クリニック開業後5年~10年ほどは資金繰りが比較的厳しいと言われます。なぜなら、開業したてのクリニックが黒字になるまでには、患者さんが徐々に増えていくという期間を経る必要があるからです。
また、診療報酬が入金されるのは、請求の翌々月の21日ですので、費用の支払いが先行し、手元に運転資金を3ヶ月分は持っていないといけません。これに加えて、開業当初設備投資や運転資金のために借入金があるのであればその返済も必要となります。
これらの事情から、開業10年以内は資金繰りが難しいと一般的には言われています。また、そもそもの開業のための費用としても、例えば内科であれば、
開業場所の不動産の購入や建築費、電子カルテ、X線撮影装置、内視鏡、ベッド、イス、PCなどの設備、といった設備資金が必要になるほか、
運転資金としても人件費や光熱費などが毎月発生します。
規模にもよりますが、開業資金に合計で1億円を超えることも珍しくは有りません。
そんな設備投資と運転資金が必要となるクリニックにとって、低金利・固定金利で融資を受けられる日本政策金融公庫の利用はぜひ検討に入れておくと良いでしょう。
では、ここからは検討すべき日本政策金融公庫の融資制度について紹介をしていきます。
新創業融資制度
新創業融資とは、その名のとおり、これから創業する、もしくは創業して間もない事業者が利用できる制度になります。つまり、既に事業を開始していても事業開始してから2期までであれば対象となります。これは原則無担保・無保証で借りられる日本政策金融公庫の制度になります。
① 利用条件は以下のすべてを満たす方になります。
・新たに事業を始める、または事業開始後、税務申告が2期以内の方
・事業の成長にかけて雇用を生む可能性があること
※なお、本制度の貸付金残高が1,000万円以内(今回のご融資分も含みます。)の方については、本要件を満たすものとします。
・自己資金が、必要としている資金の10分の1以上もっていることを確認できる方
※ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします。
② 融資限度額
3000万円(うち運転資金1500万円)
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性、若者/シニア起業家支援資金とは、新たに事業を始める人、または、初めてからおおむね7年以内の女性の方、もしくは男性で、35歳未満、または55歳以上の方を対象としている日本政策金融公庫での融資制度になります。女性はなんと年齢制限はありません。
① 利用条件は下記の2つです。
・女性、もしくは男性で35歳未満か55歳以上であること
・新たに事業を始める人、または、事業を始めてからおおむね7年以内の人
② 融資限度額
7200万円(うち運転資金4800万円)
新規開業資金
新規開業資金とは、新たに事業を始める人、または、初めてからおおむね7年以内の方(性別・年齢関係なし)を対象とする日本政策金融公庫での融資制度になります。
① 利用条件は下記になります。
・新たに事業を始める人、または、事業を始めてからおおむね7年以内の人
・事業の成長にかけて雇用を生む可能性があること
※なお、本制度の貸付金残高が1,000万円以内(今回のご融資分も含みます。)の方については、本要件を満たすものとします。
② 融資限度額
7200万円(うち運転資金4800万円)
いかがでしたでしょうか。今回は、日本政策金融公庫を活用したクリニックの資金繰り方法として使える主な融資制度についてご紹介させていただきました。
メモ
もしも、日本政策金融公庫を利用したいけどどのようにすればよいかわからないという場合には、行政書士等専門家のサポートを受けることで手続きを円滑に、確実に進めることができます。依頼するための費用は融資の金額により数%程度かかりますが、自分自身でする場合の時間や手間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。