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外国人技能実習生の外部監査人とは?選任方法と導入方法を解
外国人技能実習生の管理団体は、外部役員もしくは外部監査人をおき、管理団体が実習実施者に対して適正に管理を行っているかを、外部からチェックするように法令で定められています。
外国人技能実習生の管理団体における、外部役員や、外部監査人とはどのような人がなるのでしょうか。
また、外部役員や外部監査人が行う業務とはどのような業務なのでしょうか。
この記事では、外国人技能実習生の管理団体における、外部役員と外部監査人について、その選任方法と導入方法を、要件などを解説します。
外部監査人とは
ここでは外部監査人についての概要及び職務、そのほかについて説明します。
概要
技能実習制度の団体管理型受入れ機関である管理団体は、技能実習の適正な実施と実習生の保護の責任を担っています。
そのため、管理団体には厳しい許可基準が法令で定められており、そのなかの一つに外部役員もしくは外部監査の設置があります。
<参照:外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律第25条第1項第5号>
職務
外部監査人の職務は以下のとおりです。
業務
外部監査人は、管理団体が実習実施者に対して行うべき監査等の業務が、適正に実施されているかについての監査を、管理団体である法人の外部から行います。
実際に行う業務は、
・監理団体の各事業所について監査等の業務がどのように行われているかを3か月に1回以上確認する
・監理団体が行う実習実施者への監査に監理団体の各事業所につき1年に1回以上同行して確認を行う
の2点です。
そして、どちらもその結果について書類を作成しなければなりません。
監査の項目
外部監査人の監査項目は以下の5項目に関して細かく監査を行います。
- ● 管理費
- ● 業務
- ● 書類
- ● 保護
- ● そのほか
監査を行った場合は、外部監査報告書を作成します。
監査項目は以下のとおりです。
管理費 |
団体監理型実習実施者等へあらかじめ用途及び金額を明示した上で徴収しているか |
---|---|
徴収した職業紹介費が団体監理型実習実施者等と団体監理型技能実習生等との間における雇用関係の成立のあっせんに係る事務に要する費用の額を超えていないか ※募集及び選抜に要する人件費、交通費、外国の送出機関へ支払う費用その他の実費に限る |
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徴収した講習費が、入国後講習に要する費用の額を超えていないか※監理団体が支出する施設使用料、講師及び通訳への謝金、教材費、第1号団体監理型技能実習生に支給する手当その他の実費に限る。 |
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徴収した監査指導費が、団体監理型技能実習の実施に関する監理に要する費用の額を超えていないか ※団体監理型実習実施者に対する監査及び指導に要する人件費、交通費その他の実費に限る |
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徴収したその他諸経費が、その他技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に資する実費費用の額を超えていないか |
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業務 |
団体監理型実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせているか等、監理責任者の指揮の下、法律に従い3か月に1 回以上の頻度で監査を行うほか、実習認定の取消し事由に該当する疑いがあると認めたときは、直ちに監査を行っているか |
第1号団体監理型技能実習に係る実習監理にあっては、監理責任者の指揮の下、1か月に1回以上の頻度で、団体監理型実習実施者が認定計画に従って団体監理型技能実習を行わせているかについて実地による確認を行うとともに、団体監理型実習実施者に対し必要な指導を行っているか |
|
技能実習を労働力の需給の調整の手段と誤認させるような方法で、団体監理型実習実施者等の勧誘または監理事業の紹介をしていないか |
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入国後講習を認定計画に従って実施しており、かつ、入国後講習の期間中に団体監理型技能実習生を業務に従事させていないか |
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技能実習計画作成の指導に当たって、団体監理型技能実習を行わせる事業所及び団体監理型技能実習生の宿泊施設を実地に確認し、法令に規定する観点から指導を行っているか |
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技能実習生の帰国旅費を負担するとともに技能実習生が円滑に帰国できるよう必要な措置を講じているか ※第3号技能実習の開始前の一時帰国を含む |
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実習監理を行っている団体監理型技能実習生の人権を著しく侵害する行為を行っていないか |
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団体監理型技能実習生との間で認定計画と反する内容の取決めをしていないか |
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実習監理を行っている団体監理型技能実習生からの相談に適切に応じるとともに、団体監理型実習実施者及び団体監理型技能実習生への助言、指導その他の必要な措置が講じられているか |
