建設業許可を受けている個人事業主(親)の方が亡くなられた場合、御子息の中に「建設業許可を相続したい」「相続するにはどうしたらいいのだろう」そう、思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
こちらでは、そのような方に向けて“建設業許可の親からの相続”というテーマについて詳しく解説致します。
■建設業許可の相続に関して
2020年10月に働き方改革の促進等の観点から建設業に関する法律が改正され、新しく“建設業許可の相続に関する認可制度”が設けられました。
この改正より以前は、許可を受けている個人事業主、被相続人(親)が亡くなられた場合、相続人(子)が親の許可を引き継ぎたい場合は、一度廃業届を提出してから新しく建設業許可を受ける必要がありました。
このため、許可を受けるまでの期間、各都道府県知事の場合で約1、2ヶ月、国土交通大臣の場合では約4ヶ月の間無許可状態となってしまい、この間は500万円以上の工事等を新たに受けることが出来ませんでした。
しかしながら、法律が改正されたことにより、被相続人が亡くなられた日から“30日以内”に認可の申請をする事で、許可の承継が認められ親からの相続が可能となりました。
■認可に関して
建設業許可を相続する場合、相続人は被相続人の許可に関する全てを無条件で相続することは出来ません。
認可を受けるには、下記の要件を満たしている必要があります。
・個人事業主が亡くなった日から“30日以内”に認可の申請が済んでいること
・被相続人が営業していた建設業の全てを引き継ぐ事
被相続人が営業していた建設業に関する全てを相続する場合のみ、許可の相続をする事が出来ます。この為、一部(業種等)だけを相続するというような事は出来ません。
被相続人が受けた監督処分や権利、義務、許可業種等全てを含めて相続する必要があります。ただし、罰則に関しては法人や個人に対して課されたものなので、相続人が引き継ぐ事はありません。
・被相続人と相続人が同一の業種で異なる許可の区分を受けていないこと
被相続人と相続人が同一の業種で同じ許可を受けている場合は、相続する事が出来ますが、被相続人と相続人が同一の業種で特定建設業許可と一般建設業許可の異なる許可を受けている場合は相続する事が出来ません。このような場合は、どちらかの許可を廃業する事で相続することが可能となります。
例:とび・土工で、どちらも一般建設業許可の場合は相続する事ができます。
・許可の要件を、全て満たしていること
建設業の許可の要件を、相続人が全て満たしていなければ、相続を行う事ができません。
具体的には、下記の要件となります。
1.経営業務の管理責任者に関するいずれかの要件を満たすこと
2.常勤の専任技術者を営業所ごとに置くこと
3.請負契約に関して誠実性があること
4.財産的基礎(500万円以上の金額)又は金銭的信用があること
5.申請者や法人の役員等が欠格事項に該当していないこと
6.適正な社会保険等に加入していること 等
認可を受けるためには、上記の内容を全て満たす必要があります。
認可の申請を行った場合、申請に対する処分があるまでは、相続人は建設業の許可を受けたものとして扱われます。この為、空白期間が出来る事なく営業を行う事ができます。
又、相続人がすでに許可を持っていれば、引き継ぐ許可番号を選択する事ができます。
■認可の申請の手順
認可の申請を行うには、下記の手順で申請を行います。
①許可を受けている個人事業主の方が亡くなられて“30日以内”に認可の申請を行います。
②許可行政庁によって申請内容の審査が行われます。
③要件を満たしていれば認可について通知されます。
※不認可の場合も通知されます。
認可の申請が“30日以内”に完了されていない場合は、廃業届を提出し新しく許可を受ける必要があります。
認可の申請は、“30日以内”と限られた期間なので注意が必要です。
■必要な書類と有効期限に関して
認可の申請に必要な書類は下記の通りになります。
・申請者(相続人)と被相続人の続柄を証明する書類
・申請者(相続人)の同意書
※申請者が被相続人の事業を断続して営業する旨の同意書が必要です。
有効期限は、承継の日から5年間となります。
認可の申請にかかる手数料は不要となります。
注意点として、提出する書類が異なる場合があるので事前に確認を行う事が大切です。
■まとめ
今回は、“建設業許可の親からの相続”というテーマについて解説致しました。
2020年10月に建設業の法律が改正されたことにより、これまで出来なかった建設業許可を親から相続する事が出来るようになりました。
相続するには、被相続人が亡くなられて“30日以内”に認可の申請をしなければなりません。30日以内に認可の申請が完了していない場合は、廃業届を提出して新しく許可を受ける必要があるので、注意が必要です。
建設業許可に関することでお困りの方は、専門家である行政書士までご相談下さい。