近年の建設ラッシュに伴い、建設業界に携わっている事業所の方の中にも解体工事業に興味が出てきた方もいらっしゃるかと思います。建物を建てるよりも壊す方がはるかに時間はかからず、建設よりも簡単なような印象を持っているかと思います。
その様な方のために今回は「解体工事業登録」と「建設業許可」の違いについて詳しく解説していきます。
会社や事業所の大きさに関係なく、近年では社会に対して法令順守(コンプライアンス)が重要になっていますので、自社にはどちらが必要なのかこちらの解説でご確認ください。
■制定された目的の違い
建設業許可と解体工事業登録は、そもそも根拠となる法律が違います。
建設業許可は、建設業法です。
建設業法とは、1949年に制定。建築を営む29種の業種に適用される法律です。
「建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、
建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を
促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」(引用元;建設業法第1条)
要するに、手抜き工事や中抜き工事をさせない為の法律です。
解体工事業登録は建設リサイクル法です。
正式名称は建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律です。
2000年に制定。建設資材の分解、リサイクル及び、適正な廃棄処理を図る為の法律。
正式名称の名の通り、建築関連法と廃棄処理法の不足を補い100%適正処理を実現される為に制定された法律です。
■それぞれ何ができるのか
違いが一番分かりやすいのは、請け負える工事額が異なります。
建設業法の第3条の中には、「政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。」と建設業許可の例外があることが書かれています。
例外とは、
<建築一式工事>
工事1件の請負代金額が1,500万円未満の工事又は、延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
<建築一式工事以外>
工事1件の請負代金額が500万円未満の工事
この違いは分かりやすいかと思います。
解体工事額が、500万円以上であれば「建設業許可」の取得が必要です。
解体工事額が、500万円未満であれば「解体工事業登録」です。
ちなみに、建設業許可は取得が難しいので許可を受けた事業者に登録義務はありません。
では次に取得のための要件の違いを確認していきましょう。
■取得のための要件の違い
【建設業許可】
①建設業経営経験が5年以上の事業主または、役員が必要。
②自己資金(返済義務のないお金)が500万円以上必要。
③専任技術者(資格取得、または10年以上の実務経験ある)が各営業所に常勤すること
④誠実性が求められる。(不正行為がなく、健全な事業所であること。)
⑤欠格要件に該当する事業主、役員がいないこと。
※欠格要件とは
自己破産や、反社会的組織の認定を受けたことがある、過去に刑法での罰則・罰金を科せられた経験がある等です。
【解体工事業登録】
①定められた基準を満たす技術管理者がいること。(資格取得、または8年以上の実務経験がある)
②技術管理者が不適格要件に該当しないこと
※不適格要件とは
・不正(登録申請者及び、添付書類に虚偽の記載など)手段により、登録を受けた者
・解体工事業の登録を取り消されたが、その処分の日から2年経過をしていない者
・暴力団員でなくなった日から5年以上経過しない者
・暴力団員等が、その事業活動を支配している場合
・事業の停止を命ぜられ、その停止期間が経過しない者 等があげられます。
このように「建設業許可」と「解体工事業登録」では必要となる要件がかなり異なり、許可は
登録に比べて取得が難しいものになります。
ですが、許可を受ければ全国各地で工事を請け負えることが可能になります。
登録では、事業所の都道府県だけではなく各工事現場の都道府県への申請が必要となります。
■取得後の違い
【建設業許可】
①5年間の有効期限。満了を迎えると許可失効となるので、満了30日前までには必ず更新手続きを行う。
②毎年事業年度決算届を都道府県へ提出しなければならない。
③事業所には必ず標識を掲示する。
【解体工事業登録】
①5年間の有効期限。満了を迎えると許可失効となるので、満了30日前までには必ず更新手続きを行う。
②事業所には必ず標識を掲示する。
※決算報告は必要ないですが、帳簿をつける義務がある。
■まとめ
解体工事業に興味を持った方へ大枠を理解してもらうために、こちらの解説では細かな部分は省力させていただきました。
自社に必要な制度はどちらでしたでしょうか?
建設業許可の取得はかなり難しく、多くの条件を満たすことが必要となります。特に経営業務の経験年数は事業主になってから満たせるものです。
まずは解体工事業登録を取得し経営経験を積んでから、より大きな仕事をしたいと思った時に建設業許可を取得する流れが現実的かと思います。
色々な要件を確認して申請書類の作成など難しく思われた方は、専門家である行政書士までお気軽にご相談下さい。