医療目的の特定活動ビザ「医療滞在」について要件や必要書類など詳しく解説
外国人が、日本で医療行為を受けるために必要となるのが、特定活動ビザ「医療滞在」です。自身が日本の医療を受けたい、もしくは本国にいる家族に日本の医療を受けさせたいといった場合に、取得することになります。
しかし、特定活動ビザ「医療滞在」を取得するためには、どのような要件を満たす必要があるのか、申請に必要な書類には何があるのか、わからないことも多いでしょう。
そこで、本記事では、
● 特定活動ビザ「医療滞在」の概要
● 特定活動ビザ「医療滞在」の要件
● 特定活動ビザ「医療滞在」の在留期間
● 特定活動ビザ「医療滞在」の活動内容
● 特定活動ビザ「医療滞在」の申請方法
● 特定活動ビザ「医療滞在」の申請代理人
● 特定活動ビザ「医療滞在」の注意点
について、詳しく解説します。日本で医療行為を受けることを検討しているという方は、ぜひ参考にしてみてください。
医療滞在【特定活動ビザ】
特定活動ビザ(医療滞在)は、「告示された特定活動」のひとつです。
具体的に告示された内容は、「本邦に相当期間滞在して、病院又は診療所に入院し疾病又は傷害について医療を受ける活動及び当該入院の前後に当該疾病又は傷害について継続して医療を受ける活動」となっています。
特定活動ビザ「医療滞在」の要件
医療目的で日本に滞在する際に取得するのが、特定活動ビザ「医療滞在」。特定活動ビザ「医療滞在」を取得するには、以下4つの要件を満たす必要があります。
● 相当期間滞在すること
● 入院して治療を受けること
● 入院前後の医療行為は入院して受けた医療行為に関わるものであること
● 在留中の費用の支払能力があること
順番に見ていきましょう。
相当期間滞在すること
前述の告示内容にもある通り、特定活動ビザ「医療滞在」の取得要件の1つは、日本に相当期間滞在することです。相当期間とは、90日を超える日数のことを指します。したがって、91日以上の医療行為を受ける際には、特定活動ビザ「医療滞在」を取得しましょう。
日本での滞在期間が90日以下の場合は、「短期滞在」ビザの対象になるので、覚えておいてください。
入院して治療を受けること
特定活動ビザ「医療滞在」では、入院して医療行為を受けることが前提になります。自宅やホテルなどから通院して医療行為を受ける場合は、特定活動ビザ「医療滞在」の対象にならないので注意しましょう。
ちなみに、特定活動ビザ「医療滞在」の医療行為には、人間ドック、健康診断、歯科治療、出産など、幅広い分野の医療行為が含まれます。
入院前後の治療は入院して受ける治療に関わるものであること
入院前後に受ける医療行為が、入院して受ける医療行為に関連していることも、特定活動ビザ「医療滞在」の要件の1つです。
特定活動ビザ「医療滞在」の告示内容には、入院前後に医療行為を受ける活動も含まれています。しかし、入院前後に受ける医療行為は、入院中に受ける医療行為に関連したものであることが必要です。例えば、入院してがんの治療を受けるために特定活動ビザ「医療滞在」を取得したにも関わらず、退院後に全く別の治療を受ける場合、入院中と入院後の医療行為には関連性がないため、要件を満たせません。
入院中の医療行為と入院前後の医療行為には、関連性や連続性が求められることを覚えておきましょう。
在留中の費用の支払能力があること
特定活動ビザ「医療滞在」では、在留中の費用の支払能力があることも必要です。在留中の費用には、滞在費や医療費などが含まれます。
特定活動ビザ「医療滞在」では、国民健康保険への加入ができません。そのため、医療費が全額自己負担となり、日本人が医療行為を受けるのに比べて、負担が大きくなります。よって、医療費を含む在留中の費用に対する支払能力があることが必須なのです。
しかし、在留中の費用の支払能力は、必ずしも医療行為を受ける本人にある必要はありません。医療行為を受ける外国人の親族などが、医療費などを負担するのであれば、支払能力はあると判断されます。
特定活動ビザ「医療滞在」の在留期間
特定活動ビザ「医療滞在」の在留期間は、6ヶ月もしくは1年です。在留期間は、個々の外国人の病状などを踏まえて決定されます。
また、必要であれば、在留期間の更新も可能です。特定活動ビザ「医療滞在」の在留期間の更新は、医師からの診断書、医療機関発行の受入証明書、治療予定表、在留中にかかる費用の支払などが定期的に確認された上で、判断・許可されます。
さらに、特定活動ビザ「医療目的」では、目的の治療が終了となれば、本国へ帰国しなければなりません。したがって、治療終了後は、基本的に日本に滞在し続けられないことを覚えておきましょう。
特定活動ビザ「医療滞在」で認められる活動内容
特定活動ビザ「医療滞在」で認められる活動内容の1つは、外国人が入院前後もしくは入院中に医療行為を受ける活動です。
前述の通り、特定活動ビザ「医療滞在」の告示内容には、入院中に医療行為を受ける活動だけでなく、入院前後に継続して医療行為を受ける活動も含まれています。
また、特定活動ビザ「医療滞在」の取得の対象者は、医療行為を受ける外国人本人だけではありません。医療行為を受ける外国人の付添人も同様に、特定活動ビザ「医療滞在」を取得できるのです。付添人には、親族以外の方もなれますが、親族以外の方が付添人となる場合は、信ぴょう性の有無を判断するために、医療行為を受ける本人との関係性が厳しく審査されます。
付添人に認められる活動内容は、医療行為を受ける外国人の日常生活の世話をする活動です。例えば、入院中の世話や入院前後の送迎・付添いなどが挙げられます。収入を伴う活動や報酬を受ける活動は対象にならないので、注意してください。
