ものづくり補助金

ものづくり補助金のメリット・デメリット

ものづくり補助金は国から高額なお金がもらえる補助金ですが、メリットだけでなくデメリットもあります。場合によっては、「こんな事なら補助金なんてもらわなきゃよかった」なんてことになったりもします。そうならないためにも、「事前にデメリットも把握したうえで申請する」というのが重要です。

ものづくり補助金のメリット

まず、メリットですが、「返済不要のため、少ない資金で設備投資ができる」という点につきます。ものづくり補助金に採択されれば、設備投資にかかる費用の1/2(小規模事業者は2/3)が1千万円まで補助されます。しかも、融資と違い返済不要です。こういった財務面がものづくり補助金の最大のメリットとなります。

ものづくり補助金のデメリット

とはいえ、ものづくり補助金にはデメリットもあります。それは、①補助金は後払いなのでキャッシュフローが悪化する、②事務手続きが大変(特に採択後)、③補助金につられムダな投資をしてしまうケースがある、といった点です。以下、順に説明していきます。

補助金は後払いなのでキャッシュフローが悪化する

補助金は基本的に後払いです。しかも、申請して合格しただけではもらえません。ざっくり言っても、「申請→採択(合格)→事業実施→実績報告→国の検査」といった流れを経たうえで、ようやく入金されます。
そのため、申請から入金まで少なくとも1年程度かかってしまいます。ですので、2千万円の設備を買った場合、まず全額自社で立て替える必要があります。その上で、1年後くらいに補助金で1千万円戻ってくるといった感じです。

こういった流れだからこそ、キャッシュに余裕がないと補助金は難しいですし、自社のキャッシュフローをきっちり見極めてから補助金に取組まないと、「お金がまわらず黒字倒産」なんて事になりかねません。なお、国もこの辺を意識しているため、「財務的な余裕がない企業はそもそも合格させない」といった傾向になります。ですので、債務超過や連続赤字の会社は、ものづくり補助金には合格しにくい傾向があります。

ちなみに、「補助事業に取り組むお金は銀行融資でまかなう」というやり方もあります。ものづくり補助金には「poファイナンス」という仕組みがあります。これは、金融機関からのつなぎ融資のための制度で、補助金交付決定額を債権化し、金融機関に譲渡することで、補助金が支払われるまでの間、金融機関からのつなぎ融資が受けられやすくなる仕組みです。こちらを上手く使ってキャッシュフローを整えながら、補助金にとりくまれるのもよいでしょう。

事務手続きが大変(特に採択後)

ものづくり補助金は、採択(合格)しただけでは終わりじゃありません。むしろ、合格後の事務手続きの方が大変です。

というのも、採択された後は、まず2度目の申請(交付申請)がまっています。これは、「事業としての合格は認めたけど、補助対象経費として適正かどうかは再度チェックさせてもらいますよ」といった段階です。そのため、場合によっては経費内容の細かいやり取りが発生し、事務局から補正指示がきます。役所のルールに従うので、「(中身は変わらないのに)経費の費目を変えるだけ」といった細かい点も指摘されます。

その後も、契約、請求、検収といった経理事務も、証拠を残しながら適切に処理していく必要があります。役所のルールなので、民間の方からすると「ここまでやらなきゃいけないの」というくらい細かく感じるでしょう。

さらに、「実績報告」という補助事業の内容や結果を報告する作業も発生します。こちらも詳細なレポートが必要となり、大変細かいです。

また、国の検査が終わり入金された後も、その後数年間は、売上等を報告する義務があります。

このように採択後(合格後)の事務は大変ですし、採択後にこそトラブルが多いのが補助金です。

つまり、「これは補助対象経費じゃありませんので落としてください」「見積と違う型番の設備なので補助金は認められません」「それは変更に当たるので変更承認申請をしていないと補助金は認められません」こう

いった事務局からの指示がとびかい、トラブル対応に追われるのも採択後(合格後)が多いんです。こういった背景があるため、「補助金に合格はしんたんだけど、色々あって、結局、入金まで至らなかったんだよね」という会社さんも結構多いんです。

だからこそ、「補助金は合格後の事務が大変だ」という実情を把握したうえで、補助金申請にのぞまれることをおすすめします。

補助金につられムダな投資をしてしまうケースがある

これはものづくり補助金に限らないのですが、「補助金がほしい!」という気持ちばかりが先行してしまう会社さんは多いです。ですが、このマインドですと、たとえ補助金に合格したとしても、事業の成功は難しいでしょう。

なぜなら、「どういった事業展開をしたいのか?」「現状はどういう状況で、どんな課題があるのか?」「その課題解決のために補助金を使うのが有効なのか?」こういった流れの上で補助金を使わないと、事業が失敗しがちだからです。

例えば、「1億円の補助金をもらったけど、補助金ありきで事業を組み立てたため、結局、事業が上手くいかず、廃業に追い込まれた」なんてケースもありました。

補助金はあくまでも手段です。目的は「事業を成功させること」です。

「1千万円もらえます」と言われると、ついクラッと判断がゆがんでしまい、不必要な投資をしてしまいがちです。ですが、こういった「経営判断のゆがみ」につながりがちなのが補助金のデメリットでもあります。あくまでも目的は「事業の成功」ですので、この点はしっかり押さえて補助金を申請するか否かをきっちり判断されることをおすすめします。

この記事の監修

さむらい行政書士法人 代表 / 小島 健太郎

行政書士/財務コンサルタント

吉野 智成(よしの ともなり)

プロフィール

大学卒業後、税理士事務所で中小企業の会計を支援。
2019年 行政書士登録、個人事務所を開設
2021年 補助金・融資部門を法人化。「株式会社Gunshi」を設立
専門分野:事業者向け補助金、融資申請支援

書籍

中小会社で活用できる「補助金」のことがわかる本』(セルバ出版)

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