永住者の配偶者は永住者が死亡した場合在留資格はどうなるのか解説
永住者である日本人配偶者が死亡した場合、配偶者ビザのまま外国人は日本に住み続けられません。
死亡から6か月以内に在留資格の変更をする必要があります。
この記事では日本人配偶者の死亡後に、外国人がするべきことを分かりやすく説明します。
日本人の夫(あるいは妻)が死亡したあとも日本に住み続けたい人は、是非とも参考にしてみてください。
日本人永住者が死亡した場合外国人配偶者の在留資格はどうなる?
永住者である日本人が死亡した場合、死亡から6か月以内に在留資格の変更をしない限り、在留資格は取り消しの対象になります。
日本人の配偶者が死亡することで、配偶者ビザは資格要件を満たさなくなるからです。
配偶者ビザが与えられるには下記の要件に当てはまる必要があります。
- ●日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者
(引用元:入管法別表第二)
配偶者ビザを維持するには、日本人の配偶者であり続けないといけません。
婚姻相手であった日本人が死亡してしまった場合、「日本人の配偶者」ではなくなります。
配偶者ビザの要件を満たさなくなった以上、在留資格の変更が必要になりますが、配偶者が死亡してすぐさま在留資格を喪失するのではありません。死亡から6か月以内に限り、以前の配偶者ビザのままでも日本に在留はできます。
しかし、死亡から6か月を過ぎても在留資格の変更手続きが取られなかった場合、配偶者ビザは取り消しの対象になり、帰国せざるを得なくなるので注意しましょう。
変更後の在留資格には、以下の資格が考えられます。
- ●定住者
- ●就労
- ●経営管理
- ●留学
- ●配偶者(再婚した場合)
配偶者死亡のケースで選ばれる確率が高い在留資格は、資格要件をクリアしやすく就労制限もないので、「定住者」資格を選ぶ外国人の割合が多いです。
日本人の夫(または妻)が死亡した場合、定住者資格への変更を優先して検討しましょう。
なお、配偶者ビザの更新期限があと2年残っている人でも、死亡から6か月以内に在留資格の手続きを取らないといけません。
更新期限が切れるまでは配偶者ビザは有効だと勘違いしている外国人も多いので注意が必要です。
日本人の配偶者が亡くなった場合にすべきこと
日本人の夫(または妻)が死亡した場合、配偶者は以下の申請書を入管窓口に提出する必要があります。
- ●配偶者に関する届け出
- ●在留資格の変更許可申請書
配偶者に関する届出 |
死亡から14日以内に提出 |
---|---|
在留資格の変更許可申請 |
死亡から6か月以内に提出 |
更新期間内であっても、配偶者ビザの継続利用は認められないため、死亡から6か月以内に、在留資格を変更する必要があります。
注意点として、在留資格変更の前に、死亡から14日以内に配偶者に関する届け出を忘れないようにしましょう。
配偶者に関する届け出をする
死亡から14日以内に「配偶者に関する届出」をする必要があります。
配偶者に関する届出は法律で提出が義務付けられており、提出を怠ると20万円以下の罰則が課される可能性があります(入管法第71条の5第3号)。
不届けが理由で、のちの在留資格の申請で不利に扱われる危険もあります。配偶者に関する届出は絶対に忘れないようにしましょう。
配偶者に関する届出は入管の窓口に提出します。
具体的な提出先は出入国在留管理庁のHPで確認しましょう。
在留資格の変更手続きをする
日本人夫(または妻)の死亡後は、在留資格の変更手続きをしましょう。
結婚当時の配偶者ビザは、資格要件を欠いて使えなくなるからです。
在留資格の種類は複数ありますが、優先して検討してほしいのは定住者資格への変更です。
定住者としての在留資格は、永住者資格よりも資格要件が満たしやすく、就労制限も無いのでおすすめです。
定住者としての在留資格を得るには?
