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シェンゲンビザの条件・申請方法・ 必要書類について徹底解説!
海外へ渡航する際には国や目的、滞在期間などに応じた入国許可証であるビザを取得しなければなりません。
しかし、ヨーロッパのシェンゲン条約(Schengen Agreement)に基づくシェンゲン協定加盟国間では、「シェンゲンビザ」と呼ばれる往来の自由度の高い共通のビザが発行されています。
シェンゲンビザの概要について
シェンゲン条約は1995年の締結された条約で、シェンゲン圏(Schengen Area)が設定されたことにより、加盟したヨーロッパの26カ国からなる区域では、互いに接した国境の警備隊が撤廃されました。
これにより、シェンゲン協定加盟国間では圏内の国境警備が緩和される一方で、圏外の国境における警備は強化されています。
シェンゲンビザはこの『シェンゲン協定』に基づいて発給されるビザです。
そのため取得した旅行者は、180日間の期間内に最大90日間、シェンゲン協定加盟国間を自由に往来できるようになります。
シェンゲン協定加盟国内に渡航する際の短期滞在ビザ
通常、ビザの取得には各国の大使館や領事館に出向き、必要書類を揃えて審査を受けなければなりません。このため、渡航希望者は時間やコスト面で不利益を被る場合があります。
一方、シェンゲンビザは、シェンゲン協定加盟国であればそれぞれの訪問国でビザを取得する必要がない点が最大の特長です。
このため、シェンゲンビザを取得していればシェンゲン協定加盟国内へ渡航する場合、そのすべての国においてビザを個別に申請しなくても自由に往来することが可能です。
ただし、以下の点にはご注意ください。
- 各国へ入国する際の入国管理の審査を受ける必要はあり、無条件で往来できるというわけではありません。
- 入国審査官により入国不可と判断された場合には、入国が拒否されることもあります。
なお、2024年よりEU加盟国へ入国する際には「ETIAS(エティアス)」と呼ばれる渡航認証を取得しなければなりませんが、すでにシェンゲンビザを取得している場合にはシェンゲンビザでの入国が認められるため、ETIASの申請は不要です。
シェンゲン協定加盟国
2024年4月1日現在、シェンゲン協定に加盟している29カ国の詳細は以下のとおりです。
- オーストリア
- ベルギー
- チェコ
- デンマーク
- エストニア
- フィンランド
- フランス
- ドイツ
- ギリシャ
- クロアチア
- ハンガリー
- アイスランド
- イタリア
- ラトビア
- リヒテンシュタイン
- リトアニア
- ルクセンブルク
- マルタ
- オランダ
- ノルウェー
- ポーランド
- ポルトガル
- スロバキア
- スロベニア
- スペイン
- スイス
- スウェーデン
- ブルガリア
- ルーマニア
最近では、ノルウェー、アイスランド、スイス、リヒテンシュタ インといった、EU加盟国ではない国もシェンゲン協定に加盟しています。
さらに今後はブルガリア、クロアチア、キプロス、ルーマニアなどがシェンゲン協定に加盟する予定となっています。
一方で、アイルランドとイギリスの2ヵ国については、自国の国境警備維持および共通旅行区域(CTA)制度の国境警備方針をほかの EU諸国と共有する目的から、協定を脱退しています。
日本国籍ならシェンゲンビザは免除となる
シェンゲン協定加盟国間では往来が自由なシェンゲンビザですが、日本国籍であれば、そもそもシェンゲンビザの取得そのものが免除され、かつ往来の自由度も担保されています。
ただし、以下のようにいくつかの条件は設けられています。
渡航目的が観光や報酬を伴わない商用であること
シェンゲンビザが免除される条件としては、『渡航の目的が健全であること』が前提です。
また、現地において、就労や報酬を伴わないことも条件のひとつです。
このため、渡航先における就職や長期滞在、永住などを希望して渡航する場合は、ビザ免除の対象とはなりません。
一方、ビザ免除の対象となる主な渡航目的は以下のとおりです。
