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帰化申請と年金について 未納や年金定期便が手元にない場合の対処法は?
帰化申請における年金の重要性
日本の年金システムは、外国人の方にとって難しいものですが、日本国籍を取得するための帰化申請にあたって、年金の支払いが必須要件になっています。
もし、年金を支払っている場合、それを証明する書類が毎年送られてくることを知っていますか。その書類は「ねんきん定期便」と言い、帰化申請の際に提出しなければなりません。
しかし、ねんきん定期便が手元にない、破棄・紛失してしまった、あるいはそれ自体を知らない方も少なくないでしょう。
まずは、ねんきん定期便とは何か、そしてそれが手元にない場合はどうすればよいのか、を解説していきます。
ねんきん定期便とは
ねんきん定期便とは、年金制度への理解を深めること等を目的として、毎年誕生月に自宅に届く、自身の年金記録を記載したはがき又は封書のことです。
ねんきん定期便は年齢によって、形式や記載される内容が異なります。通常は、『はがき』で届き、その中身は直近1年間の年金の加入情報となっています。帰化する際には、1年間の年金加入状況が問われるので、提出書類はこのはがきで十分です。
節目の年(35歳、45歳、59歳)には、はがきではなく『封書』で届きます。封書の場合には、全期間の年金記録情報が記載されています。
国民年金法では、すべての被保険者を次の3種類に区別しています。
【第1号被保険者】
日本国内にお住まいの20歳以上60歳未満の個人事業主、自営業者、農業・漁業者、学生および無職の方とその配偶者の方
(厚生年金保険や共済組合等に加入しておらず、第3号被保険者でない方)
【第2号被保険者】
厚生年金の適用を受けている事業所に勤務する会社員や公務員などの方
※ただし、65歳以上の老齢基礎年金などを受ける権利を有している方は除きます
【第3号被保険者】
第2号被保険者に扶養されている配偶者の方で、年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の方
帰化を希望する方に、ねんきん定期便の提出をお願いすると、まれに「そんなものは届いていません」という返答をいただくことがあります。ねんきん定期便は、慣れていないと中身を見てもわかりづらく、年金は会社から引かれている方も多いため、あまり注意して見るものではありません。したがって、軽く中身を見て捨ててしまうことも多いようです。
では、このねんきん定期便を破棄してしまったなどで、手元に用意できない場合は、来年の誕生月まで再度送られてくるのを待たなければいけないのでしょうか。
ねんきん定期便が手元にない場合
帰化しようと書類を収集し始めて、「ねんきん定期便がない!」と気付くことはよくあります。帰化の際に、この書類が必要なのは、義務である年金の支払いをしっかり行っていることを確かめるためです。
帰化には、以下の要件を満たしていることが必要ですが、年金に加入していなければならないのは、下記の「素行要件」になります。
① 引き続き5年以上日本に住所を有すること(居住要件)
② 20歳以上で本国法によって行為能力を有すること(能力要件)
③ 素行が善良であること(素行要件)
④ 自己又配偶者等で生計を営むことができること(生計要件)
⑤ 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によって、その国籍を失うべきこと(喪失条件)
⑥ 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと(思想条件)
したがって、ねんきん定期便を紛失してしまったとしても、年金の加入状況が証明されれば問題ありません。
そこで、ねんきん定期便が手元にない場合の代わりの書類として、
「被保険者記録照会回答票」
を提出します。
この書類の取得方法は、最寄りの年金事務所に行き、「私の年金加入状況がわかる書類を出してください」と言えば、被保険者記録照会回答票を発行してくれます。この際、帰化の際に必要であることを言っておくと、スムーズに発行してくれるでしょう。
なお、ほとんどの年金事務所では、電話でも対応してくれ、希望すれば無料で自宅まで郵送してくれます。
年金加入記録に「もれ」や「誤り」があった場合
ねんきん定期便や被保険者記録照会回答票を見て、年金加入記録にもれや誤りがある場合、訂正が必要です。
このもれや誤りを見落としたことによって、帰化が不許可になってしまっては、せっかくいろいろ用意した書類と時間が無駄になってしまうので、しっかり確認をしましょう。行政書士に依頼している場合は、入手したらすぐに書類を送って、確認してもらうのがよいです。
万が一、年金加入記録にもれや誤りがある場合には、年金加入記録回答票に必要事項を記入し、最寄りの年金事務所に提出と訂正を行ってください。
年金に関しては、記録を見て初めて、払っていない期間が発覚したケースがよくあります。そのような場合には、行政書士に相談し、適切な判断を仰ぐようにしましょう。
年金が未納(未加入)で帰化申請する方法は?
