創業したての方で創業融資を考えている方にとって、最初の融資はいくら借りられるんだろう?と気になる方は多いと思います。
ここでは、無担保・無保証という好条件で融資をしてくれる日本政策金融公庫の創業融資2パターンについて比較をしながら解説をしていきます。
まず結論から言うと、現実的には「新創業融資制度」で1000万円、認定支援機関を通した「中小企業経営力強化資金」で2000万円が上限ラインです。
しかし、事業に設備投資が必要かどうかや、自己資金の金額などによっても異なるのでやはりケースバイケースと言えます。
では、早速それぞれのパターン別に見てみましょう。
新創業融資制度は1000万円まで
まず日本政策金融公庫の創業融資といえば「新創業融資制度」があります。
これは、新しく事業を始める方や、税務申告を2期終えていない方が、新事業開始のため、または事業開始後に必要になる設備資金や運転資金として無担保・無保証で融資を受けられる制度です。
要件も簡単に説明をしておくと、
1.創業の要件
これから新しく事業を始める方か、既に事業を開始しているのであれば、個人事業主であれば確定申告が1回以内、法人であれば決算が1回以内であれば申込可能です。
2.雇用創出等の要件
雇用の創出を伴う事業や、技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める、現在勤めている企業と同じ業種の事業を始める人で、現在勤めている企業で勤続6年以上などといった選択肢のいずれかに該当する必要があります。
3.自己資金要件
創業資金総額の10分の1以上の自己資金を持っている必要があります。しかし、実際には融資が通りやすいレベルとしては、自己資金が創業資金総額の3分の1程度、と言われています。
また、一定の項目に該当すれば、この自己資金がなくてもOKとされていますが、実務的には自己資金がない状態では融資の審査は通りません。
このような要件で申し込める新創業融資制度ですが、制度上の融資上限額は3000万円とされており、そのうち運転資金として借りられるのは1500万円となっています。
しかし、実際の貸し出し金額の平均はというと、300万円ほどとなっています。
また、支店で決裁が出来る上限額は1000万円ですので、もし1000万円以上の融資を受けようとする場合には本店決裁となり、審査の難易度が上がる上に審査期間も長引きます。
スピード感のある融資実行は新創業融資制度の一つのメリットですので、それが失われるのはもったいないですね。
これらのことから、新創業融資制度での実質の融資上限額は1000万円だと考えましょう。
ただし、業種によっては設備投資の多少があるので、誰でも1000万円までであれば借りれるとは思わないようだけ気をつけてください。
中小企業経営力強化資金は2000万円まで
では次に、日本政策金融公庫創業融資で新創業融資制度と双璧をなす中小企業経営力強化資金について見ていきます。
これは創業したての企業だけでなく、既存の企業も利用できる制度ですが、新創業融資制度のような自己資金に関する要件はなく、代わりに認定支援機関のサポートを受けている、という要件が付いています。
この制度を利用するデメリットとしては、必ず認定支援機関を通さないといけない(報酬が発生)こと、事業計画の進捗報告が必要になる、といったことが挙げられます。
また、デメリットの一つとして手の混んだ事業計画書の策定が必要、ということもありますが、こちらは基本的には認定支援機関が作成の手助けをしてくれるので、そういった意味では企業側にとっての大きなデメリットではないでしょう。
ここまでで、中小企業経営力強化資金は新創業融資制度に比べて何かと負担が大きいということはご理解いただけたかと思いますが、
その分メリットもあります。というのも、本題の、融資上限額については新創業融資制度に比べ金額が高く、更に金利も低くなっています。
制度上の貸付上限額は7200万円で、運転資金であれば4800万円となっています。
しかしこれも新創業融資制度同様、本店決裁による実質的な壁があり、実際の限度額は2000万円と考えておきましょう。
さて、ここまで日本政策金融公庫の2つの創業融資の貸付上限額について説明をしてきました。
上限額のみに着目をすると中小企業経営力強化資金が新創業融資制度よりも有利と言えますが、その他要件の違いによる負担の大きさや、融資実行までのスピードなど複数の側面から検討して頂ければと思います。