建設業法第31条にはこんな条文があります。
「(報告及び検査)
第三十一条 国土交通大臣は、建設業を営むすべての者に対して、都道府県知事は、当該都道府県の区域内で建設業を営む者に対して、特に必要があると認めるときは、その業務、財産若しくは工事施工の状況につき、必要な報告を徴し、又は当該職員をして営業所その他営業に関係のある場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」
つまり、必要があれば国は建設業者の営業所などに立ち居入り検査をすることができます。
常に公明正大な事業運営を行っていれば何も恐れるものはないというのは正論ですが、やはりいざ立入検査が入るとなると不安になるものです。
ここでは、建設業の立入検査ではどのような点をチェックされているのかを見ていきます。
そもそも立入検査とはなにか
そもそも、建設業法上の立ち入り検査とは誰を対象になんの目的で行われるのでしょうか?
それは、建設業許可の有無に関係なく「建設業を営む者」に対して、建設工事の適正な施工の確保と発注者の保護の実現のために行われます。
このことから、立入検査でみられる点は、建設業者が、建設工事の適切な施工等のために課されている義務をしっかりと行っているか、という観点であることが想像できますね。
では、これを踏まえて、次に、とある都道府県で行われた立入検査の報告を見てみましょう。
チェック内容は営業所・現場共に法令遵守がなされているか
今からご紹介する立入検査では、営業所と現場それぞれにおいて立ち入り検査が行われました。
営業所立入検査
この調査では、無作為に元請業者と下請業者を8者ずつ選び、立入検査が行われました。
営業所立入検査では、完了工事に関する書類や帳簿の確認のほか、適切な施工体制の構築や工事代金の支払いなどの、法令遵守の状況が確認されています。
①見積りに関する取扱い
1.見積依頼書の作成
2.見積期間の設定
3.合意の見積合わせ
4.労務費・材料費等の内訳明記
②契約の締結方法
1.契約方法(標準下請契約約款)
2.法定契約事項の有無
3.書面による変更契約
③代金支払状況
1.前払金の取扱い
2.中間・出来高払の取扱い
3.元請完了検査までの日数
4.下請代金の支払期日
5.手形と現金の比率及び手形期間
6.締切日と支払日の設定
また、近年の各種保険加入の義務化にともない、労働者名簿、賃金台帳、保険関係書類が確認され保険加入状況も検査対象となることも考えられます。
現場立入検査
現場調査に置いては、検査年度に施工された公共工事等の中から25工事について立入検査が行われました。
検査方法としては、検査員が施工体制や下請契約などについて事情聴取を行う他、関係書類の確認によって行われています。
①施工体制台帳及び施工体系図の作成状況
②配置技術者の資格要件・雇用関係と工事への実質的関与状況
③下請契約の締結状況及び下請代金支払状況
④掲示物(建設業の許可票、施工体系図、建退共加入標識等)の掲示状況
そして、これらの調査の結果としては、監督処分に至るものはなかったようですが、改善を必要として次のような事項について勧告が行われています。
・営業所専任技術者を工事現場の主任技術者として配置していた。
・契約の締結の際、法定記載必要事項を書面に記載していなかった。
・建設工事の現場に建設業許可票を掲げていなかった。
また、これらの他には、次のような事項も口頭指導の対象となっています。
見積依頼書を書面で作成していなかった
見積書に法定福利費を計上していなかった。
契約書等の約款に暴力団対策条項を規定していなかった。
下請業者の作業員の社会保険加入確認が十分になされていなかった。
下請業者の作業員の雇用関係の確認が十分になされていなかった。
監理技術者が監理技術者証を携帯していなかった。
再下請通知書の提出に係る案内が掲示されていなかった。
施工体系図の記載に誤りがあった。
施工体制台帳の記載に誤りがあった。
作業員の出勤日と建退共の証紙払出しに齟齬があった。
さて、ここまでいかがだったでしょうか?
建設業界の適正な経営・施工実施の実現のために、立入検査が行われることがおわかり頂けたことと思います。
もちろん、立入検査対策としてということではありませんが、日増しに厳しくなるコンプライアンス軽視に対する世間の目もあります。
また、何より建設業界で働く全ての人が幸せになるためにも、こういった法令遵守の意識は欠かせません。
もし、自分の会社は大丈夫か?とお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度行政書士の専門家へ相談をしてみて下さい。