ものづくり補助金

ものづくり補助金の3つの難点

ものづくり補助金は補助額が1千万円という事もあって、関心がある会社は多いです。ただし、大半の会社は合否以前に申請まで至らないのが現実です。なぜなら、次の3つの難点があるからです。つまり、①事業計画書の作成が大変、②革新性をだすのが難しい、③賃上げ要件が厳しい、こういった難点が立ちはだかるため、申請までたどり着けずあきらめてしまう会社が多いのが実情です。

事業計画書の作成が大変

社長さんの頭の中には様々なアイデアがあります。ですが、そのアイデアをそのまま事業計画書に書き出しても補助金の合格は難しいです。なぜなら、補助金に合格するためには、「定められた記載欄のなかで、得点項目をふまえながら、ストーリー立てされた、わかりやすい申請書を書く」という作業が必要となるからです。

ちなみに審査員は、得点項目を踏まえながら、1通10分程度で審査をしていると言われています。そのため、「読みにくいなー」と思われた時点で不合格まっしぐらとなります。

とはいえ、補助金申請に慣れていない会社さんが、「審査員が満足する事業計画書」を書き上げるのは現実的に厳しい面があります。そういった背景もあってか、最近のものづくり補助金では、士業の関与率があがってます。その結果、全体の申請書レベルがあがってしまい、より競争が厳しいものとなっています。ですので、自社の人的リソースをふまえ、「うちじゃ無理だな」と判断されるようであれば、最初から士業に相談してしまったほうが合理的な場合もあります。

革新性をだすのが難しい

ものづくり補助金は「革新性」がないと通りません。しかも、この「革新性」のハードルが結構高いんです。

この「革新性」というのは、「自社にとって新しい取り組みで、他社でも一般的ではなく、地域・業種内の先進事例(自社の商圏や業界の中での先進事例)にあたるもの」といわれています。ですので、「世界初!」とはいかなくても「業界初」「地域初」くらいのレベル感は必要という事になります。

とはいえ、中小企業が「業界初」の設備投資をするのは、現実的になかなか厳しいです。そのため、この「革新性」がハードルとなってしまい、ものづくり補助金へのエントリーをためらってしまう会社さんが多いんです。

ちなみに、製造業はわりと「細かい技術にフォーカスすることで革新性がアピールしやすい」といった傾向にあります。それに対し、商業・サービス系は、「面白い!そんなのあるんだー!」と見た人をうならせるスケール感が必要な傾向なため、なかなか「革新性」をうちだしにくい現状があります。こういった面もあり、「ものづくり補助金の合格業者は製造業が圧倒的に多い」というのが現実です。

賃上げ要件がネックになる場合もある

募集される年によりますが、ものづくり補助金では「賃上げ要件が必須」となる場合があります。つまり、ものづくり補助金をもらうためには、「全従業員・役員の給与支給総額を、3年間にわたり、年率1.5%以上アップさせなければならない」といった要件が課され、「それを達成できないと補助金が返還させられてしまう」という場合があります。

そのため、会社の規模感によっては「補助金もらうよりも給料負担の方が大きい」といったケースもあり、ものづくり補助金へのエントリーを見送るケースもあります。
ちなみに、経済状況にもよりますが、不況時に賃上げ要件必須となると、申請者が減少する傾向にあります。ですので、不況でも儲かっていたり、財務的な体力がある会社にとっては逆にチャンスだったりもします。

補助金はある意味、会社の命運をかけた取り組みとも言えるわけです。

この記事の監修

さむらい行政書士法人 代表 / 小島 健太郎

行政書士/財務コンサルタント

吉野 智成(よしの ともなり)

プロフィール

大学卒業後、税理士事務所で中小企業の会計を支援。
2019年 行政書士登録、個人事務所を開設
2021年 補助金・融資部門を法人化。「株式会社Gunshi」を設立
専門分野:事業者向け補助金、融資申請支援

書籍

中小会社で活用できる「補助金」のことがわかる本』(セルバ出版)

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