シェンゲンビザの代行・代理申請はできない?
主にEU諸国において国境管理の廃止、または簡略化について定めた協定にシェンゲン協定があります。
シェンゲン協定は1985年、ルクセンブルクのシェンゲンで調印され、シェンゲンビザと呼ばれるEU諸国共通のビザも発行されました。これにより、シェンゲン協定の加盟国外からの渡航にはシェンゲンビザの取得が必要となっています。
シェンゲンビザの代行・代理申請は基本的にできない?
シェンゲンビザの概要についてはここまでのとおりですが、申請については渡航者本人によるものでなければならず、原則として代理申請は認められません。
申請には加盟国の大使館や領事館で本人との面接が必要となる
シェンゲンビザの代理申請ができないひとつの理由は、申請時に本人との面接があるためです。
申請時に、シェンゲン協定加盟国の大使館や領事館において、渡航者本人との面談がおこなわれます。
この申請は、審査と面接がセットになっています。
専門家に申請書類の作成や相談をすることは可能
代理申請を依頼することはできませんが、ビザ申請の方法に明るい行政書士などの専門家に、以下のようなサポートを依頼することは可能です。
- 申請書類の作成
- 申請書類の確認
- 取得後のビザの確認
またこれらの依頼によって、以下のようなメリットが生まれます。
ビザ申請についての最新情報を入手できる
ビザの申請は、「指定されたフォーマットに必要事項を記入するだけ」といったシンプルなものではありません。
必要となる書類を調べ、インターネット上などにある最新情報をもとに取捨選択が求められます。
その点、行政書士などの専門家に依頼すれば、最新情報に基づき、必要書類などはあらかじめリストアップするなどできるため、適切な対応が可能です。
必要書類の調査や準備にかかる手間をはぶける
行政書士などの専門家は、シェンゲンビザの申請をはじめとした類似の事例を、いくつも同時進行で進めています。
これらの経験に基づき、彼らは書類の収集や、申請書の記載方法を素早く判断できます。
これにより、申請までの期間を短縮し、かつ適切な提出書類によって審査にかかる手間や時間も節約できます。
シェンゲンビザ申請の流れ
ではここからは、シェンゲンビザを申請する際の実際の手順についてみていきます。
1.必要書類を準備する
シェンゲンビザの申請にはまず必要書類を整え、申請書を入手する必要があります。
必要書類
シェンゲンビザ申請にあたって必要となる書類は以下のとおりです。
- シェンゲンビザ申請書
- パスポート
- パスポート用写真
- 居住証明書
- 旅行日程表
- ホテルの予約を証明できる書類
- 資金証明書
- 海外旅行保険の保険証券
また、申請する国や申請者本人の状況により、次のような追加書類が必要になる場合もあります。
- 出生証明書
- 結婚証明書
- スポンサーシップ証明書
- 雇用契約書
- 給与明細書
- 招待状
- 雇用主からのレター
- 教育機関の在学証明書
申請書類に記入する項目
シェンゲンビザ申請書については、ウェブサイトからダウンロードできるようになっています。
以下の項目をそれぞれ記入します。
なお、項目はシェンゲン協定加盟国によって異なる場合があります。また、申請書類を複数人で共有することはできませんのでご注意ください。
- パスポートに記載された申請者の姓
- 出生時の姓(旧姓)(1.で記入した姓と異なる場合)
- パスポートに記載された申請者の名(ファーストネーム)
- 生年月日(日・月・年の順に記入)
- パスポートに記載された出生地
- パスポートに記載された出生国(パスポートに記載されていない場合も記入する)
- 現在の国籍(出生時の国籍と異なる場合はその国籍も記入)
- 性別
- シビル・ステイタス(法的な婚姻状況)(該当するものにチェック)
- 親権者または法定後見人の氏名、住所、国籍(申請者が未成年の場合)
- 国民ID番号(所持している場合)
