会社が銀行などの金融機関から融資をしてもらう際に、会社の代表者などを連帯保証人とすることを条件に融資を受けることがあります。
日本政策金融公庫などの政府系金融機関の場合は保証人なしで受ける事が出来る融資はありますが、民間の金融機関の場合は原則融資をうける会社の代表者個人が連帯保証人になる必要があります。
金融庁は「第三者連帯保証人」を原則求めない様にと各金融機関に通達を出しています。
「第三者連帯保証人」とは、融資を受ける会社の経営者以外の者が保証人になることで、このことを原則求めないというのが、「第三者連帯保証人の廃止」ということになります。
「第三者連帯保証人」とは?
昔は、企業が融資をうける際には、会社の代表者や役員以外の第三者、極端な事を言えば、会社の経営にまったく関係のない、経営者の親族や、知人や友人も第三者連帯保証人として、
融資をうけた会社が融資金を返済できなくなった場合、その保証として会社に代わって個人資産で返済をする事がありました。
融資に関する連帯保証人を第三者が引き受ける際に、その債務責任(代わりに借金を返さなくていけなくなる。)などの説明が不十分であったりして、トラブルの元になっていました。
金融庁では以前から、「第三者連帯保証人」を原則廃止することを各金融機関に話をしていましたが、徹底した決まりでなかったため、なかなか「第三者連帯保証人」の廃止までには至りませんでした。
そんななか、2011年3月に東日本大震災が発生し、被災した企業が復興の為に金融機関に融資を申し入れた際に「第三者連帯保証人」の問題が再燃しました。
被災して個人的にも大変な時に、知人の会社の連帯保証人として返済なんかする余裕がない!というような事が多数あり、融資が滞ってしまう事態になりました。
こうしたなか金融庁は「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないこと」を原則とする
融資慣行の確立に向けて、金融機関向けの監督指針と金融検査マニュアルを改定しました。
金融機関向けの監督指針と金融検査マニュアルを改定
改定した内容としては、
①金融機関は、融資の際に経営者以外の第三者の連帯保証人を原則求めないこと。
②経営者以外の第三者との間で個人連帯保証契約を締結する場合には、その第三者との間で保証契約を締結する客観的、合理的な理由があること。
③経営者以外の第三者との間で個人連帯保証契約を締結する場合には、経営に実質的に関与していない場合であっても会社に代わって債務を返済しなくてはならない可能性があることをその第三者に特段に説明をし、第三者より内容を理解した事の確認をとること。
となっています。なんだか小難しい言葉ですが、①で原則禁止といっておいて、②と③では例外的に認めるというふうに言っています。
特に②の客観的、合理的な理由というと、例えば、会社の経営をしている代表者や役員以外に、営業許可などの名義人になっているものや、経営者の奥さんで、会社の登記上役員には入っていないけど、経営者の手伝いをして実質一緒に経営しているとみなされる人などが対象になります。また経営者が高齢や体調不良などで、会社の経営をリタイヤすることを考えていたとして、その事業を引き受ける事業承継予定者の方も対象になります。
この様に金融庁は「第三者連帯保証人」を原則禁止にする方針を打ち出したものの、その理由によっては例外的に認めるということも言っており、100%禁止までには至っていません。
このように金融庁が例外的に「第三者連帯保証人」を認めているのは、経営者以外の第三者の個人連帯保証という制度に積極的な意義や機能を求めているからだと思います。
一般的に個人事業主を含めた多くの中小企業は、経営と家計がしっかりと分離できておらず、財務諸表などの信頼性が大手企業と比べても十分とは言えない為、その信頼性を補完事や、経営規律を正すために、経営者には連帯保証人になってもらい、経営に関係のない第三者にもなってもらう事で経営者も他人に迷惑が掛からない様に経営モラルを遵守するだろうという期待を込めているのだと思います。
また、第三者が善意で積極的に連帯保証人に名乗りを上げてもらう場合などは、第三者連帯保証人を全面的に例外なく禁止してしまうと、企業融資を受けることができなくなり、企業の資金繰りが悪化し、まわりまわって経済界の成長や安定性が低下してしまうおそれがあるためというのも全面禁止に出れない大きな理由だと思います。
第三者連帯保証人の廃止について解説してきましたが、原則どこの金融機関も現在は第三者連帯保証人を求めることは少なくなっています。
しかしながら肝心なのは、連帯保証人が誰であれ、会社の運営は日々資金繰りをしっかりと管理していくことだと思います。