2019年まで宅地のみの分譲に関して、農地転用をすることができませんでした。これは転用後の建物建築が不確実であり、土地の遊休化の恐れがあったからです。
しかしながら現在では、この農地転用もすることができるようになりました。
こちらでは、農地を宅地分譲する場合の農地転用の要件等に関し詳しく解説していきます。
■以前の宅地分譲に関する農地転用
2019年4月までは、住宅を目的とした転用に関しては、転用事業者(例えば土地の分譲宅建業者)が、宅地を造成し、住宅を建築した上で土地建物一帯を売却する場合(建売分譲住宅)に限って、転用が可能でした。
簡単に言うと、「宅地のみの分譲は転用ができない」ということです。
これは、転用後の建物建築が不確実であり、それらの土地の遊休化を招く恐れがあったからです。
そうとは言え、都心から離れた地方部では土地を購入し、購入者の趣向に応じた間取りで住宅建築をする需要が高く、従来の転用制度に関して改善して欲しいという声が多く寄せられていました。
そして2019年4月に農地転用制度の宅地分譲に関する新たな運用が始まりました。
■宅地分譲する場合の農地転用の要件は?
以下の要件を満たすことができれば、建築条件付土地売買に関して「宅地のみの分譲」として見なさず、農地転用が可能となります。
①転用事業者と土地購入者が建築条件付土地売買契約を締結し、契約後一定期間内(3ヶ月以内程度)に転用事業者又は転用事業者が指定する建築業者と土地購入者が建築請負契約を締結すること
上記が達成されなかった場合の措置は下記のア、イになります。
(ア)一定期間内に請負契約を締結せず、又は締結できなかった場合に、建築条件付き土地売買契約を解除すること
(イ)全区画を販売することできなかった場合は、転用事業者がそれらを建売分譲として販売すること
②建築条件付土地の引き渡しは、住宅が建築されたことの確認後、または宅地造成と建築基準法第6条の建築確認が行われた後に行うこと
これにより、建築確認後であれば土地の先行決済が可能となります。また、これと連動し、登記上も建築確認があれば農地から宅地への地目変更が可能になります。
■宅地分譲とは
宅地分譲はハウスメーカーなどが、土地に住宅を建てるという目的で整地し、販売する形態のことを言います。
大規模な分譲の場合、農地や山などを切り開いて作られる場合がある為、農地転用とも関わりがあると言えます。
■建築確認とは
建築確認とは、指定確認検査機関や行政の建築主事が、工事の着手前に建築計画や築造計画、建築物、建築設備等が建築基準法や建築基準関係規定に適合しているかを工事着手前に審査することです。
例えば、容積率や隠ぺい率などが守られているか、シックハウス対策がしっかり行われているかなどを確認します。
それらをチェックし、建築確認が終わると、「建築確認済証」が交付されます。
■農地が宅地分譲できることのメリット
メリットは大きく分けて二つあります。
1.建築条件付土地売買が可能なことにより、購入者が選択できるハウスメーカー等の建築業者の選択肢が広がり、購入者の希望する設計等がしやすくなりました。
2.建物が完成していないタイミングでの土地の引き渡しと地目変更が可能になったことによって、土地を担保に供しやすくなりました。
これらは、購入者にとっても、ハウスメーカー等にとっても大きなメリットですので、農地を宅地分譲するために農地転用が出来るようになったことは喜ぶべきことと言えるでしょう。
■建築条件付宅地分譲の場合の必要書類
通常の必要書類に加えて下記の書類を求められます。
・住宅建築請負会社との契約等を証する書面
※建築を請負う会社及び契約形態等を明確に示す書面
・販売条件の詳細が記載されている書面
※契約書等のひな形でも可能
・事業経歴書
上記の書類は市区町村によって違いがありますので、事前に確認するようにしましょう。
■まとめ
こちらでは、農地を宅地分譲する場合の農地転用の要件等に関し詳しく解説いたしました。
農地を宅地分譲する農地転用は今までは頻繁に起こるものではありませんでしたが、今後大規模な開発等により多くの農地や、規模の大きな農地を農地転用していく場面は増えてくることでしょう。
2019年4月から始まった農地転用制度の宅地分譲に関する運用ですので、これからこの制度を活用する建築業者やハウスメーカーは益々増えていくことと思います。
まだまだ制度が変わって年月が経っていないので、疑問点や不安な点がある方は少なくないと思います。
そんな時は、是非農地転用の専門家である行政書士までお気軽にご相談ください。