出資者と経営者は必ずしも同じとは限りません。では、会社の代表が会社の株を1株も持っていない場合でも創業融資を受けることは可能なのでしょうか?
ここでは、
①代表が1株も持っていない
②創業融資を受けたい
という条件で、これが可能かどうかを解説していきます。
日本政策金融公庫は多少の可能性はある
まず、創業融資を受けることを考えると、現実的に日本政策金融公庫か信用金庫の利用を検討するかと思います。
しかし、結論から言ってしまうと、代表が1株も持っていない状態での信用金庫からの融資は厳しいでしょう。
同じように、日本政策金融公庫であっても融資のハードルはグッと上がることになります。
そもそも、会社代表が1株も持っていない状態での融資というのは、通常想定されているパターンではありません。
日本政策金融公庫の創業融資の提出資料をご覧頂くと分かるように、会社代表の通帳を出して、どのように自己資金を形成したかといったところを確認するため、会社の資本金も会社代表が出しているものとして想定されています。
日本政策金融公庫が重要視しているのは、自己資金と経験・能力です。
このうち自己資金の有無を見られる理由としては、返済能力の確認と、その人の計画性、事業への本気度を見ることにあります。
ここに問題があると、本当にこの人が責任を持って経営活動を行うのかという疑念が生まれますし、
たとえ能力を評価して融資実行の判断をしたとしても、代表が出資者でなければ(50%以上の議決権をもっていなければ)、業績悪化によっては解任されてしまう可能性もあり、そういった点でも、積極的な創業融資を受けるのは難しいと考えられます。
ただ、次のような状態であれば日本公庫の担当者の判断が覆る可能性もあるのは事実です。
それば、
「出資はしていないものの、代表個人もまとまったお金を持っている(出そうと思えば出せた)」という場合です。
これは何故かというと、先程のように日本政策金融公庫が重要視しているのは、自己資金と経験です。
提出資料のうち、会社の株を1株も持っていないとしても代表の個人通帳は提出することになりますので、個人で資金はありつつも、例えば経営能力を認められて友人等から出資を受けていているということが分かれば、あとは経験や能力を示すことで融資可能性が出てきます。
ただし、そもそもの話で注意が必要なのが、他の株主が反社会的勢力や破産者である場合です。この場合は身代わりで代表に就任しているだけと判断されますので融資は期待できないでしょう。
代表出資100%が理想ではあるが
会社を立てる時に色々と考えるのが資本金です。全額自己資金で出資をするか?借入金をあてていいのか?友人に株主になって出資を募ろうか?というふうにアイデアが浮かぶと思います。
やはりこの中で一番は自分で100%出資をすることです。
そもそも、借入が金融機関からの借入であればそれを資本金として認められませんし、他に出資者を募って資本金を集めても、無計画に進めた結果自身の議決権が1/2以下になっていれば、自由に会社を動かすことができなくなることはもちろん、他の株主によって解任される恐れもあります。
また、先程説明したように下手に株の保有率を下げた状態では融資の審査も厳しくなります。
創業者に対しても融資を行なってくれる日本政策金融公庫では、少額の自己資金でも融資を受けられる制度もありますし、
もし自分の議決権を下げずに自己資金を増やしたいということであれば、親族から贈与をしてもらい、返済の必要のないお金をもらうといった方法もあります。
自分の思い描いたビジネスプランで事業をしたいということであれば、ぜひ、無鉄砲に突き進まず、将来の融資可能性や、株の保有数などをしっかりと検討し、可能であれば代表出資100%で、融資を受けることが好ましいでしょう。
さて、ここまでいかがだったでしょうか?
結論としては、代表が株を1つも持っていない場合は民間の金融機関で創業融資を受けることも日本政策金融公庫で創業融資を受けることも難しいということがご理解いただけたかと思います。
出資を募るのであれば金融機関側のリスクも考えた上で、審査上不利にならない程度の株の保有率を保ち、可能であれば自分で全ての株を保有しているという状態で融資審査に挑みましょう。