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貯金0、貯金が少なくても帰化申請はできる?
貯金がない、又は貯金が少ない場合でも帰化はできるでしょうか。
1 貯金がない・少ないことが、なぜ帰化に影響するのか
貯金がない、あるいは貯金が少ない場合は、帰化申請の要件である生計要件に関わってきます。
生計要件とは簡単に言えば、帰化しても安定した収入の下に日本で暮らしていけますか?ということです。
帰化の要件としては、以下のものがあり、生計要件はその一つとなっています。
① 引き続き5年以上日本に住所を有すること(居住要件)
② 20歳以上で本国法によって行為能力を有すること(能力要件)
③ 素行が善良であること(素行要件)
④ 自己又配偶者等で生計を営むことができること(生計要件)
⑤ 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によって、その国籍を失うべきこと(喪失条件)
⑥ 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと(思想条件)
したがって、貯金が0、貯金が少ないということは、この生計面に不安があるということになってきます。
では、貯金が0、貯金が少ないという人は生計要件を満たさないとして、帰化ができないでしょうか。
2 貯金がない・少ない人はどれくらいいるのか
が令和元年に金融広報中央委員会行った 『家計と金融行動に関する世論調査』の「金融商品の保有額」(金融資産非保有世帯含む)のデータによると、以下の通りです。
「貯蓄がない」と答えた人は…
・単身世帯は38%
・2人以上世帯は23.6%
年代別に見ると、単身世帯では20歳代が一番多く、約45%が「貯蓄がない」ことになります。20歳代は働いて間もないということで、貯蓄率は他の世代に比べ低くなっていますが、30歳代から60歳代も約35%が「貯蓄がない」と回答しています。
また2人以上世帯では、20歳代を除いて貯蓄率は下がる傾向にありますが、もっとも少ない世代である30歳代でも15.8%の人に貯蓄がありません。これは、30歳代で不動産を購入する家庭が多いことも原因といえるでしょう。
以上のデータからすると、貯金が0又は貯金が少ないということは、日本においてそれほど珍しいわけではありません。その中でもほとんどの人が生活できているということは、生計面で、貯金はそこまで重要ではないといえるでしょう。
したがって、帰化しようとする人が「貯金がない又は貯金が少ない」場合であっても、帰化への影響は一般的に少ないといえます。
3 貯金0、貯金が少なくても安心して大丈夫?
では、貯金0、貯金が少ないという場合でも、帰化の際に全く心配しなくてよいでしょうか。
もちろん貯金があるに越したことはないないのですが、帰化する際には、貯金よりも安定した収入があるかどうかをチェックされます。
貯金が数千万円、数億円とあれば別ですが、貯金が数百万円あっても、車や家を購入すれば、あっという間になくなってしまいます。つまり、貯金は帰化申請時点ではそこそこあったものの、数か月から1年かかる審査期間で、なくなってしまうこともあるでしょう。
一方で、毎月の収入に応じて生計を立てている家庭が多いことからすると、生活できるだけの安定した収入があれば、生計を営むことが可能です。
したがって、普通に生活する分の安定した収入があれば、貯金が少なくても、0でも、帰化への影響を心配する必要はないでしょう。
4 預貯金額を聞かれる理由
では、貯金額はどうして申告しなければいけないのでしょうか。
ここまで読むと、「貯金がなくても、帰化できるなら、なぜ書かせるの?」と思われる方もいるかもしれません。
実際、ほとんどの人は貯金に関してはあまり重視されていないようです。
しかし、安定した収入があっても、本人の雇用形態や家庭環境に応じて、貯金があった方がよいと判断されることもあるでしょう。
例えば、勤めている会社が多額の赤字を出し続けているような企業である場合、近いうちにリストラや倒産といった心配もあります。そのような場合に、転職活動期間の生計を保てる貯金があれば、生計面を補完する材料となるでしょう
また、この貯金に関しては、不可解な入金や送金もチェックされます。
例えば、多額の贈与があり、贈与税の申告をしなければいけないのに、していないといった場合や、母国の親を扶養家族に入れているのに、送金が全然なされておらず、税金逃れのためだけに扶養家族にしていたという場合には、通帳を見ればある程度わかるため、注意が必要です。
5 まとめ
以上をまとめると次のようになります。
・貯金0、貯金がすくなくても、多くの場合、帰化への影響は少ない
・貯金よりも安定した収入の方が重要
・不可解な入金や振り込みがある場合は、説明できるようにしておく
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応