フィリピン人と離婚することはできる?手続き方法などを紹介
離婚に関する法律は、国によってさまざまです。例えば、日本は双方の同意があれば離婚できる協議離婚が可能ですが、世界には離婚のシステムがない国も存在しています。例えば、フィリピンやバチカン市国です。
フィリピンには、そもそも離婚という概念がありません。離婚をする場合は、複雑な手続きを行う必要があります。
フィリピン人との離婚を考えている人の中には、
「離婚の概念がないのはなぜ?」
「離婚の手続き方法はあるの?」
と疑問をお持ちの方も多いでしょう。
この記事では、フィリピンにおける離婚の考え方と手続き方法について解説します。
ぜひ、最後までお読みください。
フィリピン人と離婚はできる?
フィリピンには、離婚というシステムがありません。
「離婚する方法はあるのか?」と疑問を持つ方も多いでしょう。ここでは、フィリピンの離婚の考え方について見ていきましょう。
フィリピンには離婚という概念がない
フィリピンには、そもそも離婚という概念がありません。
フィリピンは東南アジアの中でもキリスト教(カトリック)の信仰が広く、国民の大半がキリスト教徒の国です。結婚すれば、一生その相手と添い遂げることが当たり前であると考えられています。キリストの教えにのっとって、離婚というシステムが想定されていないのです。
詳しくは後述しますが、もし日本に在住していれば日本法に従って離婚が可能です。
例えば、夫が日本人・妻がフィリピン人で日本に在住している場合、日本法に基づいた離婚ができます。しかし、フィリピン法では離婚は認められていないため、妻の方はフィリピンでは離婚していないとみなされます。
離婚の代わりにアナルメント制度がある
フィリピンには、離婚に代わるシステムとしてアナルメント(Annulment)という手続きがあります。
日本の場合、双方が同意していれば離婚は成立します。いわゆる協議離婚と呼ばれるものです。仮に一方が同意していなくても、もう一方の請求により調停や裁判で離婚が成立する方法もあります。
しかし、フィリピンでは離婚が認められておらず、当事者間での話し合いによる離婚はできません。離婚をしたい場合は、アナルメントの手続きをします。
アナルメント制度(婚姻関係の無効化)とは
アナルメントは、婚姻の事実を取り消す制度です。裁判所に申し立てをし、婚姻の取り消しまたは無効の判決が出れば、最初から結婚していなかったことにできます。
一般的に、離婚の取り消しは「アナルメント」、無効は「ディクラレイト」と呼びます。
例えば、暴力や脅迫による婚姻を解消したい場合はアナルメント、未成年者との婚姻を解消したい場合はディクラレイトです。どちらの判決になるかは、申請者の状況によって異なります。
アナルメントと似た言葉に、「リコグニッション(Recognition)」があります。リコグニッションも離婚に関する裁判の1つで、海外の法律で成立した離婚をフィリピン側で承認する手続きです。
例えば、日本法に基づいて成立した離婚をフィリピンでも認めてもらうには、リコグニッションをしなければいけません。
アナルメント制度にかかる費用
裁判による手続きのため、弁護士に依頼する必要があります。最低でも30万ペソはかかると考えておくと良いでしょう。1ペソは2〜2.5円のため、30万ペソは日本円で60〜75万円です。
国際労働機関(ILO)の統計データによると、フィリピンの平均年収は約23万ペソ、月収にすると23万ペソ÷12カ月=約1.9万ペソです。30万ペソは平均年収以上の金額のため、フィリピンの人にとってアナルメントの費用を捻出するのは高いハードルと言えます。
フィリピン人と離婚するときの手続きについて
国際結婚は、異なる2つの国の法律に基づいた結婚の契約です。離婚をするには、2つの国の法律にのっとった方法で手続きをしなければいけません。
フィリピン人の配偶者と離婚する場合、日本で手続きをして成立したあとに、フィリピンの裁判所で承認手続きをするのが一般的です。
日本法に基づいた離婚は可能
通則法第27条によると「夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による」と定めています。
日本に在住している場合は、日本の法律に基づいた離婚が可能です。手続きは、日本人同士の離婚と同じような流れで行います。
