経営力向上計画

経営力向上計画

経営力向上計画とは、経営力が向上する事業計画を立て、国から認定をもらうことで、税金の優遇措置や補助金の加点等を受けられる制度です(2016年7月に施行された「中小企業等経営強化法」にもとづく支援において作成する経営計画)。人材育成やコスト管理等のマネジメントの向上、設備投資等に関する、生産性が向上する事業計画をたて、国からお墨付きをもらうことで、税金や補助金、金融支援で優遇してもらえます。
主には、次のような優遇措置が受けられます。

・補助金で加点になる事がある(経済産業省所管の補助金)
・固定資産税が軽減される
・低金利で融資が受けられる
・信用保証協会の保証枠が増える

ただし、金融支援(低金利・信用保証協会別枠)に関しては、タイミングによっては別の融資の方が低金利で有利な場合もあるので(例:新型コロナウイルス特別貸付)、メリットは少ないです。ですので、メインは税制優遇と補助金加点となります。

引用元:中小企業庁「-中小企業等経営強化法-経営力向上計画策定の手引き」
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/pdf/tebiki_keieiryoku.pdf

補助金審査で加点になる

経営力向上計画の認定を受けていると、加点される補助金があります。

そもそも補助金は、事業計画等申請書の内容と加点項目によって審査されます。なので、加点項目があれば、補助金の審査では間違いなく有利になります。「加点項目が無いと、そもそも通らない」なんて言われる補助金もあるくらいなので、加点があるに越したことはありません。

例えば、小規模事業者持続化補助金では、加点項目として「基準日までに経営力向上計画の認定を受けていること」と明記されています(2020年度)。

補助金加点は年によって変わる(注意点)

経営力向上計画は、比較的取得しやすく、補助金でも加点になるので人気があります。ですが、「どの補助金の加点になるのか」は、その年の公募要領が発表されてみないとわかりません。

また、急に「昨年までは加点されてたけど、今年は対象外になった」といったことも起こります。

現に、ものづくり補助金では、2019年度は経営力向上計画が加点項目となっていましたが、2020年度では加点項目から外されてしまいました。そのため、最新の公募要領を確認してから動くのが安全ではあります。ですが、補助金審査に有利となる年度初回の公募への申請を考える場合、先に経営力向上計画の認定を進める形になるため、「来年度は加点になるかわからないけど認定をとっておこうと」ならざるをえません。

ただし、取得して損がある制度ではありません。加点対象外でも取り組むメリットはあります。

固定資産税が軽減される

設備や機械装置、一定の工具や機器備品、ソフトウエアなどの設備投資を行う際に、その投資の規模や効果についてまとめた経営力向上計画の認定を受けた場合、その設備について「即時償却※1」や「税額控除※2」の優遇税制を受けることができます。

※1即時償却 設備導入と同時に、その費用の全額を経費として計上することができる
※2税額控除 取得金額の10%相当額の税額控除を受けることができる(ただし、税額控除は、資本金3000万円以下が10%で、それ以上の企業は7%)

金融支援

経営力向上計画の認定を受けた事業者が行う設備投資に必要な資金について、日本政策金融公庫から有利な条件で融資を受けることができます。例えば、国民生活事業の設備資金(土地及び建物に係る資金を除く)であれば、基準金利から0.9%低い利率で借入することが可能です。

また民間企業から融資を受ける際の信用保証協会の信用保証についても、通常とは別枠での信用保証などを受けることもできるようになります。

非常に大きなメリットがある計画ではありませんが、自社の生産性向上などの取り組みに向き合う、いいきっかけになり、取り組みやすい計画ですので、申請を検討してみてもいいと思います。

「経営力向上計画」の認定を受けるための流れ

(1)事前確認・準備

経営力向上計画により税金の優遇措置などを受けたい場合は、事前に関係機関と調整する必要があります。

例えば、設備投資について税制措置を受けたいのであれば、経営力向上計画の申請時に「工業会の証明書」が必要となるため、設備メーカーを通じて手続きを行っておく必要があります。その上で、経営力向上計画を申請する流れとなります。

(2)事業分類の確認

経営力向上計画は、申請する会社の業種によって提出先が変わります。そのため、「日本標準産業分類」で、自社の事業分野を確認する必要があります。

(3)経営力向上計画の作成

経営力向上計画は、自社の事業分野が属する「事業分野別指針」に沿って作成する必要があります。そのため、「事業分野別指針」をまずは確認しましょう。
その上で、申請書類を書いていくこととなります。

申請書様式は3枚で、①企業の概要、②現状認識、③経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標、④経営力向上の内容、⑤事業承継等の時期及び内容(事業承継等を行う場合)といった内容について記載していきます。

(4)経営力向上計画の申請

事業分野によって担当の役所が異なりますので、それぞれの事業分野を所管する提出先に申請しましょう。なお申請は、紙申請・電子申請ともに認められています。

(5)認定

無事に計画が認定されると、主務大臣から計画認定書と計画申請書の写しが交付されます。ちなみに、申請から認定までは約30日かかります(複数省庁にまたがる申請は約45日)。

(6)経営力向上計画の開始

税制措置や金融支援、法的支援を受け、経営力が向上するための具体的な取組を実行していきます。

この記事の監修

さむらい行政書士法人 代表 / 小島 健太郎

行政書士/財務コンサルタント

吉野 智成(よしの ともなり)

プロフィール

大学卒業後、税理士事務所で中小企業の会計を支援。
2019年 行政書士登録、個人事務所を開設
2021年 補助金・融資部門を法人化。「株式会社Gunshi」を設立
専門分野:事業者向け補助金、融資申請支援

書籍

中小会社で活用できる「補助金」のことがわかる本』(セルバ出版)

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