日本政策金融公庫から創業融資を受ける際に、担当者から月別収支計画書を提出してください、といわれてお困りの方もいらっしゃると思います。月別収支計画書をどのように書いたらいいのかと困惑している方も多いのではないでしょうか。
今回は、月別収支計画書の書き方ガイド!満額融資を日本政策金融公庫から!と題して、月別収支計画書の書き方をご説明していきたいと思います。
月別収支計画書とは、創業融資を受ける際に、創業計画書に紐づけて作成・提出をする書類となります。創業計画書には、創業当初と1年後又は軌道に乗った後の収支関係を記載する箇所があり、そことの整合性があるのかどうかを見られます。
創業当初には、事業を始めてから約2~3ヶ月程度の数値を書いていけばよいでしょう。
1年後又は軌道に乗った後には、1年程度後を軌道に乗った後とするのが良いでしょう。2期目以降も赤字となる事業計画だと、融資担当者は本当に大丈夫なのかと感じられてしまいます。
月別収支計画書のダウンロードは下記からできます。記入例もありますので、あわせて参考にすると良いでしょう。
月別収支計画書の書き方
月別収支計画書は、下記の項目で書き方が分かれています。
① 売上高
② 売上原価(仕入高)
③ 経費
④ 利益
⑤ 借入金返済額
⑥ 売上高、売上原価、経費の算出根拠
⑦ 売上高達成に向けた具体的な取り組み
⑧ 計画した売上高を下回った場合の資金繰り・資金調達方法
それでは具体的に見ていきましょう
① 売上高
売上高の算出方法ですが、基本的には業種に関わらず、単価×数量となるものと思います。
飲食店の場合ですと下記の計算式になると思います。
客単価×座席数×1日の回転数×月の営業日数
製造業の場合ですと下記の計算式となると思います。
平均製品単価×月の見込み販売数
これらは業種にあわせて、基本的な計算式から具体化していくように考えると良いものと思います。
ポイントとしては、達成できることを合理的に説明できるようにすることです。融資の担当者は、ものすごい高収益の計画を求めているわけではありません。なぜならば、達成できなければそれは「絵に描いた餅」と同じ意味だからです。
そうはいっても、というところでもありますので、下記の経営指標を参考にして考えると良いでしょう。
中小企業の経営等に関する調査
これは、日本政策金融公庫がホームページ上に公開しているデータになります。日本政策金融公庫から融資を受けている企業の財務情報を分析して出している平均値の資料となります。
日本政策金融公庫の融資担当者も、このデータと比較して、売り上げ計画が良すぎていないか、逆に悪すぎていないかをチェックしています。
かなり細かい指標も確認することができ、たとえば飲食店・宿泊業の箇所を確認してみると、従業者1人当たり売上高や、店舗面積3.3mあたりの売上高など参考にできる数値も載っていますので確認しながら計画を立ててみましょう。
② 売上原価(仕入高)
売上原価とは、販売する商品の仕入れ価格や原材料の価格のことになります。
これは、業種や業態によって様々だと思いますので、ざっくり業界平均値を記載しておけば良いでしょう。業界平均値は、下記の日本政策金融公庫のホームページに載っている経営指標で調べることで良いでしょう。
中小企業の経営等に関する調査
原価率は、「100-売上高総利益率」で計算ができます。
たとえば、2018年8月掲載の飲食店・宿泊業を確認してみると、売上高総利益率は68.1%となっています。
これを計算式に当てはめると、「100-68.1=31.9%」となり、原価率の平均は31.9%となります。
融資担当者は、原価率や経費は、業界平均値をかなりの確率で重視していますので、それよりも低い原価率で設定すると、信用できない・楽観的などの評価を受けてしまいますので、注意しましょう。
③ 経費
日本政策金融公庫の月別収支計画書の経費の箇所には、人件費や家賃、支払利息で、あとはその他でまとめられてしまっています。ですので、経費については、もう少し細かくした資金繰り表や経費詳細などを別紙でつけることをおすすめいたします。
