【例文あり】配偶者ビザの理由書の書き方を解説
外国人が配偶者ビザの申請をする際、「申請理由書」という書類を提出することがあります。
その結婚が偽装結婚ではないことを示し、審査をスムーズにするための書類です。
この申請理由書には交際や結婚の経緯をそのまま書けば良いのですが、私的なことも含まれるため書き方に迷ってしまう人も多いです。
今回は、配偶者ビザの申請理由書の基本的な書き方や、具体的な例文をご紹介します。
配偶者ビザに必要な申請理由書とは?
外国人が日本人と結婚し、日本に居住する場合、「配偶者ビザ」を取得します。
配偶者ビザは、就労ビザなどのように学歴や職歴の要件なく取得できるため、悪用を防ぐために、その結婚が偽装結婚ではないことを示す必要があります。
その「偽装結婚ではないことを示す書類」の一つが「申請理由書」です。
申請理由書のほかに「結婚経緯書」という呼び方をする場合もありますが、意味は同じとなります。
申請理由書には、そのパートナーと結婚するに至った経緯や、夫婦で日本に居住する理由、今後の生活についてなどを記載します。
結婚に至る経緯は人それぞれなので、特に決まった書き方はありません。
また、小説などではないため、特別に上手な文章で書かなければいけないということはなく、心情などプライベートなことを明かすことも必須ではありません。
配偶者ビザの申請に必要なほかの書類では伝わらない「結婚までの経緯」を、端的に説明できれば良いでしょう。
申請理由書は必須書類ではない
配偶者ビザの申請において、申請理由書は必ず提出しなければいけない書類ではありません。
配偶者ビザの申請に必須の書類は、以下の通りです。
・在留資格認定証明書交付申請書(配偶者ビザ用) ・写真(縦4cm×横3cm) ・日本人配偶者の戸籍謄本 ・申請人の国籍国(外国)の機関から発行された結婚証明書 ・日本での滞在費用を証明する資料 ・日本人配偶者の身元保証書 ・日本人配偶者の世帯全員の記載のある住民票の写し ・質問書 ・夫婦で写ったスナップ写真(2〜3枚) ・身分を証する文書等 |
上記にある「質問書」にも、夫婦が知り合った時期や交際までの経緯、紹介者の有無、普段の生活などについて記載する項目があります。
申請理由書は、この質問書では伝えきれない内容を補足するための補助的な書類です。
配偶者ビザの申請理由書を提出するメリットは?
配偶者ビザの申請で申請理由書を提出するメリットは、必須書類の記載内容より多くの情報を伝えることで、審査が有利になる可能性があることです。
出入国在留管理局の審査官は、その夫婦について何も知りません。
審査官は基本的に、ビザの悪用を防ぐために疑ってかかるのが仕事なので、説明不足な点があると「怪しい」と思われる可能性があります。
申請理由書によってなるべく多くの情報を伝えることで、疑われるリスクが下がり、ビザの申請が通りやすくなるのです。
審査に落ちてしまうと、ビザが降りずに外国人配偶者が来日・滞在できないほか、落ちてしまった理由を聞きに行く必要があるなど、手間がかかります。
また、何度も審査に落ちると、その履歴のために、その後の申請が不利になりかねません。
配偶者ビザは100%審査が通るということはないため、万全を期するために申請理由書も作成した方が良いのです。
配偶者ビザの申請理由書の書き方を解説【例文あり】
ここからは、配偶者ビザの申請理由書の書き方について具体的に解説していきます。
先にもお伝えしましたが、申請理由書は特別に綺麗な文章や、上手な文章で書く必要はありません。
結婚に至るまでの事実が、端的に伝わればOKです。
「5W1H」を意識して、実際に何が起こったのかが正確に伝わるようにしましょう。
また、申請理由書は外国人配偶者に在留資格を与える側の日本人目線で記載します。
1 パートナーといつ出会ったのか?
