■建築士事務所登録とは何だろう
建築物の設計や、建築物の工事監理を業務として行うには、どのような登録が必要だと思いますか。建設業許可があればこれらの業務を行ってもよいと思っている方もおられるでしょう。しかし、それの業務は建設業許可などの資格では行うことができません。
実は、建築物の設計などの仕事をするには、建築士事務所登録が必須となります。それが建築工事の一環としての設計であったとしても、建築士事務所登録が必要なのです。
■建築士法で定められていること
建築士法でどのように定められているか下記に記していきます。
建築士又はこれらの者を使用する者は、他人の求め応じ報酬を得て、次の業務を業として行う場合は、一級建築士事務所、二級建築士事務所、土造建築士事務所を定めて、登録を受けなければなりません。(法第23条)
それでは、この条文の中にある『次の業務』が具体的にどのようなものか説明していきます。
①建築物の設計
②建築物の工事監理
③建築工事契約に関する事務
④建築工事の指導監督
⑤建築物に関する調査または鑑定
⑥建築に関する法令または条例に基づく手続きの代理
もしも、無登録でこれらの業務を行ってしまった場合は、懲役又は罰金に処されるので、建築士事務所登録は必ず行いましょう。
■建築士事務所登録の基礎知識
① 建築士事務所登録の要件
登録のためにはいくつかの要件があります。主に下記になります。
・事務所となる場所が確保されていること
・管理建築士が常勤で在籍していること
・一定の欠格要件に該当していないこと
・会社の場合は登記の目的に「建築物の設計・工事監理」などが含まれること
・納税の証明が取れること
② 登録に関して
建築士事務所登録は、建築士事務所所在地の都道府県にします。もし、法人などの場合で
各都道府県に支店や営業所があり、そこでも設計や建築工事契約に関する事務等を行う場合は、それぞれの所在地にて登録をすることが必要です。
③ 登録の有効期間
建築士事務所登録の有効期間は5年となります。更新する場合は、満了日の30日前までに更新の登録申請が必要ですので、お気をつけください。
④ 管理建築士に関して
建築士事務所登録をする為には、欠かせない人材がおります。それは『専任の建築士』です。
具体的には一級建築士や二級建築士、土造建築士です。ただ、これらの建築士資格だけでは足りず、ある一定の基準を満たした『管理建築士』となる必要があります。
管理建築士とは、建築士として3年以上の設計等の業務に従事し、登録講習期間が実施する管理建築士資格取得講習を受講しなくてはなりません。
ちなみに、この管理建築士は専任でなければなりません。専任とは営業所又事務所に常勤し、専ら管理建築士として職務を行うことです。もし、この管理建築士を欠く場合は、建築事務所登録ができないのでご注意ください。
※万が一、建築事務所登録後に管理建築士がいなくなった場合は、30日以内に廃業等の届出をする必要があります。
⑤ 申請に必要な書類
申請に必要な書類を記載いたします。なお申請先都道府県によって異なることがあります。 ・建築士事務所登録申請書
・所属建築士名簿
・役員名簿(法人の場合)
・略歴書(登録申請者・管理建築士分)
・誓約書
・定款のコピー(法人の場合)
・履歴事項全部証明書(法人の場合)
・建築士事務所所在地の賃貸借契約書の写し(法人の場合)
・法人事業税の納税証明書
・管理建築士の専任性を証する書面(社会保険証等)
・管理建築士の建築士免許証のコピー
・管理建築士講習会修了証書のコピー
⑥ 新規登録の流れ
新規登録申請の手続きの流れとしては下記のような流れになります。
申請書類の仮審査および登録手数料納入確認
↓
受理および本審査
↓
登録手続
↓
登録通知書・副本等の送付
新規登録申請から登録までの標準的な日数は、約1週間です。(あくまで目安となります)
具体的には、月曜日から金曜日申請受付分は翌週金曜日に登録となります。
⑦登録手数料
登録手数料がかかります。
一級建築士事務所:16,000円
二級又は木造建築事務所:11,000円
⑧登録後の手続き
建築事務所登録を完了したからといって、後は業務だけに集中すればいいだけではありません。
毎年の事業年度修了後の3カ月以内に業務報告書を提出することが義務付けられています。記載する内容としては、業務の実績や、所属建築士名簿、所属建築士の業務実績、管理建築士による意見の概要などです。
もし、この報告書を提出しなかった場合は、30万円以下の罰金に処される場合があるのでお気をつけ下さい。
■まとめ
こちらでは建築士事務所登録とは何なのかについて解説いたしました。
建築士事務所登録は、建築士として開業されたい方はもちろんのこと、建設業や宅建業と兼業で行う方もいらっしゃると思います。しかしながら、普段の業務で忙しかったりすると調べる時間などなく、申請に関する知識が曖昧になってしまうことあると思います。
建築士事務所登録で不安な点があるときは、建築士事務所登録の専門家である行政書士に是非ご相談ください。