特定活動ビザ「医療滞在」の申請方法
特定活動ビザ(医療滞在)の申請には、以下に挙げる3パターンがあります。
● 特定活動ビザ(医療滞在)を新規申請する
● 他の在留資格から特定活動ビザ(医療滞在)に変更する
● 特定活動ビザ(医療滞在)の在留期間を更新する
申請に必要な書類は、各パターンで微妙に異なります。また医療滞在ビザと付添人ビザも、用意する書類がそれぞれ違うため注意が必要です。具体的な必要書類は以下の通りです。
特定活動ビザ(医療滞在)を「新規申請」する場合
医療滞在ビザ・付添人ビザに共通の書類 |
1)在留資格認定証明書交付申請書 |
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医療滞在ビザに必要な書類 |
1)日本の病院が発行した受入れ証明書 ・病院等への前払金、預託金等の支払済み証明書 |
付添人に必要な書類 |
(1) 滞在日程・滞在場所・連絡先・付添い対象者との関係などを説明する資料 |
特定活動ビザ(医療滞在)に「他の在留資格から変更する」場合
医療滞在ビザ・付添人ビザに共通の書類 |
1)在留資格変更許可申請書 |
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医療滞在ビザに必要な書類 |
1)日本の病院が発行した受入れ証明書 |
付添人に必要な書類 |
(1) 滞在日程・滞在場所・連絡先・付添い対象者との関係などを説明する資料 |
特定活動ビザ(医療滞在)の「在留期間を更新」する場合
医療滞在ビザ・付添人ビザに共通の書類 |
1)在留期間更新許可申請書 |
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医療滞在ビザに必要な書類 |
1)診断書 |
付添人に必要な書類 |
(1) 滞在日程・滞在場所・連絡先・付添い対象者との関係などを説明する資料 |
特定活動ビザ「医療滞在」の申請代理人となれる人
特定活動ビザ「医療滞在」の申請は、必ずしも医療行為を受ける外国人本人が行う必要はなく、代理人に申請してもらえます。ただし、申請代理人となれる人は限られているので、よく確認しておきましょう。
● 医療行為を受ける外国人の特定活動ビザ「医療滞在」の申請
● 付添人の特定活動ビザ「医療滞在」の申請
上記2パターンにおいて、申請代理人となれる人をまとめました。
医療行為を受ける外国人の特定活動ビザ「医療滞在」の申請
医療行為を受ける外国人が申請人の場合、申請代理人となれる人は、以下の通りです。
● 申請人が入院する病院などの職員
● 日本に居住する申請人の親族
● 申請人の付添人
申請人の付添人が申請代理人となれるのは、在留資格変更許可申請や在留資格更新許可申請のときに限ります。
付添人の特定活動ビザ「医療滞在」の申請
付添人が申請人の場合は、以下の人が申請代理人となります。
● 付添対象の医療行為を受ける外国人
● 医療行為を受ける外国人が入院する病院などの職員
● 日本に居住する申請人の親族
特定活動ビザ「医療滞在」の注意点
医療費の補助が受けられる「国民健康保険」は、原則として「市町村又は特別区の区域内に住所を有する者」を対象とした制度です。ただし、特定活動(医療滞在)で滞在する外国人とその付添人は、国民健康保険に加入できません。
特定活動ビザ(医療滞在)で滞在する外国人が国民健康保険に加入できない根拠は「国民健康保険法」と「国民健康保険法施行規則」に記載されています。
まず、国民健康保険法には「市町村が行う国民健康保険の被保険者としない」者が列挙されており、その中に「厚生労働省令で定めるもの」という規定があります(第6条第11号)。そして「厚生労働省令で定めるもの」を具体的に定めたのが、国民健康保険法施行規則の第1条の第1号〜5号です。
それぞれの内容を簡単に要約すると次のようになります。
● 在留期間が3ヶ月以下の外国人、在留資格が「短期滞在」の外国人(第1号)
● 在留資格が「医療滞在」または「付添人」の外国人(第2号)
● 在留資格が「観光、保養等」で1年以下の長期滞在をする18歳以上の外国人(第3号)
● 在留資格が「観光、保養等」で1年以下の長期滞在をする外国人に同行する外国人配偶者(第4号)
● その他条例で定めるもの※在留資格が「外交」の外国人、不法滞在などで在留資格がない外国人など(第5号)
上記「第2号」の規定により、日本で医療を受けることを前提に特定活動ビザを取得した外国人は、国民健康保険制度の被保険者になることができません。このため病院・診療所への入院費や治療費は基本的に「全額自費負担」となるので、十分な注意が必要です。
まとめ
特定活動ビザ「医療滞在」について解説してきました。
特定活動ビザ「医療滞在」は「告示特定活動」の1つで、日本の病院などに入院し、医療行為を受ける活動を行う場合に交付される在留資格です。また、活動内容は入院中に限らず、入院前後に継続して医療行為を受ける活動も含まれます。
特定活動ビザ「医療滞在」には、91日以上の滞在や、入院を伴う医療行為など、いくつかの要件が定められているため、申請前には必ず確認しましょう。
また、申請時に必要となる書類は、申請パターンによって異なるため、1つずつ慎重に揃えていってください。
今回解説した内容を参考に、特定活動ビザ「医療滞在」をスムーズに取得しましょう。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応