- パスポートの種類(一般・外交・サービス・公用など)
- パスポート番号(旅券番号)
- パスポートが発行日(延長日は含めない)
- パスポートの有効期限(延長日を含む)
- パスポートの発行機関(国家機関など)
- 申請者の自宅住所(申請者の場合郵便物を受け取れる住所)およびEメールアドレス、電話番号(住所が申請者のものでない場合はその所有者を記入)
- 申請者が自身の国籍と異なる国に居住している場合、居住許可証番号とその有効期限
- 現在の職業(申請者のパスポートに記載されている職業)
パスポートの職業が古い場合には現在の職業と簡単な説明を記入
無職の場合は、「no occupation(職業なし)」、「unemployed(失業中)」、「retired”(引退した)」など、もっともふさわしい雇用形態を記入
- 上記の職業に関連する雇用主あるいは教育機関とその連絡先
- 渡航の主たる目的(観光、ビジネス、家族・友人訪問、文化、スポーツ、公式訪問、医療、就学、空港での乗り継ぎ、その他の理由など)
- 目的地(申請者が滞在の大半の期間を過ごすシェンゲン協定加盟国)
- 申請者が最初に入国するシェンゲン協定加盟国
- 申請者が滞在中にシェンゲン協定加盟国への入国と出国を希望する回数
- 申請者がシェンゲン協定加盟国において滞在を希望する期間
- 申請者が過去3年間に取得したシェンゲン査証の数
- シェンゲン査証のために以前に以前に採取された指紋の数(初回申請場合は面接時に採取)
- 最終目的国の入国許可証(取得している場合)
最終目的地がシェンゲン協定加盟国以外の場合、その国で取得したビザの番号と有効期限を記載する
- 申請者がシェンゲン協定加盟国に最初に入国する予定日
- 申請者がシェンゲン協定加盟国を出国する予定日
- 申請者を招へいした者の氏名、あるいは申請者が滞在するホテルとその連絡先
- 申請者を招へいあるいは受け入れる機関の名称と連絡先(該当する場合)
- 滞在費の負担について(旅費の負担者や支払い方法(現金、クレジットカード、小切手など)を記載)
- 申請書が記入された日付と場所
- 署名
・申請者本人のもので、それ以外の者が記入したものは認められません
・18歳未満の申請者については、親権者あるいは法定後見人の署名が必要となります
申請費用
シェンゲンビザの申請にかかる費用は
- ビザ申請を申請する大使館
- 外部サービスプロバイダーであるVFSグローバルの窓口
のいずれかで支払う必要があります。
また、その費用は申請内容により、それぞれ以下のとおりです。
初回申請 |
80ユーロ |
---|---|
6歳から12歳までの初回申請 |
40ユーロ |
6歳までの初回申請 |
無料 |
ビザの延長 |
30ユーロ~ |
不可抗力あるいは人道的理由によるビザの延長 |
無料 |
団体旅行の場合の延長 |
1ユーロ |
シングルエントリー(1カ国への入国)からマルチエントリー(複数国への入国)への変更 |
30ユーロ |
なお、ビザが拒否された場合でも、支払った料金については返金されません。
さらに、シェンゲンビザの申請費用はEU全体のインフレを理由に、今後12%の引き上げが検討されています。
2.加盟国の大使館や領事館で審査と面接をしたのちに発給
シェンゲンビザを申請する際には、以下のような流れになります。
- 必要書類を用意する
- 面接日の予約を取る
- 必要書類を揃えて持参
- 大使館や領事館で面接を受ける
そのうえで、面接では「申請内容に関する質問に答える」必要があります。
シェンゲンビザを申請する際の注意点
シェンゲンビザの申請では、自らで申請する場合にも、またその一部を専門家に依頼する場合でも、次のような注意点があります。
シェンゲンビザで滞在可能な日数について
シェンゲンビザは「あらゆる180日間における最長90日」のルールにより、『180日の期間のうち、90日以内であれば、何度でも渡航が認められる』ことになります。
