外国人が日本の永住権を申請する場合は家族全員で行うべき?手続きを解説
永住権申請を考える方の中には、家族と一緒に長期間日本に滞在している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「外国人が日本の永住権を申請する場合は家族全員で行った方がよいか」という問題について解説していきます。
家族で永住権申請する場合の申請手続きについても合わせて解説しますので、永住権申請を検討されている方は是非参考にしてください。
外国人でも日本の永住権を家族そろって取れる?
就労ビザまたは居住ビザを持つ方が家族とともに在留している場合、家族そろって永住許可申請することが可能です。
本章では、そもそも「永住権」とはどのような在留資格か、そして外国人(本人)が永住権を取得するための条件や、在留期間の要件緩和の特例について解説します。
永住権とは
永住権とは、外国人が在留活動や在留期限の制限を受けずに滞在国に在留できる権利をいいます(入管法第22条)。
日本では、在留資格「永住者」を取得した外国人が永住権を取得できます。
外国人(本人)が永住権を取得できるための条件
外国人(本人)が永住権を取得するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 1. 素行が善良であること
- 2. 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
- 3. 永住が日本国の利益になると認められること
3は特に項目が多いので、詳しく確認していきましょう。
1.素行が善良であること
「素行が善良であること」とは、法律を遵守し、社会的に非難されることのない日常生活を営んでいることです。
この条件は「素行要件」と呼ばれます。
素行要件を満たすかどうかが問題になるのは、過去に国内で懲役刑や罰金刑、交通違反などの処分を受けた場合です。
懲役刑(執行猶予付き判決を含む)や罰金刑を受けた場合は、処分を受けた日から5年~10年程度経過してから申請することをおすすめします。
交通違反については、行政処分と刑事処分のどちらを科せられたかによって異なります。
一時停止違反など、青切符にあたる行政処分については、1、2回程度であれば処分を受けてから期間を空ける必要はありません。
これに対して、
- ● 飲酒運転
- ● 30km/h以上のスピード違反
など、赤切符に該当する重度の交通違反に対しては、刑事処分が科されます。
このような刑事処分にあたる違反行為を行った場合は、上記のとおり、処分を受けた日から5年~10年程度の期間をあけてから申請する必要があります。
2.独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
この条件は「独立生計要件」と呼ばれます。
日本に滞在し、その家庭が独立して生計を営むことが可能かどうかの判断にあります。
具体的には、以下の年収額が必要となります。
- ● 本人に扶養者がいない場合で年収300万円以上
- ● 扶養者がいる場合は1人あたり年間70~80万円上乗せ
収入の判断については、居住する市区町村が発行する課税証明書に基づいて行われます。
なお、この収入の目安額は、最も厳しいとされる東京入国管理局の基準です。居住する地域を管轄する入国管理局によっては、もう少し年収が低くても許可される場合があります。
3.永住が日本国の利益になると認められること
この要件は「国益適合要件」と呼ばれ、以下の4つを満たす場合に充足すると認められます。
1.【【引き続き10年以上日本に在留していること】
原則として、日本に10年以上継続して在留していること、そのうち5年以上は就労資格または居住資格によって在留していることが必要です。
そのため、就労資格や居住資格に該当しない「留学生」の在留資格で6年以上在留していた場合は、継続して10年以上在留していたとしてもこの条件を充足しません。
2.【公的義務を適正に履行していること】
所得税・住民税などの納税義務や、社会保険料(年金料及び健康保険料)の納付義
務、出入国管理などの届出義務も証明する必要があります。
3. 【現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること】
多くの在留資格では、最長の在留資格が5年に設定されているため、在留期間5年の
在留資格を得ていれば「最長の在留期間をもって在留している」と認められる可能性が高いです。
また、在留期間が3年の場合もこの要件を満たす可能性があります。
4. 【公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと】
エボラ出血熱、ペストなどの感染症に感染していないこと、大麻・覚せい剤などの中毒者でないことが必要です。
ただし、新型コロナウイルスの感染歴は問題とされないようです。
また、自宅がゴミ屋敷状態になっている場合なども、「公衆衛生上の観点から有害となるおそれがある」と判断されます。
「原則10年在留」に関する特例について
上記のように、永住申請の条件として、原則10年間日本に在留していることが必要です。
一方、特に日本との結びつきが強い外国人に対しては、一定の条件を満たしていれば10年在留していなくても永住申請が認められます。
10年在留に関する特例が認められるのは、以下の条件を満たした場合です。
|
対象 |
条件 |
|---|---|
|
1.日本人・永住者及び特別永住者の配偶者 |
実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ引き続き1年以上在留していること |
|
2.日本人・永住者及び特別永住者の実子 (配偶者が外国人で1.の条件を満たす場合) |
継続して1年以上日本に在留していること |
|
3. 「定住者」の在留資格を持つ者 |
定住者の在留資格で5年以上日本に在住していること |
|
4. 難民認定を受けた者 |
認定後5年以上継続して日本に在留していること ※難民認定審査期間中の在留期間はカウントされない |
|
5. 高度専門職省令規定ポイント70点以上を有する者 |
次のいずれかに該当すること:
|
|
6. 高度専門職省令規定ポイント80点以上を有する者 |
次のいずれかに該当すること:
|
永住権の難易度は?