売り上げに応じて売上原価もあがってくる変動費や、人件費や家賃のように売り上げがあがってもあまりかわらない固定費にわけることができるものと思います。
たとえば、飲食店の場合の変動費は下記があると思います。
・繁忙期の水道光熱費
・繁忙期に対応するためのアルバイト・パート代やその交通費
・消耗品費
・広告宣伝費
そして、固定費とは下記があると思います。
・家賃
・開店するための最低限の人件費や交通費、法定福利費
・水道光熱費
経費の数値をもろもろ出してきましたら、必ず日本政策金融公庫のホームページに公開している経営指標と比較して数値を確認しましょう。確認する項目としては下記になります。
売上高営業利益率
計算式:100-(売上原価+利息を除いた経費)÷売上高
人件費対売上比率
計算式:(給料+法定福利費)÷売上高
諸経費対売上高比率
計算式:給料・法定福利費・利息を除いた経費÷売上高
中小企業の経営等に関する調査
④ 利益
いくらキャッシュが残るのかを表す数値になります。儲かった数値といっても大丈夫です。
1番重要な箇所になります。
融資担当者は、ここをみて返済能力が大丈夫なのかを判断していきます。
利益の確認ポイントとしては、利益から、税金や融資の返済・個人事業主なら経営者の生活費を支払うことになりますので、これらが支払えるような数値になっていなければなりません。
現在の法人税率は約40%になりますので、利益-40%+減価償却費で、税金を引いた後の手元に残るキャッシュを算出することができます。
減価償却費とは、金額の高い設備費などで購入した金額を、購入した年に一気に経費として計上せず、耐用年数に応じて分割して、1年ずつ計上していくものになります。
目標水準としては下記のように、左側が右側を少し上回る形を目指していきましょう。創業当初では上回ることは必須ではありませんが、軌道に乗った後には必ず上回っていないと融資は厳しいといえるでしょう。
個人事業主
目標水準:毎月の利益×0.6+毎月の減価償却費>毎月の経営者個人(扶養家族含む)の生活費+毎月の返済
法人
目標水準:毎月の利益×0.6+毎月の減価償却費>毎月の返済
⑤ 借入金返済額
これは、日本政策金融公庫や民間の金融機関からの融資の元金を記入していきます。元金据え置きなどしていて元金の返済がない場合には、ゼロと記載していきましょう。
⑥ 売上高、売上原価、経費の算出根拠
いままで、算出してきたものを、創業当初と軌道に乗った後に分けて記載していきます。枠が小さいので、詳細は別紙参照として、代表的な項目を記載すれば大丈夫です。
⑦ 売上高達成に向けた具体的な取り組み
集客方法や時期についてを記載していきましょう。
ホームページ・SNSなどで広告していく、などを記載していくことが多いと思います。
広告の取り組みとしては、創業前や創業時より、などと記載していくことが多いと思います。]
⑧ 計画した売上高を下回った場合の資金繰り・資金調達方法
融資担当者の本音としては、「貸したものを返済できるなら貸してあげますよ」というものです。なので、もしこの計画通りにいかなかった場合はどうすんの?ということが聞きたいわけです。なので、書き方としては下記が多いのではないかと思います。
・創業にかかる自己資金とは別に貯蓄している預金で赤字を補填する。
・配偶者や両親などの親族が補填する。
メモ
いかがでしたでしょうか。今回は、月別収支計画書の書き方ガイド!満額融資を日本政策金融公庫から!と題して、月別収支計画書の書き方をご説明させていただきました。月別収支計画書を簡単に書いてしまって融資が受けられなかった方もいらっしゃいます。
日本政策金融公庫から融資を受ける際にはとても大事に書類になりますので、丁寧にアピールしていきながら作成していきましょう。もし月別収支計画書の作成が難しいと感じるような場合には、行政書士等専門家のサポートを受けることで手続きを円滑に、確実に進めることができます。依頼するための費用は融資を受けたい内容により数万円~数%程度かかりますが、自分自身でする場合の時間や手間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。