そもそも年金納付対象者は誰か?
年金の納付対象者は、帰化申請を考えている方も、一般の日本国民と同様で、20歳以上60歳未満の日本に居住しているすべての人です。
帰化申請を行った方は、基本的に全員の納付状況をチェックされます。年金の未納が帰化の許可に関わるのは、原則として申請者本人のみとなっています。
ただし、地域によっては、まれに同居している親族の納付状況をチェックする法務局もあるため、事前に確認をしておく方がよさそうです。
未納の場合の対処法とは?
もし、年金が未納だった場合は、直近1年分を一括で納付すればよいとされています。とはいえ、国民年金は1ヶ月あたり約1.5万円なので、その1年分の総額は約18万円と、それなりに大きな金額となります。
未納の場合は、一括で20万円近くの金額を納付する必要があることを頭に入れておきましょう。
所得が少ない人の対処法とは?
所得が少ないなどの経済的な理由で、年金が支払えない方については、「免除制度」の対象になる可能性があります。
この制度の適用には、まず申請が必要なので、自身の前年度の所得と制度の内容をよく照らし合わせ、必要に応じて免除の手続きを踏むようにしてください。
免除手続きを行っていない場合、いかなる理由にあっても、年金が未納であることにより、帰化申請は却下されてしまいます。
年配の方はどうなるのか?
かつての年金制度は、対象者に在日外国人が含まれておらず、制度の発足後しばらくしてから、加入が認められたとの経緯があります。
年金の受給資格は、10年以上の納付をすることで初めて獲得できます。しかし、対象者に在日外国人が追加された後でも、受給資格を得られないことを理由に、未納を引き延ばす方や、途中で支払いをやめてしまった方が多い状況です。
また、年配の在日外国人の方のうち、当時サラリーマンとして働いていた方は少なく、厚生年金に加入できない状態であったことも影響しています。
このように、さまざまな要因があるため、人によっては、遡って1年分を納付しなければならないケースと、支払わなくても問題ないケースとが分かれています。
「自分は年金未納だが、どちらのケースに該当するのか」などの不明点に関しては、当事務所で無料相談を受け付けています。
帰化申請と年金についてのよくある質問
年金の納付状況がわからない
毎年1回、年金の納付書が自宅に届いている場合は、年金に加入していることを証明しています。それに基づいて支払いを完了すれば、直近1年分を納付している、と考えてよいでしょう。
反対に、納付書が届かない場合は、国民年金に加入していない、つまり直近1年分を納付していない可能性が高いです。手元に納付書がないと、年金の納付ができないので、まずは最寄りの年金事務所に問い合わせることから始めましょう。
前述した通り、年金が未納である場合、帰化申請はほぼ100%却下されてしまいます。したがって、最低限の直近1年分を遡って支払い、その証明として領収書を提出することが必要です。
また、年金の一部免除、全額免除、納付猶予の対象者も、それを確認できる証明書を提出しなければなりません。免除に関しては、所得から自動で判定されるわけではないため、制度の要件に該当する場合は、早めに申請を行いましょう。
ただし、免除の理由として低所得が挙げられるので、帰化の素行要件の1つである「生計要件」を満たしていない、と判断されることがあります。つまり、免除を受けながら帰化申請が許可されるケースは、ごく一部に限られるのです。
このような条件や制度は複雑であるため、不安を抱えている方は一度、当事務所へご相談ください。
収入が年金のみの場合どうすれば?
帰化申請に年齢の制限はないので、年金生活者の方でも帰化申請は可能な上、実際に許可が下りる方もいます。
前述した生計要件の「自己又配偶者等で生計を営むことができる」に該当するのであれば、その収入源が年金だとしても問題ありません。よって、年金のみで十分生活していけるほどの金額を受給している方は、そのまま帰化申請に臨めるのです。
一方で、年金の受給額が少なく、それだけでは生活の維持が難しい場合は、次の項目のいずれかを満たしていることを確認しましょう。
・生活をするのに十分な貯蓄がある
・同居している親族に十分な収入がある
・別居している親族から、生活するのに十分な金額の仕送りを受けている
どれか1つでも該当する場合は、「自己又配偶者等で生計を営むことができる」とみなされ、帰化申請が可能になるケースも考えられます。
その他、帰化申請に関わるよくある質問については、こちらをご確認ください。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応