一方、一度の渡航で最長となる90日間シェンゲン圏内に滞在した場合には、『向こう3か月間(90日)はシェンゲン協定加盟国への入国および滞在が不可』となっています。
こうしたケースでは、シェンゲンビザではなく、個別に各国の入国ビザの取得が必要です。
なお、過去1年以内に複数回シェンゲン協定加盟国に滞在履歴がある場合、以後の滞在可能期間についてはEU(欧州連合)の政策執行機関EC(欧州委員会)サイト「Short-stay Visa Calculator(短期滞在ビザ計算)」のページで確認できます。
必要書類の不備等でビザが発給されないケースもある
シェンゲンビザの申請では、原則として、指定されたすべてのカテゴリーの書類を提出する必要があります。
ただし、渡航目的によっては、書類が揃っていなくても、その一部を用意することでビザが発給されることがあります。
とはいえ、以下のような点に注意が必要です。
- 申請に添付できる書類が少なかった場合には、審査上不利になることがある
- 面接官から追加の書類の提出を求められることもある
- すべての書類を提出しても、申請が却下される可能性がある
特に、近年では有効なワクチン接種証明書などを提示できない場合、入国拒否の可能性が高くなるため、申請には必要書類の十分な確認が必要です。
また、審査は書類の提出後2週間程度をかけておこないます。
書類に不備があった場合には、この期間内に再提出することで、審査を通過できるケースもあります。
シェンゲンビザを取得していても無条件で各国へ入国できるわけではない
シェンゲンビザは原則として「出入国審査なし」で協定加盟国域内を自由に往来できます。
ただし、「実際の出入国の判断は、国境の入国審査官や警察に委ねられる」という点には留意しておかなければなりません。
シェンゲンビザ(短期滞在ビザ)とは?
シェンゲンビザとは、シェンゲン協定に加盟するすべての国で発行される、短期滞在ビザです。
シェンゲン協定加盟国域外から域内の各国へ入国し、滞在または通過する者を対象としています。
協定加盟国のいずれかで発行されていれば、シェンゲン域内のあらゆる国で有効となります。
シェンゲン協定加盟国を自由に移動できる利便性の高いビザ
シェンゲンビザ最大の特長は、その利便性にあります。
シェンゲン協定加盟国域内であれば、訪問国ごとに個別にビザを取得する必要はなく、往来は自由です。
このため、
- 渡航者は各国ごとに必要書類を揃える必要がない
- 大使館や領事館に出向いて審査を受けたうえでビザを取得する必要がない
- 時間やコストを削減できる
といったメリットがあります。
180日間の期間に最大90日間、加盟国間を移動できる
短期滞在のための圏内共通の査証として発行されるシェンゲンビザには、シェンゲン協定に基づくシェンゲン国境規則の、「あらゆる180日間における最長90日」という滞在日数に関するルールがあります。
このルールに基づき、シェンゲンビザを取得すると、
- 180日の期間の内で合計90日間
- 加盟国間の観光、出張、訪問などが目的の移動
上記が認められます。
シェンゲンビザの種類について
シェンゲンビザには
- Aビザ
- Cビザ
- Dビザ
といった種類があります。
これらは、それぞれに制限が設けられているため、申請時に渡航目的に応じた種類を選択する必要があります。
シェンゲンビザ Aビザ
国際線の際、乗り継ぎ空港のトランジットゾーンのみで有効なビザです。シェンゲン加盟各国へ入国することはできません。
シェンゲンビザ Cビザ
短期滞在を目的とした最も一般的なシェンゲンビザです。シェンゲン協定加盟国への最初の入国から半年間(6ヵ月間)、通算90日まで滞在が可能になります。
シェンゲンビザ Dビザ
例外的に長期滞在が認められるシェンゲンビザです。一方で、シェンゲン協定加盟国の自由な往来はできず、滞在は1カ国のみとなります。短期の就労のほか留学などの長期滞在を希望する際に取得します。
