「うちは下請ばかりやっている会社ですが、元請さんが建設業許可を持っていたら、自分の会社は建設業許可を持っていなくても下請できますよね?」
行政書士業務を行っていると、このような質問を受けることも多いです。
自分の会社では建設業許可を持っていなくても、元請が建設業許可を持っていれば問題なく下請契約を結んで建設作業ができるものなのか??
結論を先に言ってしまえば、できる場合もあるし、できない場合もあります!とういのが答えになります。
「え?? 結局どっちなの?要るの?要らないの?」とツッコミが入ると思いますので、下請は建設業許可は不要なのか?について解説をしていきたいと思います。
まず、建設業許可というものは、その取得条件などが建設業法に定められています。
建設業法には、建設業許可が要らない場合についても定められていて、そこには「軽微な工事」を行う場合には建設業許可が不要ということが書かれています。
「軽微な工事??」それはどんな工事かというと、同じく建設業法では「軽微な工事」の定義として下記2点があります。
①1件の工事請負金額が500万円に満たない工事
②ただし、建築一式工事(総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を建設する工事)については請負金額が1500万円未満に満たない工事、または延べ面積が150㎡に満たない木造住宅工事
と規定はされています。
もっと要点だけまとめると、
・150㎡未満の木造住宅工事
・1500万円未満の建築一式工事
・それ以外の500万円未満の専門工事
という三点に該当する工事が「軽微な工事」とされています。
「建築一式工事?」「専門工事??」それってなんだ??との疑問もあるかと思います。
詳細に関してはここでは割愛しますが、要点だけ言うと、建設業には、工事の内容によって「一式工事」と「専門工事」の2種類に分かれる、「一式工事」は「土木」と「建築」 の2種類で、「専門工事」は「内装」や「大工」「電気」など27種類に分かれます。
「一式工事」はゼネコン等の下請企業を多く使う建設会社が取得している許可で工事の企画や指導、調整を行う工事になります。
「専門工事」は各々の専門工事を請け負う下請け業者が取得しているものになります。
例えば1棟の住宅を新築する場合には、「建築一式」の許可を持っている建設業者が元請になり、「内装」や「電気」等の専門工事を行う下請け企業に対して、工事の差配をするようなイメージです。
1500万円って一般的にはすごい金額のように思えますが、建築物を1棟建てるのには通常もっと高額になるという理由から1499万円の工事でも「軽微」とされてしまいます。
また延べ面積150㎡未満の木造住宅の工事の場合は、仮に2000万円の工事であっても「軽微な工事」に分類されます。
木造住宅工事の場合は請負金額基準ではなく、延べ面積基準になります。
あとは「専門工事」の場合は、500万円未満の工事であれば、すべて「軽微な工事」となります。
このような「軽微な工事」の場合には、仮に請負契約を結んで、建設作業をするにも建設業許可は不要になるということになります。
これは「元請」「下請」は関係ありません。
「軽微な工事」以外の工事の請負契約を元請として行う場合には、建設業許可は必要になりますし、更にその下請業者に出す下請金額が、1件当たり500万円以上になる場合は、下請業者も建設業許可を持っていなくてはいけません。
逆に、ある工事に下請として入る場合に、元請企業から振られた下請工事の金額が、1件につき500万円未満の場合は、元請が発注者から受けた金額にかかわらず下請業者は建設業許可を取得する必要はありません。これは一次下請の場合も、2次以降の下請の場合も同様です。
「なるほど! じゃ1件あたり500万円未満の工事しかしない場合は建設業許可は不要と覚えておきます!」
確かにそれで法律上は間違いではないのですが、注意事項として、建設業許可にはその工事の種類毎に許可にも種類があることは先ほど記載しましたが、仮に建設業許可を取得していても、500万円以上の工事は、その許可を取得した業種のみできることになります。
例えば、「内装」の許可を持っている業者の方は「内装工事」のみ500万円以上の工事を請負うことができ、「屋根工事」や「電気工事」などの他業種の工事は500万円未満しかできない。つまりは業種毎に許可が必要になるということになります。
また、昨今では、元請側の方針で、仮に500万円未満の下請工事でも、建設業許可を持っていないと下請で使わないという話も多く聞きます。
法律云々ではなく、自社のブランド化の為にも、建設業許可の取得は早めに検討されることをお勧めいたします。