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法的保護講習の講師のなり方とは?必要な資格なども解説
外国人の方が第1号技能実習生として日本に入国した場合、監理団体が行う「法的保護講習」を受けることとなります。この講習は、専門的な知識を持った講師が実施する必要があり、監理団体内部で講師を用意できなかった場合は、外部講師を招いての講義ができます。
ただ、これらの講師は誰でもなれるというわけではなく、「資格による専門性の保有が認められていること」という前提があります。そこで当記事では、法的保護講習の講師になるための方法と、必要な資格について解説していきます。
法的保護講習とは
法的保護講習では、出入国や労働に関する法令に違反していることを知った時の対応方法や、法的保護を受けるために必要な情報について技能実習生に伝えていきます。
この講習は、さまざまな法律を扱うため、「専門的な知識を有する者による講習でなければならない」とされています。
ただ、あくまでも専門的な知識を有する者による講習が必要なのは「法的保護講習」であり、入国後講習のすべてが該当するわけではないため、混同しないよう注意が必要です。
ここからは、入国後講習の概要と法的保護講習の位置付けについて解説していきます。
概要
第1号技能実習生として来日した外国人は、入国後に講習を受けることが必須となっています。入国後講習については、さまざまな講習を受けることが義務となっています。
その講習内容は以下の通りです。
- ・1. 日本語
- ・2. 日本での生活一般に関する知識
- ・3. 入管法や労働基準法、不正行為への対応方法など
- ・4. 日本での円滑な技能の習得などに資する知識
この中で、専門的な知識を持った講師が行う必要があるのは「3.入管法や労働基準法、不正行為への対応方法など」です。
この部分を説明するためには各種法律知識が必要となり、一定の資格を保有している人に外部講師として依頼がかかることになります。
法的保護講習の講師になるには
前述の通り、法的保護講習の講師は誰でもなれるわけではありません。技能実習生の法的保護を目的とするため、法律についての深い専門知識を持っていることが必須です。
続いて、法的保護講習の講師になるために必要となる資格や要件について解説します。
外部講師になれる者
技能実習生への法的保護講習を行う外部講師になれる者の要件として、「入管法や労働関係法、不正行為への対応、実習生への法的保護についての知識を十分に有していて、それを説明することができる者」とされています。
具体的にいうと、下記の資格保有者が該当します。
- ● 行政書士
- ● 社会保険労務士
- ● 弁護士
- ● 国や地方公共団体の職員
行政書士は「主に行政への許認可申請についての書類作成、相談業務などを行う専門家」、社会保険労務士は「社会保険や労働関連を取り扱う人事や労務管理の専門家」です。
ただ、一つの資格があればすべての法的保護講習の内容が網羅できるというわけではないので、どのような専門的な知識が必要なのか把握しておく必要があります。
外部講師の要件
たとえば、行政書士の専門分野は「技能実習法令」「入管関係法令」で、ビザを取り扱う入管法関係に詳しい申請取次行政書士が該当します。
また、「労働関連法令」「その他法的保護に関する法令」であれば、労働関係法令全般の専門家である社会保険労務士が該当します。
行政書士と社会保険労務士における専門性の保有についてのパターンは以下の通りです。
技能実習法令 |
入管法令 |
労働関係法令 |
その他法的保護に関する法令 |
|
---|---|---|---|---|
行政書士 |
– |
– |
– |
– |
申請取次行政書士 |
〇 |
〇 |
– |
– |
社会保険労務士 |
– |
– |
〇 |
〇 |
〇 資格による専門性の保有が認められる
- 資格から専門性の度合いが読み取れない
また、ここでは行政書士と社会保険労務士について説明しましたが、弁護士や国・地方公共団体の職員に関しても専門性を有していることを証明できなければ外部講師となることは難しいでしょう。
逆に、講習の全般について専門性を有していることが示せれば、外部講師としての依頼が増えていくと考えられます。
講義科目
法的保護講習の時間の目安は各科目ごとにそれぞれ2時間ずつとなっており、合計で8時間実施する必要があります。
ただし、通訳を付けて講習を実施する場合は、通訳に要する時間も考慮して合計8時間の内容を行わなければなりません。具体的な講義科目と講義時間の内訳は以下の通りです。
講義内容 |
講義時間 |
---|---|
技能実習法令 |
2時間 |
入管法令 |
2時間 |
労働関係法令 |
2時間 |
その他法的保護に必要となる情報 |
2時間 |
計 |
8時間 |
※通訳を付ける場合は、通訳に要する時間も考慮する
また、法的保護講習の内容として必ず含めなければならない事項は下記の通りです。
- ・技能実習法令
- ・入管法令
- ・労働関係法令
- ・実習実施者や監理団体が技能実習法令などの規定に違反していることを知った際の対応方法
- ・賃金未払いに関する立替払制度や休業補償制度
- ・労働安全衛生や労働契約に関する知識
- ・厚生年金の脱退一時金制度
- ・やむを得ない理由で転籍をしなければならなくなった際の対応
上記の「実習実施者や監理団体が技能実習法令などの規定に違反していることを知った際の対応方法」としては、トラブルがあった際の相談先などを伝えていきます。
実習生の中には、トラブルがあった時の相談先についての情報が伝わっておらず、不当な状況で働かざるを得ないようなケースもあるため、ここは特に丁寧な説明が求められます。
そして、法的保護講習を行うにあたって、「技能実習生手帳」を教材の一つとして必ず使用することとされており、その他の使用テキストは任意です。
技能実習生手帳は、技能実習生の入国時に入国審査官を介して配布されているもので、「技能実習生の心構え」「出入国や労働関係法令」「行政相談窓口の案内」などが記載されています。
法的保護講習は丸1日かけて行うケースが多く、外国人である技能実習生にとっては異国の法律を1日で把握しなければなりません。そのため、条文をそのまま読み上げるような内容ではなく、分かりやすい言葉で重点を絞った講義が求められます。
参考:出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」
https://www.mhlw.go.jp/content/000622778.pdf
まとめ
ここまで、法的保護講習の講師になるための方法と、必要となる資格について解説してきました。
法的保護講習には、大きく
・これまで過酷な労働と最低賃金に満たない条件で労働してきた外国人労働者を保護する目的
・外国人技能実習生が高度な技術・技能等の取得をすることで、技能実習生の母国等での経済発展に寄与する目的
の2つの目的があります。
そのため、法的保護講習では、各法令に対して深い知見を持った専門家による指導が必須となっています。特に、実習生は労働の対価である報酬について関心が強いケースが多いため、総支給額から控除する税金や保険料についての具体的な説明ができることが望ましいです。
また、技能実習生は少なからず不安な気持ちを持って講習に臨みます。丁寧かつ要点を押さえた講習を行うよう心がけましょう。分かりやすい講習を行うことで受講者からの評価も得られ、次の依頼にもつなげやすくなります。