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同性婚のパートナーのビザは特定活動の対象となる?要件や申請方法も解説

日本で外国人が家族と一緒に生活するためには、在留資格(ビザ)が必要です。外国人の夫婦が日本で生活する場合、「日本人の配偶者等」や「家族滞在」などのビザを取得します。

 

では、同性同士のカップルが日本で生活したいと思った場合、ビザは取得できるでしょうか?

 

この記事では、同性婚のパートナーが日本で生活するためのビザの概要、手続きについてを説明しています。現在日本で同性婚のビザがどのように取り扱われているか、興味のある方はぜひお読みください。

同性婚と在留資格の関係

日本人と外国人が結婚している場合、その夫や妻は「日本人の配偶者等」のビザ(在留資格)を取得します。

 

外国人が永住・定住資格のある外国人と結婚している場合、その夫や妻は「永住者の配偶者等」「定住者」ビザを取得できます。

 

また、外国人が就労ビザをもつ場合、その夫や妻は「家族滞在」ビザを取得できます。

 

ただし、これらは男性と女性が結婚している場合です。

では、外国人が同性婚をしている場合、ビザは取得できるでしょうか?

同性婚とは

同性婚とは、男性と男性同士、または女性と女性同士が結婚することです。現在、世界の国々で性的マイノリティの人権擁護の必要性が認知されはじめ、「LGBT」ということばも浸透しつつあります。欧米を中心に同性婚を法律的に認め、男女の夫婦と同じような権利を認める国が増えてきています。

 

日本でも複数の地方自治体が、パートナーシップを宣言したカップルにさまざまな権利を認める「パートナーシップ制度」を導入しています。

同性婚は「配偶者」として認められていない

平成25年10月18日、法務省は外国人が同性婚をしても、パートナーが「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」、「家族滞在」のビザを取得できないことを通達で明らかにしました。

 

これは日本の法律上、同性婚が有効な結婚にあたらないので、外国人に「配偶者」としてのビザ(在留資格)を取得させるべきではないと考えたことによるものです。この見解は2023年現在も変わりません。

 

したがって、外国人が自分の国で法律上有効な同性婚をしていたり、日本の地方自治体でのパートナーシップ宣言をしていても、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」、「家族滞在」ビザは取得できません。

同性婚の在留資格はどうなる?

法務省は通達で「特定活動」というビザ(在留資格)が取得できることを明らかにしました。

 

「特定活動」は、ほかのビザが取得できない外国人が日本で生活するための受け皿となるビザです。

 

同性婚の外国人に「日本人の配偶者等」ビザなどは認められないけれども、人道上の配慮から「特定活動」ビザで救ってあげようと考えたのです。

 

以下、「特定活動」ビザについて詳しくお伝えします。

同性婚の組み合わせ

残念ながら、現在すべての同性婚カップルに「特定活動」ビザが認められるわけではありません。「外国人同士の同性婚」と、「外国人と日本人の同性婚」とでは、「特定活動」ビザについての結論が異なります。

外国人同士の同性婚

法務省は、外国人同士の同性婚カップルのパートナーに「特定活動」ビザを認めています。なぜ、外国人同士の同性婚カップルに「特定活動ビザ」を認めたのか、その理由などをみていきましょう。

外国人同士の同性婚は「特定活動」に認められる

外国人同士の同性婚カップルのパートナーが取得できる「特定活動」ビザは、一方の外国人が日本でビザ(在留資格)を取得して生活する場合に認められます。

例えば、フランス国籍のAさんが日本で永住の在留資格を取得し生活している場合、Aさんのパートナーであるアメリカ国籍のBさんは「特定活動」の在留資格に変更することが可能です。

しかし、短期滞在で来日しているAさんとBさんが、二人そろって「特定活動」の在留資格を取得することはできません。二人のうちどちらか一方が、日本で長期にわたり生活するためのビザを取得していることが必要です。

ただし同性婚が認められている外国人の同性婚のみが有効

同性婚をしている外国人に認められる「特定活動」ビザは、外国人の両当事者がそれぞれ自分の国で有効な婚姻をしている場合にだけ取得できます。

 

例えば、A国とB国の外国人が同性婚をしている場合、A国とB国の両方で有効な婚姻が成立していることが必要です。

 

これは、外国人がそれぞれの当事者の本国で有効な同性婚を成立させているのであれば、日本でも本国と同じように安定した結婚生活を送れるように人道上の配慮をしなければならないと考えられたからです。

 

海外では、現在31か国と35の地域で同性婚またはパートナーシップ法が制定されています。

 

2005年にはカナダが、2013年にはフランスが、2014年にはイギリスが同性婚を合法化しました。2015年にはアメリカで連邦最高裁が全ての州で同性婚の権利を認める判決を出し、2016年にはイタリアで同性婚カップルに結婚に準じた権利を認めました。2017年には台湾とドイツで同性婚が認められました。

 

これらの国で有効な婚姻をしている同性婚カップルの一方が日本で長期間生活するためのビザを取得していれば、そのパートナーは「特定活動」ビザを取得できます。

日本人との同性婚

日本人との同性婚カップルの場合、そのパートナーに「特定活動」ビザは認められていません。以下でくわしく説明します。

日本人との同性婚は「特定活動」として認められない

日本国籍のAさんとフランス国籍のBさんの同性婚カップルの場合、たとえフランスでAさんとBさんとの結婚が有効な同性婚と認められていても、Bさんは「特定活動」ビザを取得できません。