日本の永住権は、諸外国と比較して、取得難易度が高いといわれています。
出入国在留管理局(入管局)によると、近年の永住申請件数と許可件数、許可率は以下の通りです。
|
年 |
永住権申請件数 |
永住権許可件数 |
許可率 |
|---|---|---|---|
|
2018 |
61,027 |
31,526 |
51.7% |
|
2019 |
56,902 |
32,213 |
56.6% |
|
2020 |
57,570 |
29,747 |
51.7% |
|
2021 |
64,149 |
36,691 |
57.2% |
|
2022 |
58,927 |
37,992 |
64.5% |
日本の永住権取得が難しいとされる主な理由として、以下が挙げられます。
● 永住権取得要件の審査基準が厳格である
前述のように、永住権を取得するためには、原則として素行要件・独立生計要件・国益適合要件について、それぞれ厳しい条件をクリアしなければなりません。
● 永住権取得に必要な書類が膨大かつ多岐にわたる
永住権を取得するためには、膨大かつ多岐にわたる書類を作成・準備しなければなりません。また、提出書類に不備があった場合は追加書類の提出を求められます。
外国人の永住権の申請は家族全員で行うのがよい?
このように、永住権を取得するためには、「継続在留歴10年以上・そのうち就労資格または居住資格での在留5年以上」を始めとする、厳格な要件を満たしていなければなりません。
ただし、永住権申請者本人(以下「本人」)が永住権取得の要件を満たしている場合、本人の配偶者や子どもについては、上記の在住歴の条件を満たしていなくても、永住権取得が認められる可能性があります。
ここでは、家族全員で永住権申請する場合の条件について解説します。
就労ビザに付帯の「本体者ありき」の永住権となる
永住権を申請する本体者(永住申請する人)が就労ビザで在留していて、家族を扶養している場合、家族全員で同時に永住権申請できます。
ただし、本体者に不許可事由がある場合、家族滞在の在留資格で同時に申請した申請者も不許可となってしまいます。
家族滞在からの永住権は不可
家族滞在ビザから永住権申請する場合、家族滞在ビザの方が単独で申請しても、許可は得られないのが通常です。
家族滞在ビザは、「就労ビザ取得者(本体者)がいること」が前提の在留資格であるためです。
同時申請の場合のみ、永住権取得が許可されることがある
家族滞在ビザを持つ方が永住権を申請する場合は、就労または居住の在留資格で滞在する本体者と同時に申請する場合のみ、永住権の許可が得られる可能性があります。
永住権を取得できる「家族」の範囲について
永住権を取得できる「家族」は、本体者の配偶者及び子どもです。
ただし、永住権を申請するにあたって、配偶者や子供にも条件があります。
配偶者の場合の条件
本体者の配偶者が、本体者と同時に永住権申請をするためには、以下の条件を満たしている必要があります。
- ● 婚姻関係が3年以上継続していること
- ● 日本に引き続き1年以上在留していること
子供の場合の条件
本体者に扶養され、家族ビザで滞在している子どもについては、継続して1年以上日本に滞在していれば、本体者と一緒に永住申請が可能です。
親・親族・兄弟には適用されない
永住権の家族同時申請は、本体者の親・兄弟その他の親族には適用されません。
親や兄弟等、配偶者・子ども以外の親族を日本に呼び寄せるのは難しいのですが、特別な事情がある場合には、以下の在留資格での滞在が可能です。
● 【短期滞在ビザ】
たとえば、本体者や配偶者の出産に伴い、一時的に親のサポートが必要な場合、短期滞在ビザ(観光ビザ)※を申請できます。
※所持する国籍によっては、一定期間ビザなしでの日本滞在が可能
短期滞在ビザで認められる滞在期間は90日で、延長は原則として認められません。
● 【医療滞在ビザ】
本体者の親族が何らかの病気で治療を必要とする場合、日本の病院で治療するための「医療滞在ビザ」を取得できる可能性があります。
医療滞在ビザで認められる活動は、病院での治療の他、人間ドックや健康診断・温泉湯治なども含まれます。滞在期間は観光ビザと同じく原則90日です。
医療滞在ビザを申請する場合、医師が作成した「治療予定表」の提出が必要です。
● 【特定活動】
「特定活動」ビザは、外国人の個人的な事情に応じて個別に許可されるビザです。
たとえば、本体者の親が配偶者と死別して身寄りがなくなったために、本体者が親を呼び寄せる場合などがこれに該当します。
ただし、特定活動ビザの審査要件は厳しく、認められる可能性は高くありません。
家族全員で取得する際の注意点
永住権を家族全員で取得する際には、以下の3点に注意してください。
1.扶養者の数が増えるにつれ、収入審査が厳しくなる
