を受け入れる企業は、今後ますます増えていくことが予想されます。
技能実習制度を利用する場合、団体監理型の方法をとる企業が多いです。団体監理型で技能実習生を受け入れるには、監理団体として許可される必要があります。
許可されるには、外部監査人を設置しなければいけません。外部監査人の設置を検討している方の中には、
「外部監査人とは?」
「要件は?」
「資格が必要?」
と疑問をお持ちの方もいるでしょう。この記事では、外部監査人の要件や資格について詳しく解説します。ぜひ、最後までお読みください。
外部監査人とは
日本の技能・技術・知識を発展途上国に移転し、その地域の経済発展を担う人材育成に協力することを目的として、外国人技能実習制度が始まりました。制度を利用する企業は、外国人実習生と雇用契約を結ぶために、下記のいずれかの方法を選択します。
1. 企業単独型
企業が直接、雇用契約をむすぶ
2. 団体監理型
営利目的ではない団体が、技能実習生を受け入れて実習を行う
団体監理型を選択した場合、監理団体としての許可が必要です。監理団体になるためには、下記の要件を満たしていなければなりません。
- ● 営利を目的としない法人である(例えば、事業協同組合や公益社団法人など)
- ● 事業を適正に行う能力がある
- ● 監理事業を健全に遂行できるだけの財産の基礎がある
- ● 個人情報を適正に管理できる
- ● 外部監査または外部役員の設置
- ● 基準を満たす外国の送出機関と、実習生の取り次ぎについての契約を交わしている
- ● 第3号を行う場合は、優良要件を満たしている
- ● 監理事業を定期制に遂行できる能力がある
監理団体の審査は、外国人技能実習機構が行います。書類審査だけではなく、事務所を視察される場合もあります。要件の1つである外部監査人もしくは外部役員の設置は、審査において重要なポイントです。
監理団体の手続き自体は、難しいものではありません。しかし、外部監査人や外部役員を探すのには、時間がかかると予想されます。新たに監理団体の設立を検討している方は、早めに準備を始めるのをおすすめします。
ここでは、外部監査人について見ていきましょう。
概要
技能実習制度における監理団体は、実習実施者に対して適切な指導・監督を行う中立的な立場で運営しなければいけません。監理団体とは、外国人技能実習生の募集から受入、雇用管理までを行う団体を指します。
監理団体の運営が正しく行われているかを、外部からチェックする機能として、外部監査人もしくは外部役員の設置が義務付けられています。
外部監査人とは、監理団体から選任された法人または個人で、法人外部から監査をする者です。外部監査人は、誰でもなれるわけではありません。技能実習法や入国管理法、労働関係法令などの知識があり、外国人の雇用管理の経験を持つ者が適任とされています。例えば、行政書士や社会保険労務士などの国家資格を有している方がなるケースが多いです。
指定外部役員との違い
指定外部役員とは、監理団体の外部役員の中から指定され、法人内部において監査をする者です。
監理団体の各事業所について、監査などの業務の遂行状況を、3カ月に1回以上確認する役割を担います。具体的な業務は、以下の通りです。
- ● 責任のある役員と監理責任者からの報告を受ける
- ● 監理団体の各事業所の設備を確認
- ● 監理団体の各事業所の帳簿書類を閲覧
- ● 上記の結果をまとめた報告書を作成
養成講習
外部監査人になるには、過去3年の間に主務大臣が認めた養成講習機関で実施される講習を受講し、修了していなければいけません。
受講する講義の種類は、監理責任者等講習です。講義・理解度テストを含めて、6時間かかります。
具体的な講義内容は、以下の通りです。
- ● 技能実習法
- ● 入国管理法
- ● 労働関係法令
- ● 監理団体としての職務遂行上の留意点
- ● 理解度テスト
理解度テストに合格した方には、受講証明書が発行されます。合格基準は、正答率80%以上です。不合格の方は、別日に改めて再受講し、理解度テストで合格点以上を取得しなければいけません。
下記は、東京で受講が可能な講習の実施機関です。
- ● 公益社団法人全国労働基準関係団体連合(03-5283-1030)