そもそも日本では同性婚が認められていない

そもそも日本では、同性婚を有効な婚姻と認めていません。これは、日本の憲法が「婚姻は、両性の合意のみにもとづいて成立」すると定めているからです。「両性」ということばが「男」と「女」の二つの姓を表すので、有効な婚姻は「男」と「女」
によって成立するものと考えられているのです。

 

したがって、カップルの一方が日本人の場合、外国人の両当事者の本国で有効な婚姻が成立することはなく、「特定活動」のビザを取得することはできないのです。

同性婚のパートナーのビザ取得について

同性婚をしている外国人が「特定活動」のビザを取得するためには3つの条件を満たす必要があります。以下で詳しくみていきましょう。

ビザの要件

1.外国人同士の本国で同性婚が有効に成立していること

2.一方の外国人が長期に日本で生活する在留資格を取得していること

3.二人が安定して日本で生活するための経済的基盤があること

1.外国人同士の本国で同性婚が有効に成立していること

同性婚のパートナーのための「特定活動」ビザは、外国人同士の婚姻が本国で有効に成立している場合に認められます。

例えば、長期間同棲をしているけれども法律的に有効な婚姻が成立していない事実婚カップルは、この条件をみたしません。

また、「特定活動」は本国で安定した結婚生活を送る夫婦のために認められたビザです。したがって、結婚生活の実体がないカップルにも「特定活動」ビザは認められません。

2.一方外国人が長期に日本で生活する在留資格を取得していること

同性婚カップルのパートナーが「特定活動」ビザを取得するためには、もう一方のパートナーが、就労ビザ・永住など、長期に日本で生活するためのビザ(在留資格)を取得していることが必要です。

3.二人が安定して日本で生活するための経済的基盤があること

「特定活動」ビザは、カップルが日本で長期間生活するためのビザなので、日本で安定的に生活するための経済力が不可欠です。経済力は、カップルそれぞれの給与、年金、不動産収入の資産など、各カップルの生活事情に応じて総合的に
判断されます。

取得方法

通常、海外にいる外国人が日本に長期間滞在するためのビザを申請する場合、「在留資格認定証明書」の交付を申請します。しかし、同性婚のパートナーが取得する「特定活動」ビザの場合、「在留資格認定証明書」の交付を申請することはできません。少々複雑な話になりますが、「特定活動」ビザを取得するためぜひ理解していただく必要があります。

 

まず、「特定活動」には「告示」特定活動と「告示外」特定活動の2つの種類があります。

 

•「告示」特定活動:法務大臣があらかじめ活動内容を告示しているビザ

•「告示外」特定活動:活動内容を告示されていないビザ

「告示」特定活動

「告示」特定活動ビザは、法務大臣が日本や世界の社会情勢に応じて、あらかじめ活動内容を告示しているビザです。「ワーキングホリデー」ビザがこれにあたります。「告示」特定活動ビザは、外国人が海外で「在留資格認定証明書」の交付を申請して日本に入国します。

「告示外」特定活動ビザ

「告示外」特定活動ビザは、活動内容を告示されていません。同性婚のパートナーに認められる「特定活動」は、「告示外」特定活動ビザになります。このビザは法務大臣が人道上の理由など特別な事情に配慮して認められます。

 

また、「告示外」特定活動ビザは、「在留資格認定証明書」の申請が認められていません。短期滞在ビザなど、何らかのビザを取得して日本に入国し、その後に「特定活動」へ在留資格変更の許可を申請する必要があります。

注意点

同性婚のパートナーのための「告示外」特定活動ビザは、他のビザよりも認められたケースが少なく、審査が長期化する可能性があります。

 

入管が十分に審査する期間を確保するため、短期滞在で日本に入国した後に、在留資格変更許可申請をする場合、日本に入国する前から入念に申請の準備を行い、入国後は速やかに変更申請できるよう準備を進めることが大切です。
結婚証明書などは、本国を離れると取得できないケースもあるので、日本に来る前にあらかじめ準備しておきましょう。

 

また、短期滞在ビザは、短期間日本に滞在するためのビザなので、期間経過後は速やかに日本を出国することが想定されています。そのため、原則として在留資格の変更は認められておらず、入管にビザ変更するための必要性があることを十分に説得できる書類を準備する必要があります。

まとめ

外国人同士の同性婚カップルならばビザが取得できるのに、外国人と日本人のカップルの場合はビザを取得できないことに驚かれた方もいると思います。

 

また、在留資格を変更する方法でなければビザを取得できないなど、同性婚をしている外国人が日本で生活するためビザを取得できるケースはまだまだ限られたものになっています。

 

しかし近年では、地方裁判所で同性婚をしているパートナーに家族になる制度を設けるべきと判断した判決も出ており、近い将来には外国人と日本人の同性婚カップルにも「特定活動」ビザが認められる日がくるかもしれません。

 

これからの同性婚のビザの動向に要注目です。

 この記事の監修者

さむらい行政書士法人 代表 / 小島 健太郎

さむらい行政書士法人
公式サイト https://samurai-law.com

代表行政書士

小島 健太郎(こじま けんたろう)

 

プロフィール

2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立

専門分野

外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応

 

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