日本の企業の中で、特に建設業は個人事業主が多い業種でもあります。
しかしながら今後、節税対策や事業の幅を広げるために、法人化(法人成り)したいと思っている事業者様も少なくないでしょう。
この際に一番気になるポイントとして、個人事業を行っている時に取得した建設業許可を、切れ目なく引き継ぐことができれば、皆さんにとっても大きなメリットとなります。
そこでこちらでは、個人事業から法人成りで建設業許可が切れないようにというテーマで、詳しく解説いたします。
法人成りした場合
今までは個人事業の時に建設業の許可を取っていた者が、法人成りした際には、改めて許可を取りなおす必要がありました。ということは、建設業の許可を継承することはできなかったのです。
これは許可を取り直すために時間や労力、そして申請費用が新たに発生してしまい、個人事業の方にとっては、大きな痛手となっていたことでしょう。
また許可が下りるまでの数ヶ月間、許可未取得の状態で営業を行わなければならないので、500万円以下の工事しか行えないことも問題でした。
しかしながら、令和2年10月に一部改正され、今まで不可能だった許可の継承が、可能になりました。
これには建設業の働き方改革や、円滑に事業を継承するため、または現場での生産性を上げるために行われたものです。
今回の改正によって、途切れることなく許可を維持することが可能となったことは、大きな変化と言えます。次項では、許可が切れないようにする為の必要な手続きをご説明します。
手続きについて
法人成りする場合、もちろんですが“建設業許可の要件”をすべて満たしていなければ、許可を維持することはできません。
一度許可を取る際に満たしたから大丈夫と思っていては、認められないケースも出てきてしまいます。しっかりと要件をすべて満たしているかを、確認しておきましょう。
(許可に必要な要件)
1.経営の管理を行う責任者を置くこと
2.許可を受けたい業種の技術者が営業所ごとにいる
3.契約に関して誠実性があること
4.財産的信用の基準を満たしている
5.欠格要件
6.社会保険の加入
ここでの重要なポイントとしては“➅の社会保険の加入”ですが、個人事業の時には、国民健康保険などに加入している場合がほとんどですが、法人成りした場合、必ず会社の健康保険に加入する必要があります。
また法人成りに伴い、従業員を雇用する場合は、雇用保険を全員にかけることも必須です。
雇用保険加入は、忘れてしまいがちなのでそこも併せて注意するポイントです。
認可申請に必要なもの
個人から法人への“事業譲渡”を円滑に行うことができるように、許可を切れ目なく引き継ぐ必要があります。
まず、事前に許可行政庁(都道府県知事・国土交通大臣)に“認可”を申請しましょう。
申請する際に様々な種類の書類が必要ですが、一部代表的なものとしては下記の通りです。
(認可に必要な書類)
・譲渡または譲受けに関する契約書の写し
・株主総会議事録など
・社員全員の同意書など(個人会社の場合)
この他にも、認可申請に必要な書類はたくさんあります。
書類は自治体によって異なりますので、必ず事前に担当窓口で確認してから申請を行いましょう。
有効期限について
事前に申請した許可が下りたら、有効期限の日付は許可が下りた日と思ってしまいますが、法人成りした場合の有効期限は“法人成りした日”(会社設立日)から5年間が有効となります。
間違いやすいので、注意しておきましょう。
注意する点
今回の改正に伴い、許可の継承はあくまでも“全ての許可を継承するもの”となっていますので、一部の業種のみを維持したい場合は、一度廃業手続きを行い、新たに許可を取りなおす必要があります。
また経営事項審査の結果や、監督処分を受けたことがある場合は、これらも許可として引き継がれますので、注意しておきましょう。
会社設立を行うには?
法人成りした後に許可を維持する方法は、上記で理解できましたね。
ここでは、法人成りするまでに必要となってくる手続きなどを簡単にご説明します。
法人化することが決まったら“廃業届”を30日以内に、管轄の窓口へ提出しましょう。
期限を過ぎると、許可番号の引き継ぎ不可となってしまいます。
次に、新設する法人の“法人設立届”を提出しましょう。
ここでの注意点が、廃業届と設立届の提出日は、同じ日でなければなりません。
その他にも、法人成りする為に法人の実印を作成する(設立申請の際に実印の届出を法務局にする)事なども必要となってきます。
事前に、何が必要でどのような手続きを行えば良いのかを、把握しておくことが大切です。
まとめ
今回は、個人事業から法人成りで建設業許可が切れないように。というテーマで、解説いたしました。
法律が改正したことで、切れ目なく許可を引き継ぐことができるようになったことは、大きなメリットと言えるでしょう。
しかしながら認可申請を行う際にも、必要となってくる書類や手続きがあります。
専門的なことで分からないとお困りの方は、専門家である行政書士までお気軽にご相談ください。