定住者の在留資格要件は以下の通りです。
- ●婚姻関係が3年以上継続したこと
- ●日本で生計が立てられること
- ●基本的な日本人語能力があること
- ●公的義務を果たしていること
これらの要件はあくまで目安です。
形式的には要件を満たしていなくても、事情によって定住資格が許可される場合もあります。
例えば、前配偶者との間に子供がいて、申請者がその子どもの養育者になる場合です。
日本人の子供がいる場合は、3年以上の婚姻期間に関係なく、定住者の在留資格が認められるとされています。
在留資格が認められなければ、日本人の子供を育てる者がいなくなるからです。
子育てのほかにも、日本に住むべき事情があるのなら、その理由を申請書に記載しましょう。
婚姻関係が3年継続したこと
定住者資格の許可には、正常な3年以上の婚姻関係の継続が必要です。
婚姻生活や別居期間が短いと、偽装結婚など正常な婚姻関係ではなかったと判断される恐れがあります。
もっとも夫婦でお互い連絡を取り合っており、夫婦同士の交流があった場合には、別居の事実は問題にはなりません。
配偶者ビザの更新期間が1年の短期であっても、婚姻関係が3年以上続いていれば大丈夫ですので、問われるのは婚姻期間であって配偶者ビザの在留期間は影響しません。
しかし、前配偶者との間に日本人の子供がおり、申請者が子どもの扶養をするケースでは、婚姻期間の要件は不要になるとされています。
日本で生計が立てられること
定住者資格の許可には安定した収入も必要です。
配偶者ビザでは、結婚相手の日本人に収入がある限り、外国人の安定収入は問題にならないです。
しかし死亡後では外国人本人の安定収入が求められます。
具体的にどの程度の収入が必要かは公表されていませんが、実務では月収20万以上の収入が望ましいとされています。
パートでも派遣社員でも要件を満たす可能性はありますが、正社員であるほうが、安定収入があると判断されやすいのは間違いないです。
定住者資格を検討する人は、就職活動をするなどして安定収入を確保しましょう。
基本的な日本語能力があること
定住者資格の許可には日本語能力も求められます。
日本で収入を得て生きていく以上、基礎的な日本語能力は求められます。
どの程度の日本語能力が必要かについては、明確な基準はないものの、最低限度の意思疎通ができるレベルで良いと考えられています。
日本語能力検定に合格している必要はなく、生きていくうえでの意思疎通ができるかどうかで判断されます。
日常生活に支障が出ない程度の日本語能力は身につけておいたほうがいいでしょう。
公的義務を果たしていること
定住者資格の許可を得るには公的義務を果たしていることが必要です。
税金や年金の不払いが発覚すると、公的義務が果たされていないと判断される可能性があります。
注意したいのは「配偶者に関する届け出」です。
日本人の夫(または妻)の死亡後に、配偶に関する届け出がされていないと、公的義務の要件を満たさない原因になり得ますので、公的義務の要件を満たすためにも、死亡から14日以内に、配偶者に関する届け出をしましょう。
(中見出し)定住者以外の在留資格について
定住資格以外で考えるのであれば、以下の在留資格への変更が選択肢にあります。
- ●就労
- ●経営管理
- ●留学
- ●配偶者(再婚した場合)
日本に住み続けるのであれば、就労制限の無い在留資格が望ましいです。
「就労」ビザで働くことはできますが、取得する就労ビザの内容によっては、学歴や専攻で職種が限定されてしまいます。
「留学」ビザは学業を目的とした在留資格ですので、原則として就労には就けません。
経営者の方であれば「経営管理」ビザの取得が視野に入るでしょう。経営管理ビザの取得には500万円の資本金が必要です。
死亡から6か月以内に日本人と再婚すれば、例外的に「配偶者」ビザの継続が可能です。配偶者ビザですので、就労は無制限です。
なお再婚の場合は、変更ではなく更新の取り扱いになります。
日本人の配偶者が亡くなった場合に必ず注意しなければならないこと
在留資格を維持するうえで、日本人配偶者が死亡した場合に注意すべき点をまとめます。
以下の申請を怠らない
- ●配偶者に関する届け出(死亡から14日以内)
- ●在留資格の変更(死亡から6か月以内)
配偶者に関する届け出は「死亡から14日以内」と期限が短いので、申請を忘れないよう注意が必要です。
配偶者に関する届け出を申請しないと、在留資格の変更で不利になる恐れがあります。
また在留資格の変更は、配偶者ビザの更新期間にかかわらず、6か月以内の申請が必要です。
配偶者ビザの次の更新日が6か月以上先であったとしても、在留資格の変更は免除されません。勘違いして在留資格の変更を忘れると、在留資格の取り消し対象になります。注意しましょう。
在留資格の変更にあたっては、資格要件を満たすため、安定した収入や日本語能力が求められる場合があります。
在留資格の要件を満たせないと帰国せざるを得なくなりますので、在留資格の要件は把握しておきましょう。
まとめ
永住者である日本人の配偶者が死亡したあとも日本に住む場合、以下の点を知っておきましょう。
- ●配偶者に関する届け出をする
- ●在留資格の変更許可申請をする
- ●定住者資格は就労要件がないのでおすすめ
- ●定住者資格の取得には安定収入や日本語能力が必要
日本人の夫や妻が死亡した場合、それまでの配偶者ビザでは日本に住めなくなります。
必要な申請を怠ると在留資格の取り消し対象になりますので、不安な人は専門家に相談しましょう。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応