造船で建設業許可は出来ません。
しかし、ここではもう少し踏み込んで、造船の過程における電気工事に建設業許可は必要なのかといった点や、造船内での実務経験が建設業許可の要件にカウントされるのか、といった内容についても解説をしていきます。
建設業ではなく造船業
造船に携わっている人で、あなたの働いている産業は何ですか?と聞かれて「建設業です」と答える人はいないでしょう。
なぜなら、造船は「造船業」の仕事だからです。
ではなぜ造船が建設業でないかと言うと、船は土地に定着していないからです。
造船が建設業に当たらないのであれば、造船業を営むために建設業許可を取得する必要がないのは当たり前の話ですね。
※ただし、造船業にはなんの許可もいらないというわけではなく、造船業を営むためには、造船法、小型船造船業法に従い、建造・修繕する船舶の大きさ・材料によって、造船施設や設備の許可、造船業の登録・届出をしなければなりません。
なお、ここでは造船業許可等に関する説明は割愛させていただきます。
船内での工事も建設業許可は不要
では次に、船内での工事には建設業許可は必要なのでしょうか?
これについても答えは同じで、船舶は土地に定着していないため、その内部の工事(例えば電気工事や、家具工事といった内装工事)のためであっても建設業許可は不要となります。
造船内での実務経験は建設業許可要件にカウントできる?
話は変わりますが、造船に携わる形で建設業的仕事に従事していた場合、その期間は建設業許可取得要件上の実務経験にカウントされるのでしょうか?
次はそのような内容について見ていきます。
まず、どの部分で造船での実務経験を活かる可能性があるかを知るために、一般的な建設業許可の取得要件を見ていきましょう。
ここでは、造船の内装工事を行っていたという設定で、内装仕上工事業の要件で見ていきます。
建設業許可のためには基本として次の5の要件を満たす必要があります。
①建設業に係る経営業務の管理を適正に行う能力
②専任技術者
③誠実性
④財産要件
⑤欠格事由非該当性
このうち人的要件である①②が重要項目と言われます。
その中でも、②専任技術者というのは、行って水準以上の技術者を営業所ごとに置かなければいけないという要件を意味です。
一般建設業許可で専任技術者になれる人
次のどれかに当てはまる必要があります。
1 有資格者
1級建築施工管理技士 |
2級建築施工管理技士(種別:仕上げ) |
1級建築士 |
2級建築士 |
技能士 (旧検定:畳工・表具工・表具・カーテン施工・天井仕上げ施工・床仕上げ施工) |
登録内装仕上工事基幹技能者 |
2 関連学科(建築学、都市工学の学科)を卒業+3〜5年の内装仕上工事実務経験者
大学卒業+3年以上の実務経験 |
専門学校卒業(高度専門士or専門士)+3年以上の実務経験 |
高校卒業+5年以上の実務経験 |
専門学校卒業(専修学校専門課程)+5年以上の実務経験 |
3 10年以上の内装仕上工事の実務経験者
10年以上の実務経験ある。 ※その他学歴や資格は不要です。 |
4 内装仕上工事実務経験8年+他の工事実務経験=12年以上
内装仕上工事実務経験8年+建築工事実務経験4年以上 ※重複期間なし |
内装仕上工事実務経験8年+大工工事実務経験4年以上 ※重複期間なし |
特定建設業許可で専任技術者になれる人
1 有資格者
1級建築施工管理技士 |
1級建築士 |
2 一般の要件+2年以上の元請の内装仕上工事での指導監督的な実務経験
一般建設業許可の要件+ 元請けとして、請負金額4500万円以上のとび土木工事で、工事現場監督等、指導監督的実務経験が2年以上あること |
このように、専任技術者になるための要件として、資格や学歴・実務経験といった要素が含まれています。
そして、いま問題としているのはここの実務経験の部分に造船の過程での内装工事の経験がカウントされるのかというポイントです。
みなさんはどう思いますか?
やっていることは同じであれば実務経験にカウントしていいでしょ、と思った方も沢山いらっしゃることと思います。
しかし、こちらは残念ながら建設業法上は実務経験としてはカウントできません。
これは船舶上の工事に建設業許可が不要である理由と同じで、土地に定着していない船舶での工事は建設工事とはみなされないからです。
このように、特に実務経験で要件を満たそうとする場合には、判断に困るような場面も出てくるかと思います。
建設業許可取得をご検討の方で、手続きや要件の判断について困りの方はぜひ一度専門家に相談をしてみて下さい。