シェンゲンビザ申請の条件
原則、シェンゲンビザは主要目的国において、次のような条件のもとで申請が認められます。
- シェンゲン圏内への訪問において主要目的国が唯一の目的地であること
- シェンゲン圏内で複数の国に入国するが主要目的国が定まっていること
- シェンゲン圏内での主要目的国定まっていないが、ビザを申請する際最初に訪問する国であること
なお、「主要目的国」とは、滞在の主な目的となる国のことを言い、通常はもっとも長く滞在する国を意味します。
シェンゲン協定加盟国
EU諸国が中心となっているシェンゲン協定ですが、協定加盟国の詳細は、2024年4月1日現在、以下の29カ国となっています。
- オーストリア
- ベルギー
- チェコ
- デンマーク
- エストニア
- フィンランド
- フランス
- ドイツ
- ギリシャ
- クロアチア
- ハンガリー
- アイスランド
- イタリア
- ラトビア
- リヒテンシュタイン
- リトアニア
- ルクセンブルク
- マルタ
- オランダ
- ノルウェー
- ポーランド
- ポルトガル
- スロバキア
- スロベニア
- スペイン
- スイス
- スウェーデン
- ブルガリア
- ルーマニア
シェンゲンビザの取得が求められる国
一方で、シェンゲンビザ取得の対象となる国々は以下のとおりです。
- アフガニスタン
- アルジェリア
- アンゴラ
- アルメニア
- 当局
- アゼルバイジャン
- バーレーン
- バングラデシュ
- ベラルーシ
- ベリーズ
- ベナン
- ブータン
- ボリビア
- ボツワナ
- ブルキナ
- ビルマ/ミャンマー
- ブルンジ
- カンボジア
- カメルーン
- カーボベルデ
- 中央アフリカ共和国
- チャド
- 中国
- コモロ
- コンゴ
- コート
- キューバ
- ディボワール
- Dem.コンゴ民主共和国
- ジブチ
- ドミニカ共和国
- エクアドル
- エジプト
- 赤道直下
- エリトリア
- エチオピア
- ファソ
- フィジー
- ガボン
- ガンビア
- ガーナ
- ギニア
- ギニア
- ギニアビサウ
- ガイアナ
- ハイチ
- インド
- インドネシア
- イラン
- イラク
- ジャマイカ
- ヨルダン
- カザフスタン
- ケニア
- コソボ
- クウェート
- キルギス
- ラオス
- レバノン
- レソト
- リベリア
- リビア
- マダガスカル
- マラウイ
- モルディブ
- マリ
- マリアナ
- モーリタニア
- モンゴル
- モロッコ
- モザンビーク
- ナミビア
- ネパール
- ニューギニア
- ニジェール
- ナイジェリア
- ナイジェリア
- オマーン北部
- パキスタン
- パレスチナ
- パプア
- フィリピン
- カタール
- ロシア
- ルワンダ
- サントメ・プリンシペ
- サウジアラビア
- セネガル
- シエラレオネ
- ソマリア
- 南アフリカ
- 南スーダン
- スリランカ
- スーダン
- スリナム
- スワジランド
- シリア
- タジキスタン
- タンザニア
- タイ
- 東ティモール
- トーゴ
- トンガ
- チュニジア
- トルクメニスタン
- トルクメニスタン
- ウガンダ
- ウズベキスタン
- バヌアツ
- ベトナム
- イエメン
- ザンビア
- ジンバブエ
なお、日本やアメリカをはじめとした、上記以外の60の国籍であれば、シェンゲンビザは不要となっています。
まとめ
シェンゲンビザの申請は、原則、申請者が自らおこなわなければなりません。
しかし、プロセスの一部は行政書士などの専門家に依頼することも可能です。
特に、ビザの申請では、正確な情報と適切な書類の準備が重要です。
そこで、これらの事情に精通した専門家のサポートや、代行サービスを上手に活用することは、確実なビザ取得への近道となります。