建設業許可を取得すると、500万円未満という請負金額の限定が外れ、大きな工事を請け負うことが可能になります。
しかしその反面、許可を取得することで守らなければならない義務、しないといけない手続きが増えるということもあります。
また、これらに違反した場合は最悪の場合事業継続が困難になるなど、相応のリクスがともなります。
ぜひ、許可を受けた建設業者としてどのような義務を負っているのかについては、正しく認識をして法令遵守を意識しましょう。
許可建設業者に課せられた5つの義務
許可を受けた建設業者には次の5つの義務が課せられます。
1.許可行政庁への届出義務
2.標識の掲示、帳簿の備え付け・保存及び営業に関する図書の保存義務
3.契約締結に関する義務
4.工事現場における施工体制等に関する義務
5.下請代金の支払いに関する義務
1 許可行政庁への届出義務
建設業許可を受けた建設業者は、許可申請時に申告した内容から重要事項に変更があった際にはその都度変更を届け出るほか、毎事業年度終了後には、4ヶ月以内に「変更届出書」を提出しなければなりません。
届出期限:2週間以内
•経営業務の管理責任者を変更
•経営業務の管理責任者の氏名変更
•専任技術者を変更
•専任技術者の氏名変更
•代表者の変更
•経営業務の管理責任者、専任技術者がいなくなった
•欠格要件に該当するに至った
届出期限:30日以内
•商号又は名称の変更
•営業所の名称、所在地、業種の変更
•資本金の変更
•役員、支配人の変更
•役員、個人事業主、支配人の氏名変更
•営業所の新設又は廃止
•廃業
2 標識の掲示、帳簿の備え付け・保存及び営業に関する図書の保存義務
まず、建設工事が許可を受けた適切な業者によって建設工事がされていることがわかるように、建設業許可業者は、営業所や現場に許可票(標識)を掲示しないといけません。
なお、許可票のサイズや記載事項は決まっています。
引用元:国土交通省「建設業法令遵守 ハンドブック」P14
次に、建設業許可業者は請負契約内容を整理した「帳簿」や「営業に関する図書」といった資料を保存する義務があります。
※発注者と締結した住宅新築工事に係る帳簿は10年間、それ以外は5年間、完成図等の図書は10年(元請のみ)
なお、帳簿には法定書式はありませんが、記載しなければ行けない事項が多く、参考書式を使用することでもれなく管理ができるでしょう。
引用元:国土交通省「建設業法令遵守 ハンドブック」17P
3 契約締結に関する義務
契約締結に関する義務というのは、「着工前」「書面」契約の徹底や、契約書面への記載必須事項の記載といった義務を指します。この他、元請けの立場を利用しての下請けに不利な契約の締結や、資材等の購入先を指定し請負人の利益を害するといった行為もしてはいけないとされています。
4 工事現場における施工体制等に関する義務
次に、工事現場における施工体制等に関する義務というのは、さらに「次の4つに分類されます。
1)工事現場への主任技術者等の配置義務
建設業許可業者は、元請下請に関係なく、全ての工事現場に任技術者・監理技術者(=配置技術者)を配置しないといけません。
2)建設工事現場への主任技術者等の専任配置義務
個人住宅以外のほとんどの建設工事では、請負代金の額が 3,500万円(建築一式工事の場合7,000 万円)以上の工事の配置技術者は、専任で他の工事現場との兼務ができないとしています。
3)一括下請負の禁止
請け負った建設工事を一括して下請負する、下請負される、の両方が禁止されています。
4)特定建設業許可業者に関する義務
ア 施工体制台帳・施工体系図の作成義務
元請けの特定建設業許可業者が4,000万円(建築一式工事は6,000万円)以上を下請煮出して建設工事を施工する場合、当該建設工事の全下請業者を明示した施工体制台帳等を作成しないといけません。
イ 下請負人への指導義務
元請けの特定建設業許可業者は、当該建設工事の全下請業者に対する法令遵守指導をし、それに従わない下請負人については行政庁への通報が義務付けられています。
5 下請代金の支払いに関する義務
最後に下請代金の支払いに関する義務とは、次の2つです。
1)下請代金の支払期日に関する義務
注文者から出来高払もしくは竣工払を受けた場合、その支払対象の建設工事をおこなった下請業者に、その相当代金を1か月以内に支払う必要があります。
2)特定建設業許可業者に関する義務
ア 下請代金の支払期日の特例
特定建設業許可業者は、「1)の期日」か「下請負人(特定建設業許可業者・資本金額4,000 万円以上の法人以外)からの引渡し申出日から50日以内」のどちらか早い日に下請代金を支払わなければいけません。
イ 割引困難な手形による支払の禁止
特定建設業許可業者は、下請代金の支払いを、手形サイトが 120 日を超えるような、一般の金融機関による割引を受けることが困難とされるような手形では行えないというものです。
さて、ここまで読んでいかがだったでしょうか?
建設業許可は事業拡大の手助けをしてくれ一方、守らないといけないルールも沢山あります。
なお、こういった守らなければ行けない事項とういのは立入検査でも見られる部分でもあります。
自社がこういったルールに対して違反状態にならないためにも、行政書士の専門家と連携しながら、適正なあるべき姿に近づけていきましょう。