- ● 公益社団法人国際人材協力機構(03-4306-1156)
- ● 株式会社ウェルネット(03-6380-1512)
- ● 株式会社PMC(058-5812-0688)
- ● 株式会社アプエンテ(03-6205-6642)
そのほかの地域での実施機関および日程の詳細は、厚生労働省(こちら)または出入国在留監理庁(こちら)のホームページから確認できます。
講習会への申し込みに関する問い合わせは、各養成講習機関に直接ご連絡ください。
外部監査人になれない者
外部監査人は、外部性を保たなければいけないため、下記のような者はなれません。
- 1. 実習監理を行う対象の実習実施者またはその現役、もしくは過去5年以内に役員・職員だった者
- 2. 過去5年以内に実習監理を行った実習実施者の現役、または過去5年以内に役員・職員だった者
- 3. 上記1、2の配偶者または二親等以内の親族
- 4. 監理団体の現役または過去5年以内に役員・職員だった者
- 5. 監理団体の構成員またはその現役、または過去5年以内に役員・職員だった者
- 6. 傘下以外の実習実施者またはその役員・職員である者
- 7. ほかの監理団体の役員・職員である者
- 8. 監理団体に取り次ぎを行う外国の送出機関の現役、または過去5年以内に役員・職員だった者
- 9. 監理団体の許可の欠格事由に当てはまる法人・監理団体の許可に係る役員関係の欠格事由に当てはまる個人
- 10. 過去に技能実習に関して不正などを行った者・外部監査の公正が害されるおそれがあると認められる者
外部監査人の要件
要件は、以下の通りです。
- ● 過去3年以内に監理責任者等講習を受講し、修了した者
- ● 監理団体から選任を受けた法人・個人のいずれか
- ● 外部監査人になれない者の条件に当てはまらない者
前述した通り、外部監査人になれない者の条件には「監理団体の許可の欠格事由に当てはまる法人・監理団体の許可に係る役員関係の欠格事由に当てはまる個人」があります。ここでいう欠格事由とは、技能実習法第26条の内容を指します。
下記に当てはまる方は、監理団体としての許可がおりないので注意してください。
1. 関係法令による処罰を受けた
- ● 技能実習法、そのほか出入国または労働に関する法律に違反し、罰金刑に処された
- ● 社会保険・労働保険各法において事業主としての義務に違反し罰金刑に処された
- ● 役員のうち禁錮以上の刑に処された
- ● 役員のうち暴力団関係法・刑法などに違反し、罰金刑に処された
2. 能実習法による処分を受けた
- ● 監理団体の許可を取り消された日から5年を経過しない
- ● 監理団体の許可の申請日前5年以内に、出入国または労働に関する法律に対して不正または不当な行為をした
3. 申請者の行為能力・役員の適格性について
- ● 技能実習に関する業務を適正に行うことができない
- ● 行為能力に制限がある
- ● 未成年の法定代理人で欠格事由に該当する
4. 暴力団排除について
- ● 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない
- ● 暴力団員などが事業活動を支配する
- ● 暴力団員などを業務に従事させる、または業務の補助者として使用する恐れがある
上記の要件を踏まえると、外部監査人に選定される人は、下記のような人物が適任と言えます。
- ■ 事業協同組合などと利害関係がない第三者
- ■ 技能実習法・入国管理法・組合関連法規などに詳しい
- ■ 守秘義務などがある法律関連の国家資格者(行政書士や社会保険労務士など)
要件には、国家資格者であることは定められていません。しかし、国家資格者以外の人に外部監査人を依頼する場合は、監査人としての経歴や資質があるかなどを厳しく審査されます。
外部監査人の職務内容
ここでは、具体的な職務内容について見ていきましょう。
業務
1. 監理団体の各事業所について、監査などの業務の遂行状況を3カ月に1回以上の頻度で確認する
具体的な業務は、以下の通りです。
- ● 責任のある役員または監理責任者から報告を受ける
- ● 監理団体の各事業所の設備の確認
- ● 監理団体の各事業所の帳簿書類の閲覧
