外国人であっても、日本政策金融公庫から融資を受けることは可能です。ただし、これには外国人ならではの制約もあるので、その点に注意をして下さい。
どんな制約があるかというと、大きく2つ
①在留資格(ビザ)の種類
②在留期間の長さ
ではさっそくこれらの詳しい内容についても見ていきましょう。
①融資を受けられるかは在留資格(ビザ)の種類による
融資を希望するには、次の在留期間(ビザ)を持っている必要があります。
※厳密には「在留資格=ビザ」ではありませんが、分かりやすくするためにここでは一般的に使われる呼び方(ビザ)で呼びます。
- 経営・管理
- 高度専門職1号ハ
- 高度専門職2号
- 日本人の配偶者等
- 永住者(特別永住者含む)
- 永住者の配偶者等
- 定住者
これらに共通するのは、どれも「会社の経営が出来るビザ」という点です。
というのも、日本のビザは活動ごとに与えられる仕組みになっていて、例えば、「留学」のビザを持っているのであれば、出来る活動は「留学生としての活動」であって原則的には仕事はできません。そのため、上記のビザ以外を持っている場合は、会社の経営は認められていないビザですので、そもそも会社の経営、融資の申込みはできません。
なお、これに関連する話で言うと、「留学」や「家族滞在」をお持ちの方が「資格外活動許可」を取得して会社の経営を行おうとしても、実務上はそのようなことは出来ませんので、当然融資の申込みも出来ません。
これらのビザを持っていない方は、例えば日本人と結婚しているのであれば「日本人の配偶者等」にビザの変更をしたり、「経営・管理」へのビザ変更を検討、そうでなければ、要件を満たすまで現在の活動を続けて、「永住者」や「日本国籍」を取得するという選択肢を取ることになります。
②在留期間の長さ
次に、上記のビザを持っていても、大きなハードルになるのは、「在留期間」です。上記のビザを持っていても、
①永住者
②高度専門職2号
以外のビザを持っている人以外は、日本に居られる期間が決まっています。
例えば、「日本人の配偶者等」でも「経営・管理」でも、大抵はビザ取得当初は入管局が在留状況を確認する必要があるため「1年」の在留期間を与えられます。
その後、3年、5年(最長)とビザを更新する時に長い在留期間を貰うことになりますが、基本的には受けた融資の返済は残っている在留期間以内に返済をするということになります。
つまり、「日本人の配偶者等(5年)」を持っていれば受けた融資の返済期間は5年となります。
ただ、実務上は、「永住者」や「日本人の配偶者等」といった見本への結びつきが強いとされる身分系のビザであれば、「ビザ更新」と「事業継続」を必須条件として在留期間より長い返済期間での融資を受けられる場合もあります。
なお、「事業継続」の判定要素としては次の事項があります。
①事業計画の中身
②自己資金の比率と形成過程
③日本での居住歴と在留状況
④担保となる不動産の所有状況や家族の経済的背景
⑤配偶者の国籍
つまり、永住者や高度専門職2号のように在留期間に定めのないビザを持っている人であればこの制約は気にする必要はなく、公庫側も融資をしやすい一方、そうでない方は条件が整わないと融資はなかなか難しいということになります。
では最後に、日本政策金融公庫が公表している過去の外国人起業家への融資事例を一つご紹介しておきます。
このケースでは、おそらく「日本人の配偶者等」のビザを取得しており、在留期間は短い可能性がありますが、新設会社での融資決定となっています。
日本政策金融公庫が支援した港区で創業した外国人起業家の例
引用元(https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/pdf/tokyo161111r.pdf)
・代表者はスウェーデン出身。母国で王立工科大学の物理学教授として勤務し、平成4年に日本の大手企業の研究所の博士研究員として初来日。いったん帰国したのち、平成 19 年に駐日大使館の科学技術参事官として再来日。参事官の任期満了後もオランダ系の科学技術出版社の日本支社に従事していた。
・日本人の妻と結婚し、妻と共同して事業を行うために平成 25 年港区南麻布に法人を設立。事業内容は、フランスのシャンパンを輸入し、日本の飲食店向けに販売するもの。
・輸入シャンパンを飲食店のオリジナルブランド(ハウスワインならぬハウスシャンパン)として販売できるようにするのが特長。国内の飲食店向けの提案・営業は妻が担当し、フランスのシャンパンメーカーへの交渉を代表者が担当している。
・代表者のビザ取得や酒類販売免許取得を行政書士がサポート。シャンパン仕入れのための運転資金を公庫が平成 28 年6月に 300 万円融資した。
メモ
さて、ここまでいかがだったでしょうか?
外国籍であるという理由だけで融資を諦める必要はありませんので、希望があれば、一度行政書士などの専門家に相談をしてみましょう。