本体者の独立生計要件の審査基準は、扶養者の数が増えるほど厳しくなります。
前述のように、扶養者1人あたり年収70~80万円分の上乗せが必要です。
したがって、
- ● 扶養者が1人であれば年収370~380万円
- ● 2人いれば440~460万円
- ● 3人であれば510~540万円
程度の年収額が必要となります。
2.配偶者や子の滞在年数に注意する
家族全員で永住権申請する場合、配偶者や子の滞在年数に注意が必要です。
配偶者・子どもも、日本に引き続き1年以上滞在していることが申請要件となります。
3.家族の中に素行不良がいる場合は家族全員が不許可となることも
家族で同時申請する場合、家族全員で1件の申請を行っている扱いになります。
そのため、本体者の素行要件に問題がなくても、同時に申請する家族の1人1人の素行にマイナス点があると、そのマイナス点が家族全員に影響を及ぼすので注意が必要です。
たとえば、本体者の配偶者が交通違反で処分を受けていた場合、家族全員の素行要件にマイナス評価が下されることになってしまいます。
家族で永住権の申請する場合の申請について
ここでは、家族で永住権申請する場合の申請手続きの流れや、申請に必要な書類などをご説明します。
家族の申請の流れ
永住権の家族申請の手続きは、以下の流れで行います。
- 1. 永住許可要件を満たしているかを確認する
- 2. 身元保証人を確保する
- 3. 申請書を作成・収集する
- 4. 入管局に申請書と添付書類を提出する
- 5. 入管局からの質問や追加書類提出に対応する
- 6. 入管局から結果通知を受け取る
家族の申請書類
家族の申請書類(本体者の申請書類を除く)は次の通りです。
- ● 永住許可申請書
- ● 申請理由書
- ● 申請者の年表
- ● 最終学歴の卒業証明書または卒業証書の写し
- ● 家族全員の住民票
- ● 就労している場合:在職証明書・源泉徴収票(直近1年分)・給与明細書(直近3か月分)
- ● 被扶養者である場合:非課税証明書
- ● パスポート(提示)
- ● 在留カードまたは外国人登録証明書(提示)
- ● 自宅が持ち家の場合は登記事項証明書、借家の場合は賃貸借契約書の写し
- ● 自宅の写真(外観・玄関・台所・リビング・寝室・子ども部屋)
- ● 家族と本体者が一緒に映っているスナップ写真3枚以上
身元保証人について
永住権を申請する場合、申請者の身元保証人が必要となります。
入管法上、在留許可申請に必要な「身元保証人」には、「日本の法令を守り、公的義務を適正に履行するように指導したり、入管からの指示があった場合にそれを守るよう本人を指導する」役割が求められています。
つまり、身元保証人が負う責任は、道義的なものに限られるといえます。
そのため、「保証人」という言葉で一般的に想像される「連帯保証人」の責任のように、損害賠償責任や債務履行責任を負うことはありません。
また、外国人本人が罰則を科された場合に連帯責任を負うといったこともありません。
身元保証人になってくれる人を探すにあたっては、金銭支払債務や刑事責任を負わないことを説明して、理解を得るようにしましょう。
家族の申請・審査にかかる期間
家族による永住権申請において、審査にかかる期間はおおむね6か月~12か月程度です。
申請後に追加書類の提出を求められた場合は、再提出書類の審査を要するため、結果通知までの期間が長くなるでしょう。
また、2019年以降、審査要件が厳格化したことに伴い、審査期間が長びく傾向にあります。
申請書類の提出までにかかる期間を合わせると、トータルで最短半年~最長で1年半程度かかるといえるでしょう。
まとめ
就労ビザ、または居住ビザで在留する方が永住権申請する場合、家族とともに永住権申請を行うことが可能です。
また、家族ビザで滞在している人が永住権を申請する場合は、単独での永住権申請は難しく、本体者(家族ビザ滞在者を扶養している外国人)と一緒に申請する場合のみ、永住権が認められる可能性があります。
配偶者・子どもとともに永住権申請する場合、必要となる書類が膨大かつ多岐にわたります。書類作成や準備に手間がかかる上、申請後に追加書類の提出を求められることもあります。
また、家族のうちの1人でも不利になることがあった場合、家族の申請がまとめて通らないこともあり、リスクもあります。
申請に費やす労力を軽減し、永住許可を得る可能性を高めるために、ビザ申請を専門とする行政書士のサポートを受けることをおすすめします。
家族とともに滞在している方が永住権取得を希望される場合は、ぜひ行政書士にご相談ください。
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
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