1.協議離婚
双方が同意している場合は、話し合いによる離婚が可能です。
2.調停離婚
話し合いで合意に至らない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停委員が双方の主張を聞き取り、同意に向けて働きかけけてくれます。最終的に提示された調停の条項に対して、双方の同意を経て離婚が成立する流れです。
3.裁判離婚
調停でも合意に至らない場合は、家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。離婚訴訟は法定離婚事由(例えば、相手の不貞行為など)があることが条件で、ただ離婚がしたいという理由ではできないので注意してください。判決で主張が認められれば、離婚が成立します。
上記のように日本の法律に基づく離婚は可能ですが、フィリピン側では認められていないため注意が必要です。日本で離婚が成立したあとに、フィリピンの裁判所で離婚の承認手続きであるリコグニッションをしなければいけません。
例えば、日本人の夫とフィリピン人の妻が日本で離婚した場合、夫は日本の法律に従って離婚したと判断されます。しかし、妻がフィリピン国内で離婚した事実は認められません。元妻が再婚したいと思っても、離婚していないと判断されるため再婚ができなくなってしまいます。
離婚できる条件
フィリピンで離婚に関する手続きを行う場合は、アナルメントをする必要があります。
条件は下記のとおりです。
1.アナルメント(婚姻の取り消し)
- ・精神障害のある者との婚姻
- ・婚姻継続のための身体的能力を欠いた者との婚姻
- ・性病を音った者との婚姻
- ・詐欺による婚姻
- ・強迫による婚姻
- ・一定年齢での両親の承諾なしでの婚姻
2.ディクラレイト(婚姻の無効)
- ・未成年同士の婚姻
- ・近親婚
- ・重婚や一夫多妻婚
- ・婚姻のために自己または相手の配偶者を殺害した
- ・相手方を錯誤した上での婚姻
- ・婚姻許可状なしでの婚姻
- ・婚姻挙行担当官不在での婚姻
- ・証人なしでの婚姻
離婚届の提出先
日本での離婚の手続きは、下記の3パターンがあります。
1.協議離婚
離婚届はお住まいの地域を管轄している役所に提出してください。
2.調停離婚
家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
3.裁判離婚
家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。
フィリピンで手続きをする場合は、フィリピン国内の裁判所で行わなければいけません。
離婚後の子供の親権
国際結婚した配偶者との間に子供がいる場合、子供の親権はどこの国の法律が適用されるかを考える必要があります。
子供の国籍が父母どちらかの国籍と同じであれば、子供の国籍の法律に従って親権者を定めなければいけません。
例えば、日本人の夫とフィリピン人の妻の子供の国籍が日本であれば、日本の法律に従って親権者を決めます。
反対に子供の国籍がフィリピンであれば、フィリピンの法律に従って親権者を決めます。
日本では、離婚後の親権者は単独親権です。父もしくは母のどちらかにしか親権が認められていません。話し合いによって、どちらが親権者や監護者になるかを決定します。話し合いで決められない場合は、調停や訴訟を行い決定されます。
例えば、日本人の夫とフィリピン人の妻で日本に在住しているケースでは、子供の国籍も日本であることが多いです。この場合は、日本の法律に従って親権者が決まります。
フィリピンでは、離婚の制度自体がないため親権者に関する規定はありません。離婚後は、父母の共同親権が継続します。
離婚後の国籍
離婚後は、フィリピン人の国籍に変更はありません。日本で子供が生まれた場合、父母どちらかが日本人であれば子供は日本の国籍を保持します。フィリピンは2重国籍を認めているため、20歳までは2重国籍の状態です。子供は、20歳までに自分で国籍を選ばなければいけません。
国籍に変更はありませんが、日本に在住している場合は在留資格に変更が生じる可能性があります。
日本人と国際結婚をし、日本に在住しているフィリピン人の在留資格は「永住者」もしくは「日本人の配偶者等」である場合が多いです。
1.「永住者」