申請理由書の中でも始めの方に書くパートナーとの出会いは、出会った時期・出会ったきっかけや場所・紹介者の有無などについて書きましょう。
職場での出会いなら具体的な社名や店名、SNSやマッチングアプリ等で知り合った場合は具体的なアプリ名や連絡の経緯など、具体性があるほど良いといえます。
・例1
私は20○○年4月、勤務先である○○株式会社に新入社員として入社してきた妻と出会いました。
教育係と新人という関係で関わるようになり、はじめは仕事を教えたり、自分の仕事を手伝ってもらうという間柄でしたが、日が経つにつれて冗談を言い合ったりプライベートな話をするようになり、徐々に親しくなっていきました。
慣れない外国で仕事をこなそうと努力する姿や、いつも周囲への気配りを忘れない姿勢に惹かれ、「仕事上の関係を超えて、もっと仲良くなりたい」と感じるようになりました。
・例2
私は、海外ユーザーと互いの母語を教え合う外国語学習アプリ「○○」で夫と知り合いました。
私は仕事に役立てるために英語の学習、夫は趣味である日本のアニメを楽しむために日本語の学習を希望しており、年齢や趣味が近いことから互いに興味を持ち、20○○年8月ごろからアプリ上で交流を開始しました。
はじめは共通の趣味であるアニメについて話すことがほとんどでしたが、いつしか自分の仕事や家族についても話すようになりました。
考え方やユーモアのセンスが合うところに惹かれて「実際に会いたい」とお互いに言い合うようになり、私は20○○年12月に友人と計画していたシカゴへの旅行の中で、初めて夫と会うことになりました。
2 交流を深めた場面
次に、出会いから交際に至るまでに交流を深めた場面について書いていきます。
印象的なデートやエピソードについて具体的に書きましょう。
・例1
20○○年10月、妻が初めて一人で挑戦した仕事で成果を出し、そのお祝いのために仕事帰りに2人で食事へ行きました。
韓国人である妻の好みに合わせ、本格的な韓国料理の店を選ぶと、妻は「懐かしくて嬉しい」ととても喜んでくれました。
食事をしながら仕事の成果について褒めると、妻は「本当に大変で、仕事を辞めて母国に帰りたいと思ったこともあった」と本音をこぼしました。
それから「でも、先輩がいたから頑張れた」と妻が言ったのを聞いて、私は「もっとそばで彼女を支えたい」と感じました。
また、妻の言葉や態度から、彼女も私に好意を持ってくれていることを感じ取り、その日の帰り道で付き合ってほしいと告白しました。
・例2
1週間の旅行のうち2日間、私と友人、夫とその友人の4人でシカゴの街を観光しました。
公園や博物館など定番の観光地から、地元で暮らす彼らだからこそ知るローカルフードまで紹介してくれて、とても充実した時間を過ごしました。
私も友人も外国人の男性と会うのは初めてで、騙されたり犯罪に巻き込まれたりしないかと警戒していましたが、夫とその友人は終始とても紳士的に接してくれて、信頼を置ける人だと感じました。
帰国してからは、アプリ上だけではなく毎日電話やメッセージでやりとりをするようになり、次の夏には彼が私に会いに日本に来るという約束をしました。
それから年に2〜3回ずつ、休暇を利用してアメリカと日本を行き来して会うようになり、3年目の20○○年6月に「正式に付き合ってほしい」と申し込まれました。
3 交際から結婚に至るまで
交際から結婚に至るまでの部分には、両家の家族に紹介したかどうか、プロポーズ時のシチュエーション、正式な夫婦となった時期、結婚式などについて記載します。
・例1
交際をはじめて半年後の20○○年2月、韓国の新年に合わせて妻の両親が妻に会いに来日するということで、私を両親に紹介したいと妻から話がありました。
しかし同時期、新型コロナウイルスの影響で外国人の入国が制限され、結果的にはビデオ通話での挨拶となりました。
妻の両親から「挨拶をするということは将来を意識しているということか?」と聞かれ、この時ははっきりと答えられなかったものの、その言葉をきっかけに妻との結婚について本格的に考えるようになりました。
その後、結婚の意思や国際結婚の障壁について妻の意向も確認し、1年の同棲を経て文化的な相違などの問題がなければ結婚しようと2人で決めました。
20○○年3月から同棲を開始し、翌年3月の妻の誕生日に正式にプロポーズ。
20○○年4月に日本・韓国の双方で婚姻手続きが完了し、晴れて夫婦となりました。
・例2
日本とアメリカでの遠距離恋愛が始まって1年後の20○○年6月、夫から「2人の関係を進めるために、日本企業に転職したい。将来的には結婚を考えている」と伝えられました。
私は喜んで承諾し、20○○年10月に夫の株式会社○○への入社が内定。
彼は技術・人文知識・国際業務ビザを取得し、20○○年1月から来日することになりました。
20○○年12月、彼がアメリカで過ごす最後のクリスマス休暇に、私は夫の実家に招かれて婚約者として紹介され、暖かく歓待していただきました。
彼の来日後も交際は順調で、私たちは20○○年6月に○○区役所に婚姻届を提出しました。
結婚式につきましては、身内だけで挙げる小さな挙式を20○○年10月に予定しています。
4 今後の結婚生活について
今後の結婚生活については、主に経済的な事情や身元の保証について記載します。
ここまでの内容に比べると、少し事務的になる部分です。
・例1