- ● 上記の結果をまとめた報告書を作成・監理団体へ提出
2. 監理団体が行う実習実施者への監査に年1回以上同行し、その結果をまとめた報告書を作成・監理団体へ提出する
監理団体が行う監査の方法は、以下の通りです。
- ● 技能実習の実施状況を実地に確認
- ● 技能実習責任者または指導員から報告を受ける
- ● 技能実習生の4分の1以上と面談
- ● 実習実施者の各事業所の設備・帳簿書類を確認
- ● 技能実習生の宿泊施設などの生活環境を確認
技能実習において、問題が発生しやすいポイントに注意して確認する必要があります。例えば、賃金の不払い・労働時間の偽装・実習計画と異なる業務などが挙げられます。
監査項目
下記の項目を基に、3カ月に1回以上の頻度で監査を行います。
1. 監理費
例えば、次のような項目をチェックします。
- ● 実習実施者へ用途や金額をあらかじめ伝えた上で徴収している
- ● 徴収した職業紹介費が、実習実施者と技能実習生の間における雇用契約に係る事務に要する金額(人件費・交通費・送出機関へ払う費用など)をオーバーしていない
- ● 徴収した講習費が、入国後の講習に要する金額(施設使用料・講師や通訳への謝金・教材費など)をオーバーしていない
- ● 徴収した監査指導費が、技能実習の監理に要する金額(人件費・交通費など)をオーバーしていない
- ● 徴収したそのほかの諸経費が、技能実習の適正な実施と技能実習生の保護に要する金額をオーバーしていない
2. 業務
例えば、次のような項目をチェックします。
- ● 実習計画に沿って技能実習が行われている
- ● 入国後の講習が計画に沿って行われている、かつ講習期間中に技能実習生を業務に従事させていない
- ● 技能実習生の人権を侵害する行為を行っていない
- ● 技能実習生からの相談に適切に応じ、実習実施者および技能実習生への助言・指導などの必要な措置が講じられている
- ● 事業所内に、監理団体の業務に関する規定を掲示している
- ● 実習実施者が労働関係法令に違反しないよう、管理責任者に必要な指導をしている
3. 書類
例えば、次のような項目をチェックします。
- ● 実習実施者および技能実習生の管理簿が適切に作成され、取りそろえられている
- ● 管理費に関する管理簿が適切に作成され、取りそろえられている
- ● 雇用契約に関する管理簿が適切に作成され、取りそろえられている
- ● 実施状況の監査に関する文書が適切に作成され、取りそろえられている
- ● 入国前後の講習における実施状況を記録した資料が適切に作成され、取りそろえられている
- ● 訪問指導の内容を記録した資料が適切に作成され、取りそろえられている
4. 保護
例えば、次のような項目をチェックします。
- ● 暴行・脅迫・監禁などにより技能実習を強制していない
- ● 保証金の徴収や違約金を定める契約がない
- ● 不当な財産管理(預金通帳の管理など)をしていない
- ● 旅券・在留カードを保管していない
- ● 技能実習生の私生活の自由を不当に制限していない
5. その他
例えば、次のような項目をチェックします。
- ● 監理団体の許可証を各事業所に備え付けている
- ● 実習の実施が困難になり、技能実習生が引き続き実習を希望する場合は、実習が継続できるようそのほかの監理団体と連絡調整を行う
- ● 法令違反の有無など
- ● そのほかの監理事業を実施するにあたっての問題や課題
まとめ
この記事では、外部監査人の要件や資格について解説しました。
監理団体の許可を得るには、外部監査人の設置が必要です。外部監査人には、監理団体の運営が正しく行われているかを、外部からチェックする役割があります。3カ月に1回以上の監査をし、結果を報告書にまとめる業務を担います。
外部監査人は、監理団体から選任されますが、誰でもなれるわけではありません。外部性を保つために、細かく要件が定められています。制限が厳しいため、選任相手を探すのが難しいと感じる方も多いでしょう。例えば、守秘義務があり関係法令に詳しい、行政書士や社会保険労務士などの国家資格を有している方が適任と言えます。
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