離婚をしても「永住者」の在留資格は取り消されません。離婚による在留資格の影響はないため、引き続き日本に滞在できます。
2.「日本人の配偶者等」
まず、離婚後14日以内に出入国在留管理局に「配偶者に関する届出書」を提出しなければいけません。
入管法によると、離婚後6カ月間は滞在が可能です。しかし、6カ月を過ぎると在留資格が取り消される可能性があります。日本での滞在を続けたい場合は、在留資格を変更しなければいけません。
変更できる可能性のある在留資格は下記のとおりです。
- ・「定住者」
婚姻期間が3年以上で一定の収入や資産があり、日本国籍を持つ子供の監護をする必要がある方など
- ・「永住者」
婚姻期間が3年以上で直近1年以上日本に住んでおり、安定した収入がある方など
- ・「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザ
学歴や職歴の要件を満たせる方など
まとめ
この記事では、フィリピンでの離婚と手続き方法について解説しました。
フィリピンには、宗教的な観点から離婚という概念がありません。離婚に代わるシステムとして、アナルメントという婚姻の取り消しまたは無効の手続きがあります。
日本人がフィリピン人の配偶者と離婚したい場合、日本で手続きをするのが一般的です。日本に在住していれば、日本法に基づいて離婚ができます。日本で成立した離婚をフィリピンでも認めてもらうためには、フィリピンの裁判所でリコグニッションをしなければいけません。
国際結婚における離婚の手続きは、日本人同士の離婚と比べて複雑です。国際法を取り扱う弁護士などの専門家に相談するのをおすすめします。
【フィリピン婚姻無効裁判手続きサポートサービス】 報酬額一覧
婚姻無効裁判手続きサービス |
報酬額(円表示) |
---|---|
フィリピン人と日本人の婚姻無効裁判及びサポート |
当事務所の手数料 250,000+税 |
現地フィリピン弁護士手数料 着手金100,000ペソ+難易度により100,000~300,000ペソ(要お見積もり) |
|
フィリピン人同士の婚姻無効裁判及びサポート |
当事務所の手数料 300,000+税 |
現地フィリピン弁護士手数料 着手金100,000ペソ+難易度により100,000~300,000ペソ(要お見積もり) |
※裁判手続きは現地フィリピン弁護士による業務提供を行います。
【フィリピン婚姻無効裁判手続きサポートサービスの内容 】
- ・当事務所と連携しているフィリピン弁護士のご紹介&お顔合わせ※オンライン可
- ・フィリピン弁護士による現地裁判手続き
- ・裁判手続き完了までの現地フィリピン弁護士との英語での進捗確認
- ・業務完了までの英語通訳を伴う総合的なコンサルティング及びサポート
※極力スピーディーに手続きを進めますが、フィリピン婚姻無効裁判は着手から1年~2年かかる場合も発生します。当事務所の費用はその分のサポート費用です。
※ケースにより、裁判にかかる期間や費用が異なる場合がございます。現地フィリピン弁護士による裁判手続き開始前に改めてペソにてお見積りを出させていただきます。
※裁判期間の延長に伴う費用や実費(精神科医が配偶者様などに精神鑑定を行うための交通費または現地弁護士が当該地区の役所に赴く交通費等)は別途請求させていただきます。
【フィリピンでの婚姻無効裁判について】
フィリピンでは、法律上離婚それ自体を認めておらず、すでに婚姻歴のあるフィリピン人女性と結婚したいと考えたときは、現地の裁判手続きで婚姻が無効であったと認定してもらう必要があります。
この手続は、完了するまでに2年~3年を要する大変な手続きとなっており、フィリピンの現地弁護士や裁判所とのやり取りですので、日本におられる方にとっては非常に困難な道のりです。
そこで、弊社では現地のフィリピン人弁護士と連携し、基本的な連絡や進捗状況の確認等、細かいサポートを提供させていただきますので、現地裁判手続きの完了まで安心してご依頼いただくことが可能です。
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この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
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