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事業所内の一般の閲覧に便利な場所に、監理団体の業務に係る規程を掲示しているか |
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団体監理型実習実施者が、団体監理型技能実習に関し労働関係法令に違反しないよう、監理責任者に必要な指導を行わせているか |
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団体監理型実習実施者が、団体監理型技能実習に関し労働関係法令に違反していると認めるときは、監理責任者に是正のための必要な指示を行わせているか |
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労働関係の法令違反を認め、是正の指示を行ったときは、速やかに、その旨を関係行政機関に通報しているか |
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該当がある場合、告示で定める基準や方法に従って業務を行っているか |
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書類
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団体監理型実習実施者及び団体監理型技能実習生の管理簿が適切に作成され、備え付けられているか |
監理費に係る管理簿が適切に作成され、備え付けられているか |
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団体監理型技能実習に係る雇用関係の成立のあっせんに係る管理簿が適切に作成され、備え付けられているか |
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団体監理型技能実習の実施状況に係る監査に係る文書が適切に作成され、備え付けられているか |
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入国後講習及び入国前講習の実施状況を記録した書類が適切に作成され、備え付けられているか |
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訪問指導内容を記録した書類が適切に作成され、備え付けられているか |
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団体監理型技能実習生から受けた相談の内容及びその相談内容への対応を記録した書類が適切に作成され、備え付けられているか |
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外部監査人による監査に係る文書が適切に作成され、備え付けられているか |
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該当がある場合、告示で定める基準や方法に従って書類を作成し備え付けているか |
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保護
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暴行・脅迫・監禁等により技能実習を強制していないか |
保証金の徴収・違約金を定める契約等がないか |
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預金通帳の管理など不当な財産管理を行っていないか |
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旅券・在留カードを保管していないか |
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技能実習生の私生活の自由を不当に制限していないか |
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そのほか
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監理団体の許可証を各事業所に備え付けているか |
技能実習の実施が困難となった場合、技能実習生が引き続き技能実習を行うことを希望するものが技能実習を行うことができるよう、他の監理団体等との連絡調整等を行っているか |
<参照:出入国在留管理庁技能実習制度運用要領・各種様式等「第4-12号様式 外部監査報告書」>
同行調査の場合は、監査が適正に行われているかについて確認を行い、報告書を提出します。
<参照:出入国在留管理庁技能実習制度運用要領・各種様式等「第4-13号様式 外部監査報告書(同行監査)」>
報酬
報酬の規定は法令には定められていません。
管理団体と外部監査人双方の合意のもとに取り決めを行います。
選任の要件
外部監査人の選任要件はありません。
ただし、外部役員になれない要件に該当する方は外部監査人にはなれません。
また、法人であれば監理団体の許可の欠格事由に該当する法人、個人では監理団体の許可に係る役員関係の欠格事由に該当する者でなければ外部監査人になれます。
指定外部役員との違い
外部監査人と指定外部役員との違いは、「管理団体に所属しているかどうか」です。
法人内部から、管理団体が実習実施者に対する監査等の業務が適正に実施されているかを確認するのが外部役員です。
法人外部から、実習実施者に対する監査等の業務が適正に実施されているかを確認するのが外部監査人です。
どちらも指定された講習の受講が必須です。