婚姻届を提出した後も、それまで同棲していた部屋で2人で生活しています。
私も妻も、出会いのきっかけでもある職場、○○株式会社で引き続き勤務し、現在の年収は私が約500万円、妻は約300万円です。
預貯金は私が約200万円、妻が約150万円あります。
月収は2人合わせて約55万円、現在の自宅は2DKで家賃が月額10万円なので、妻と2人で十分に暮らしていくことが可能です。
妻は日本で大学を卒業、新卒から日本企業に就職し、日本語能力検定もN1を取得していますので、今後も日本での生活に問題はございません。
・例2
婚姻届の提出後、私たちは一時的に○○県○○市にある私の実家で生活しています。
20○○年10月には5,000万円で購入した○○区の「マンション○○」が完成予定で、結婚式の後にそちらに入居する計画です。
私は○○コーポレーションに営業職として勤務し、年収は約800万円。
夫は株式会社○○で技術通訳として勤務し、年収約600万円です。
住宅ローンの支払額は毎月約15万円、月収は夫婦合わせて約90万円なので、経済的な問題はありません。
配偶者ビザの申請理由書の完成イメージ【全文あり】
配偶者ビザの申請理由書を、序文・終わりの文もつけて全文掲載すると、以下のようなイメージになります。
文章の量は、A4用紙で1〜2枚ほどが目安です。
■申請理由書
私は、申請人の夫のAと申します。この度、韓国国籍の申請人B(以下、「妻」と表記します)との婚姻に伴い、出入国管理及び難民認定法第二十条に基づく「日本人の配偶者等」在留資格変更許可を希望しております。
以下、当事者夫婦として申請理由をご説明申し上げます。
交際の経緯について
私は、20○○年4月、勤務先である○○株式会社に新入社員として入社してきた妻と出会いました。
教育係と新人という関係で関わるようになり、はじめは仕事を教えたり、自分の仕事を手伝ってもらうという間柄でしたが、日が経つにつれて冗談を言い合ったりプライベートな話をするようになり、徐々に親しくなっていきました。
慣れない外国で仕事をこなそうと努力する姿や、いつも周囲への気配りを忘れない姿勢に惹かれ、「仕事上の関係を超えて、もっと仲良くなりたい」と感じるようになりました。
20○○年10月、妻が初めて一人で挑戦した仕事で成果を出し、そのお祝いのために仕事帰りに2人で食事へ行きました。
韓国人である妻の好みに合わせ、本格的な韓国料理の店を選ぶと、妻は「懐かしくて嬉しい」ととても喜んでくれました。
食事をしながら仕事の成果について褒めると、妻は「本当に大変で、仕事を辞めて母国に帰りたいと思ったこともあった」と本音をこぼしました。
それから「でも、先輩がいたから頑張れた」と妻が言ったのを聞いて、私は「もっとそばで彼女を支えたい」と感じました。
また、妻の言葉や態度から、彼女も私に好意を持ってくれていることを感じ取り、その日の帰り道で付き合ってほしいと告白しました。
交際から婚姻に至るまで
交際をはじめて半年後の20○○年2月、韓国の新年に合わせて妻の両親が妻に会いに来日するということで、私を両親に紹介したいと妻から話がありました。
しかし同時期、新型コロナウイルスの影響で外国人の入国が制限され、結果的にはビデオ通話での挨拶となりました。
妻の両親から「挨拶をするということは将来を意識しているということか?」と聞かれ、この時ははっきりと答えられなかったものの、その言葉をきっかけに妻との結婚について本格的に考えるようになりました。
その後、結婚の意思や国際結婚の障壁について妻の意向も確認し、1年の同棲を経て文化的な相違などの問題がなければ結婚しようと2人で決めました。
20○○年3月から同棲を開始し、翌年3月の妻の誕生日に正式にプロポーズ。
20○○年4月に日本・韓国の双方で婚姻手続きが完了し、晴れて夫婦となりました。
今後の結婚生活について
婚姻届を提出した後も、それまで同棲していた部屋で2人で生活しています。
私も妻も、出会いのきっかけでもある職場、○○株式会社で引き続き勤務し、現在の年収は私が約500万円、妻は約300万円です。
預貯金は私が約200万円、妻が約150万円あります。
月収は2人合わせて約55万円、現在の自宅は2DKで家賃が月額10万円なので、妻と2人で十分に暮らしていくことが可能です。
妻は日本で大学を卒業、新卒から日本企業に就職し、日本語能力検定もN1を取得していますので、今後も日本での生活に問題はございません。
以上の内容をご高配いただき、この度の在留資格認定証明書交付申請に格別のご配慮を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
まとめ
配偶者ビザの申請理由書は、手続き上の必須書類ではありません。
しかし、自分たち夫婦の事情や背景について細かく説明することで審査官の理解を得ることができ、ビザの審査がスムーズに進む可能性が高くなります。
交際や結婚の経緯は人それぞれなので、決まった書き方があるわけではありません。
しかし基本的な流れは今回解説した通りなので、自分たちのケースに合わせてしっかり経緯が伝わる申請理由書を作成しましょう。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
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