- 観光が目的の旅行
- 親族・知人などへの訪問
- 出張や商談、会議などへの出席
- 現地における撮影や取材
- スポーツイベントなどへの参加や文化的交流
- 専門的な治療・療養など
- 短期間の研修・訓練など
渡航が90日以内であること
シェンゲンビザには滞在日数について「あらゆる180日間における最長90日」という規定があります。
このため、日本国籍を持ち、シェンゲンビザを取得することなく入国と滞在が認められたとしても、一度の渡航につき滞在が認められる日数は最長で90日以内となります。
なお、「あらゆる180日間における最長90日」という規定については、このあと詳しく説明します。
パスポートの有効期限が出国予定日から数えて3ヶ月以上あること
シェンゲンビザの免除にはパスポートに関しても定めがあり、その条件は以下のとおりです。
- 過去10年以内に発行され、かつICチップ搭載の機械読み取り式のパスポートであること
- シェンゲン協定加盟国への出国予定日から3か月以上の有効期限のあるパスポートを所持していること
上記の条件に対し、日本で発行されているものはすべてICチップ搭載の機械読み取り式のパスポートです。ただし、滞在国を出国する予定日から3か月以上の有効期限がなければなりません。
免除協定を結んでいる国の国籍保持者もシェンゲンビザは不要
日本国籍以外でもアメリカを含む60の国や地域の市民はシェンゲン協定によって、シェンゲン圏でのシェンゲンビザが免除となります。
しかし、これ以外の国々については、シェンゲンビザの取得を義務づけられており、シェンゲンビザの取得が必要です。
シェンゲンビザの種類について
シェンゲンビザにはAビザ、Cビザ、Dビザといった種類があります。
これらは、それぞれに制限が設けられているほか、渡航目的に応じた種類のビザを選択し、申請する必要があります。
Aビザ(空港乗り継ぎの際のトランジットビザ)
国際線の際、乗り継ぎ空港のトランジットゾーンのみで有効なビザです。シェンゲン加盟各国へ入国することはできません。
Cビザ(短期滞在ビザ)
短期滞在を目的とした最も一般的なシェンゲンビザです。シェンゲン協定加盟国への最初の入国から半年間(6ヵ月間)、通算90日まで滞在が可能になります。
タイプDシェンゲンビザ(長期滞在ビザ)
長期滞在を目的としたシェンゲンビザです。シェンゲン協定加盟国の自由な往来はできず、滞在は1カ国のみとなります。短期の就労のほか留学といった長期滞在を希望する際に取得します。
シェンゲンビザの申請方法を解説
原則、シェンゲンビザの申請は主要目的国で申請しなければなりません。「主要目的国」とは滞在の主な目的となる国で、通常はもっとも長く滞在する国です。
1.シェンゲンビザの申請に必要な書類を準備する
シェンゲンビザ申請にあたっては、まず必要書類を整え、申請書を入手します。必要書類はすべての参加国において同様です。
ただし、申請する国や申請者本人の状況により、さらにそれぞれ異なる追加書類が必要になる場合もあります。
必要書類
- シェンゲンビザ申請書
- パスポート
- パスポート用写真
- 居住証明書
- 旅行日程表
- ホテルの予約を証明できる書類
- 資金証明書
- 海外旅行保険の保険証券
追加書類
- 出生証明書
- 結婚証明書
- スポンサーシップ証明書
- 雇用契約書
- 給与明細書
- 招待状
- 雇用主からのレター
- 教育機関の在学証明書
シェンゲンビザ申請書の記入例
シェンゲンビザ申請書についてはウェブサイトからダウンロードし、以下の項目をそれぞれ記入します。なお項目はシェンゲン協定加盟国によって異なる場合があります。
- パスポートに記載された申請者の姓
- 出生時の姓(旧姓)(1.で記入した姓と異なる場合)
- パスポートに記載された申請者の名(ファーストネーム)
- 生年月日(日・月・年の順に記入)
- パスポートに記載された出生地
- パスポートに記載された出生国(パスポートに記載されていない場合も記入する)
- 現在の国籍(出生時の国籍と異なる場合はその国籍も記入)
- 性別
- シビル・ステイタス(法的な婚姻状況)(該当するものにチェック)
