宅建業を始めるには、まず宅地建物取引業免許の取得が大前提となっています。免許取得要件は幾つかありますがその中でも、事務所を構えることが法律で決められています。
事務所といってもただの簡易的な事務所ではなく、ここで言う事務所とは「不動産業を独立した環境で営業できる事務所」を設置しなければなりません。
こちらでは、宅地建物取引業免許の事務所要件について詳しく解説していきます。
■宅建業免許の事務所要件とは?
1.不動産業の業務を継続的に行える機能を持った事務所であること
2.他企業から独立した環境の中で営業できる事務所であること
上記2点が大きく分けて事務所を設置する上での要件となっています。
ここまで読むと「事務所を借りる余裕がないから無理かも」。と思ったり、「今話題のコワーキングスペース等を利用してうまく事務所として運営できないだろうか」。と思われる方も少なくありません。そこで、ある一定の条件を確実に満たすことができればこれらの悩みを解決できるかもしれません。それでは、今から事務所要件の中身について詳しく解説していきたいと思います。
■宅建業法で定められている事務所とは?(宅建業者によって分類されます)
1.主たる事務所(本店)が設置されていること
【本店の場合】本店で営業を営んでいれば事務所としてみなされます。また本店で宅建業を営んでいなくても、支店に対して司令塔の役目を果たすためなら事務所としてみなされます。
【支店の場合】もちろん宅建業を営んでいれば事務所としてみなされます。支店で宅建業を営んでいない場合はみなされません。
2.継続的に運営できる施設を有する場所であること
一時的な事務所としてホテルの一室や、テント張り等は認められません。また、不動産業を継続するには専任の宅地建物取引士が必ず必要になってきます。
■事務所を設置する上で5つの必須条件
➀標識の提示
➁報酬額の提示
➂帳簿の備付け
➃従業員の名簿の備付け
➄成年者で専任の宅地建物取引士の設置
それでは一つずつ詳しくご説明していきます。
➀標識の提示
標識とは、「宅地建物取引業者票」のことで、事業主様が自ら作成して提示します。
➁報酬額の提示
事業主様が宅地、建物の売買に関して受け取ることができる報酬額を提示します。
➂帳簿の備付け
取引の都度、取引詳細を各事務所に備え付けます。事務所で行った取引歴は5年、新築住宅に係る取引は10年保存することが義務付けられています。記載内容も細かく決められています。
➃従業員の名簿の備付け
事務所ごとに、従事する従業員すべての人の名簿を作成し、最低でも10年は保存しなければなりません。
➄成年者で専任の宅地建物取引士の設置
5名につき1名以上必ず設置しなければなりません。
以上が5つの必須条件です。また多数支店を構える際には、上記の5つの必須条件を各事務所に設置しなければなりません。ここまで読んで、宅建業を営むには幾つかの要件をクリアしなければならないことがわかりましたね。それでは次にどんな事務所なら認められるのか解説していきます。
■どんな事務所なら許可が下りる?
自宅やシェアオフィスを使って事務所として運営したい場合は、原則としては不可の取り扱いになっています。しかし事前に各都道府県の担当窓口で事前に相談を行い、一定の要件を満たすことができれば認められるケースがあります。
➀自宅の一部を事務所にしたい。下記の条件が必須になってきます。
専用の出入り口がある(玄関から事務所入り口まで他の部屋を通って行く等は認められません)
居住スペースと事務所がきちんと分かれている
事務所としての形態が整えられている(事務所としてのみ使用される部屋でなければ認められません)
自宅とは別の固定電話を設置すること
➁シェアオフィスの一部を事務所にしたい
他法人と独立した専用出入り口がある(他の事務所を通らずに入れること)
他法人との空間をしっかりと間仕切りされていること(固定式で180cm以上のパーテーション等でしっかりと区切られていること)
以上が自宅やシェアオフィスで事務所を構えるために必要な要件となります。
■事務所が準備できた後やるべきことは?
各必要な要件を満たした事務所が設置できたら、次に事務所として認めてもらえるかの書面での審査があります。
書面審査では、写真だけで事務所とみなしてもらえるよう説得できるような写真を提示しなければなりません。
(建物全体が入った写真・テナント表示・入り口がわかる写真・事務所の詳しい平面図・間取り図)
簡単なようですが写真提示内容や平面図、間取り図の記載事項には細かい条件がありますので気を付けましょう。
■まとめ
文字だけで読むと簡単そうに聞こえるかもしれませんが宅建業の免許申請の中でも事務所要件は特に厳しくチェックされます。各都道府県によって審査基準も変わってきますし、事務所要件の審査は年々厳しくなってきているのが現状です。申請前に必ずHPや窓口へ行き確認しておくことをお勧めします。
また、自宅での事務所を構えたいと考えていらっしゃる方は審査要項も細かく厳しいチェックが入りますので、一人では難しいと悩まれる方や少しでもご不明な点がございましたら、お気軽に行政書士へお問い合わせください。