監理団体の各事業所について監査等の業務がどのように行われているかを3か月に1回以上確認し、書類を作成することについては、外部監査人も外部役員も同様です。
外部役員は管理団体の役職員であることから、外部監査人が行わなければならない、監理団体が行う実習実施者への監査の同行については、定められていません。
<参照:外国人技能実習機構「外国人技能実習適正実施マニュアル」>
養成講習
技能実習制度では、管理団体の監理責任者及び、指定外部役員または外部監査人、実習実施者の技能実習責任者について、3年ごとに主務大臣が適当と認めて告示した養成機関による養成講習の受講が義務付けられています。
指定外部役員及び外部監査人が受ける養成講習の講習機関は以下のとおりです。
養成講習機関名 |
所在地 |
電話番号 |
---|---|---|
公益社団法人全国労働基準関係団体連合会 |
東京都千代田区内神田1-12-2 |
03-5283-1030 |
公益財団法人国際人材協力機構 |
東京都港区芝浦2丁目11番5号 |
03-4306-1156 |
株式会社ウェルネット |
東京都新宿区新宿2丁目5番12号 |
03-6380-1512 |
株式会社PMC |
東京都新宿区新宿5丁目7番7号 |
050-5812-0688 |
特定非営利活動法人ビザサポートセンター広島 |
広島県広島市中区上八丁堀8番26-803号 |
082-962-7744 |
特定非営利活動法人グローバルライフサポートセンター |
福岡県福岡市博多区上川端町12番28号 |
092-283-8891 |
株式会社アプエンテ |
東京都新宿区歌舞伎町2丁目46番3号 |
03-6205-6642 |
<参照:厚生労働省「外国人技能実習制度における養成講習について」>
外部監査人になれない者
外部監査人は以下に該当してはいけません。
外部役員の選任要件と同じ |
①実習監理を行う対象の実習実施者またはその現役若しくは過去5年以内の役職員 |
---|---|
②過去5年以内に実習監理を行った実習実施者の現役または過去5年以内の役職員 |
|
③①②の者の配偶者または二親等以内の親族 |
|
④申請者(監理団体)の現役または過去5年以内の役職員 ※監理事業に係る業務の適正な執行の指導監督に関する専門的な知識と経験を有する役員(専門的な知識の経験に基づき現に監理事業に従事している員外役員)及び指定外部役員に指定されている役員は外部役員として認められる。 |
|
⑤申請者(監理団体)の構成員(申請者が実習監理する団体監理型技能実習の職種に係る事業を営む構成員に限る。)またはその現役または過去5年以内の役職員 |
|
⑥傘下以外の実習実施者またはその役職員 |
|
⑦他の監理団体の役職員 ※監理事業に係る業務の適正な執行の指導監督に関する専門的な知識と経験を有する役員(専門的な知識の経験に基づき現に監理事業に従事している員外役員)及び指定外部役員に指定されている役員は外部役員として認められる。 |
|
⑧申請者(監理団体)に取次ぎを行う外国の送出機関の現役または過去5年以内の役職員 |
|
⑨過去に技能実習に関して不正等を行った者など、外部役員による確認の公正が害されるおそれがあると認められる者 |
そのほか、法人であれば、管理団体の許可の欠格事由に該当する者。
個人であれば、監理団体の許可に係る役員関係の欠格事由に該当する者も外部監査人にはなれません。
<参照:法務省 入国管理局 厚生労働省 人材開発統括官「新たな外国人技能実習制度について」、厚生労働省「技能実習制度 運用要領」>
外部監査人を導入したい場合
技能実習の管理団体として許可申請を行う場合に必要な、外部監査人を導入しようとするには、どのようにすればよいのでしょうか。
ここでは外部監査人を導入したい場合について説明します。
導入方法
外部監査人を導入する場合、外部監査人になれない要件にあてはまる人物への依頼はできません。
そのため、管理団体の役員や、その家族等に依頼はできず、監査項目も難解で専門性が高いため、友人等にも到底依頼できるものではありません。
そこで考えられるのは、技能実習制度に詳しい専門家へ外部監査人を委託する方法です。
管理団体に員外役員や、員外理事がいる場合には、欠格事項に該当しなければ外部監査人になれます。
同様に、顧問弁護士、公認会計士、社会保険労務士、税理士、行政書士等などがいる場合にも、欠格事項に該当しなければ外部監査人になれます。
また、外部役員や外部監査人は、欠格事項に該当しなければ、複数の団体の依頼を受けて役員や監査人をすることが可能となっています。
ただし、外部役員と外部監査人の兼任はできませんので、注意が必要です。
<参照:外国人技能実習機構「よくあるご質問(監理団体の許可申請関係)」>
導入のポイント
外部監査人を導入しようとした場合、一番依頼しやすいと考えられるのは、既に団体と関係がある顧問弁護士、公認会計士、社会保険労務士、税理士、行政書士などへ依頼する方法でしょう。
しかし、注意が必要なのは、公認会計士や社会保険労務士、税理士についてはそれぞれの専門分野である、会計、労務、税務の監査ではないので、それらの方へ外部監査人を依頼するのは難しいことです。
そのため、外部監査人として依頼するのは、行政書士や弁護士になると考えられます。
技能実習の監査は専門性も問われるため、特に外国人技能実習法、入管法に詳しい弁護士や行政書士への依頼が望ましいでしょう。
まとめ
外国人技能実習の管理団体には、外部役員もしくは外部監査人を置くことが定められています。
外部監査人を導入しようとする場合、管理団体の役員や実習実施者、その家族等は欠格事項に該当するため依頼ができません。
また、法令に基づいて行われる監査を実施するため、専門性が高く、友人等へ依頼できるものではありません。
外国人技能実習の管理団体として、外部監査人を導入する際には、外国人技能実習法や、入管法に詳しい行政書士や、弁護士へ依頼することをおすすめします。