- 親権者または法定後見人の氏名、住所、国籍(申請者が未成年の場合)
- 国民ID番号(所持している場合)
- パスポートの種類(一般・外交・サービス・公用など)
- パスポート番号(旅券番号)
- パスポートが発行日(延長日は含めない)
- パスポートの有効期限(延長日を含む)
- パスポートの発行機関(国家機関など)
- 申請者の自宅住所(申請者の場合郵便物を受け取れる住所)およびEメールアドレス、電話番号(住所が申請者のものでない場合はその所有者を記入)
- 申請者が自身の国籍と異なる国に居住している場合、居住許可証番号とその有効期限
- 現在の職業(申請者のパスポートに記載されている職業)
パスポートの職業が古い場合には現在の職業と簡単な説明を記入
無職の場合は、「no occupation(職業なし)」、「unemployed(失業中)」、「retired”(引退した)」など、もっともふさわしい雇用形態を記入
- 上記の職業に関連する雇用主あるいは教育機関とその連絡先
- 渡航の主たる目的(観光、ビジネス、家族・友人訪問、文化、スポーツ、公式訪問、医療、就学、空港での乗り継ぎ、その他の理由など)
- 目的地(申請者が滞在の大半の期間を過ごすシェンゲン協定加盟国)
- 申請者が最初に入国するシェンゲン協定加盟国
- 申請者が滞在中にシェンゲン協定加盟国への入国と出国を希望する回数
- 申請者がシェンゲン協定加盟国において滞在を希望する期間
- 申請者が過去3年間に取得したシェンゲン査証の数
- シェンゲン査証のために以前に以前に採取された指紋の数(初回申請場合は面接時に採取)
- 最終目的国の入国許可証(取得している場合)
最終目的地がシェンゲン協定加盟国以外の場合、その国で取得したビザの番号と有効期限を記載する
- 申請者がシェンゲン協定加盟国に最初に入国する予定日
- 申請者がシェンゲン協定加盟国を出国する予定日
- 申請者を招へいした者の氏名、あるいは申請者が滞在するホテルとその連絡先
- 申請者を招へいあるいは受け入れる機関の名称と連絡先(該当する場合)
- 滞在費の負担について(旅費の負担者や支払い方法(現金、クレジットカード、小切手など)を記載)
- 申請書が記入された日付と場所
- 署名
- 申請者本人のもので、それ以外の者が記入したものは認められません
- 18歳未満の申請者については、親権者あるいは法定後見人の署名が必要となります
- 申請書を複数人で共有することはできません
申請費用
シェンゲンビザの申請にかかる費用はビザ申請を申請する大使館または外部サービスプロバイダーであるVFSグローバルの窓口で支払う必要があります。
また、その費用は申請内容により、それぞれ以下のとおりです。
初回申請 |
80ユーロ |
---|---|
6歳から12歳までの初回申請 |
40ユーロ |
6歳までの初回申請 |
無料 |
ビザの延長 |
30ユーロ~ |
不可抗力あるいは人道的理由によるビザの延長 |
無料 |
団体旅行の場合の延長 |
1ユーロ |
シングルエントリー(1カ国への入国)からマルチエントリー(複数国への入国)への変更 |
30ユーロ |
なお、ビザが拒否された場合でも、支払った料金については返金されません。
さらに、シェンゲンビザの申請費用はEU全体のインフレを理由に、12%の引き上げが検討されています。
2.加盟国の大使館や領事館で審査と面接をしたのちに発給
申請書と申請書類の準備が完了したら、申請者は以下の流れで申請を行います。
- もっとも主要目的国の大使館あるいは領事館にアポイントを取る
- 申請書類を提出
- ビザを申請
主要目的国に該当する国がない場合には、シェンゲン協定加盟国のなかで最初に渡航する国を選択します。
原則、申請は申請者本人がおこなう必要があり、審査と面接を経てシェンゲンビザの発給となります。
そして、シェンゲンビザ取得後はシェンゲン協定加盟国の往来が原則可能となりますが、各国への入国の際は、都度入国管理官による審査が必要です。
シェンゲンビザを申請する際の注意点
シェンゲンビザの申請にあたっては特に以下のような注意点があります。
シェンゲンビザにおける滞在日数についての規定を考慮しなくてはならない
シェンゲンビザの「あらゆる180日間における最長90日」という規定は180日間、つまり半年以内において、シェンゲン協定加盟国で滞在が認められる期間が最長で90日となるという意味です。
また、この90日とは、滞在期間の合計で90日間です。
このため、一度の滞在が30日の場合、ビザを取得しなくても半年以内であれば、3回の渡航が認められることになります。
一方、一度の渡航で最長となる90日間シェンゲン圏内に滞在した場合には、向こう3か月間(90日)はシェンゲン協定加盟国への入国および滞在が不許可となります。
この場合、個別に各国の各種ビザの取得が必要です。
なお、過去1年以内に複数回シェンゲン協定加盟国に滞在履歴がある場合には、以後の滞在可能期間をEU(欧州連合)の政策執行機関EC(欧州委員会)サイト「Short-stay Visa Calculator(短期滞在ビザ計算)」のページで確認できます。
必要書類の不備等でビザが発給されないケースもある
シェンゲンビザの申請では、原則として、指定されたすべてのカテゴリーの書類を提出しなければなりません。
しかし、渡航目的によっては、あらゆる書類が揃っていなくても、ビザが発給されることがあります。
ただし、以下のような注意点がありますのでご確認ください。
- 申請に添付できる書類が少なかった場合には、審査上不利になることがある
- 面接官から追加の書類の提出を求められることもある
審査は書類の提出後2週間程度をかけておこなうため、書類に不備があった場合にはこの期間内に再提出することが可能
- すべての書類を提出しても、申請が却下される可能性がある
特に、近年では有効なワクチン接種証明書などを提示できない場合、入国拒否の可能性が高くなるため、申請には必要書類の十分な確認が必要です。
海外旅行保険への加入を義務づけている国がある
シェンゲン協定加盟国の中には、入国にあたって海外旅行保険の加入を義務づけている国もあります。
こうした国々では、渡航先の要件を満たした補償のある海外旅行保険に加入していないと、入国が認められなかったり、罰金を支払わなければならない場合があります。
このため、渡航の際は提示を求められた際に提示できるよう、常に保険証券を携帯していなければなりません。
そのほかのシェンゲン協定加盟国は、「ビザ免除での入国は海外旅行保険の加入を推奨」としており、ビザ申請する際は海外旅行保険証券の提出も求めています。
行政書士等の専門家にサポートを依頼するのがおすすめ
シェンゲンビザの申請は原則申請者自身がおこなうものですが、次のような理由から、行政書士などの専門家にサポートを依頼するのもおすすめです。
複雑なビザの最新情報を持っているため安心して任せられる
ビザの申請は、「指定されたフォーマットに必要事項を記入するだけ」といったシンプルなものではありません。
必要となる書類を調べ、インターネット上などにある最新情報をもとに取捨選択が求められます。
その点、行政書士などの専門家に依頼すれば、最新情報に基づいた必要書類などはあらかじめリストアップされているため、適切な対応が可能です。
ビザ情報収集のための時間を節約できる
行政書士などの専門家は、シェンゲンビザの申請をはじめとした類似の事例をいくつも同時進行で進めています。
これらの経験に基づき、行政書士は書類の収集や、申請書の記載方法を素早く判断できます。
これにより、申請までの期間を短縮し、適切な提出書類によって審査にかかる時間も節約できます。
まとめ
シェンゲン協定加盟国域内への渡航はシェンゲン協定におけるシェンゲンビザの発行によってその利便性が高くなっています。
しかしながら、近年は各国の情勢が日々刻々と変化しています。
これはシェンゲン協定加盟国域内も例外ではありません。
制度は日々変わっていく傾向が高まっています。
そのため、渡航前には渡航先の国々の領事館や大使館のサイトなどをチェックしたうえで、必要書類などに不足がないか十分に確認しましょう。
場合によっては、行政書士などの専門家の手も借りるとよいでしょう。