結婚で定住者ビザが取れる条件は?申請方法も分かりやすく解説
結婚ビザの種類
日本に住む資格がある人と結婚してその人の配偶者(夫または妻)になった場合、「結婚ビザ」を取得すれば日本に滞在できます。
「結婚ビザ」のほかに、日本で働くための「就労ビザ」を取得して日本に滞在することもできます。しかし「就労ビザ」は、就労していなければ日本に滞在できません。会社をクビになったり、転職先が決まらない場合、本国に帰国することになります。
日本に長く安定して滞在したい外国の方は、「就労ビザ」だけでなく、「結婚ビザ」の取得も検討することがおすすめです。以下、4種類の「結婚ビザ」についてご紹介します。
日本人の配偶者等
日本人と結婚すれば「日本人の配偶者等ビザ」を取得できます。このビザを取得すれば仕事内容や時間などの制限なく働けます。
「日本人の配偶者等」ビザを取得するためには法律的に有効な結婚をしていることが必要です。また、夫婦が日本で生活できるだけの収入が必要です。
永住者の配偶者等
「永住者ビザ」をもつ外国人と結婚すれば「永住者の配偶者等ビザ」を取得できます。このビザも法律的に有効な結婚をしていること、夫婦が日本で生活するための収入があることが必要です。仕事内容や時間などの制限がなく働けます。
家族滞在
「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」「高度専門職1号」「企業内転勤」などのビザをもつ外国人と結婚すれば、「家族滞在ビザ」を取得できます。「家族滞在ビザ」で仕事をする場合、週28時間までの制限時間内で働けます。
定住者
「定住者ビザ」をもつ外国人と結婚すれば、「定住者ビザ」を取得できる可能性があります。結婚は法律的に有効であることが必要です。また、夫婦が日本で生活できるだけの収入が必要です。
「定住者ビザ」は「永住者ビザ」と同様、活動に制限がありません。そのため、就労をする場合、仕事の内容を自由に決められますし、仕事をする時間にも制限がありません。
ただし「永住者ビザ」の在留期間が無制限であるのと異なり、「定住者ビザ」は在留期間が決められています。一定の期間が過ぎたら更新する必要があります。
結婚で「定住者ビザ」の取得要件
結婚して「定住者ビザ」を取得するためには、いくつかの要件をみたす必要があります。それぞれの要件についてくわしく説明します。
「定住者ビザ」をもつ外国人と結婚する
「定住者ビザ」を取得するためには、「定住者ビザ」をもつ外国人と結婚する必要があります。「定住者ビザ」は、特別な理由で日本に住むことを認められた外国人のためのビザです。①法務省の告示で規定されている「告示定住」と、②告示で規定されていない「告示外定住」の2種類があります。
①「告示定住」には以下のものがあります。
・日系2世、3世
・日本人の実子(帰化により日本国籍を取得した者の帰化前の子)
・「永住者」の実子(日本外で出生した者、または日本で出生後引き続き日本に在留していない者)
・「定住者」(1年以上の在留期間を有する者)の扶養を受ける未成年で未婚の実子
・実親の配偶者が日本人、永住者、定住者(1年以上の在留期間を有する者)であり、実親が「日本人の配偶者等」または「永住者の配偶者等」の在留資格である者で、実親の扶養を受ける未成年で未婚の実子
・日本人、永住者、又は1年以上の在留期間を指定されている定住者の扶養を受ける6歳未満の養子
・中国残留邦人やその親族
②「告示外定住」には以下のものがあります。
・難民認定された者
・日本人、永住者である配偶者と離婚した者
・日本人、永住者である配偶者と死別した者
・日本人、永住者との結婚が事実上破綻した者
・日本人の実子を監護・養育する者
「定住者ビザ」をもつ外国人の在留期間が1年以上
定住者の在留期間は5年、3年、1年、6ヶ月、または法務大臣が個々に指定する期間で認められます。しかし「定住者ビザ」をもつ外国人と結婚して「定住者ビザ」を取得する場合、1年以上の在留期間がある外国人と結婚する必要があります。
素行が善良である(「定住者ビザ」の配偶者が日系2世・3世である場合)
日本や外国の法律に違反して、懲役、禁固、罰金などの刑を科せられた場合、素行が善良と認められないケースがあります。たとえば交通事故による業務上過失致傷罪や、廃棄物処理法で罰金刑を科せられる場合です。
このほか、日常生活で違法行為や風紀を乱す行為を繰り返している場合、素行が善良と認められないケースもあります。
入管に素行が善良でないと判断された場合、ビザ申請は不許可となります。
離婚していない
「定住者」と結婚して「定住者ビザ」を取得しても、その後離婚してしまった場合は「定住者ビザ」を取得できません。
結婚で「定住者ビザ」取得までの流れ
外国人が結婚して「定住者ビザ」を取得する場合、ビザの申請をする前に、結婚手続きをすませる必要があります。そのため、流れとしては結婚手続きが無事に終わったあとに、入管に「定住者ビザ」を申請します。
ビザ申請手続きは、結婚相手が海外にいる場合と日本にいる場合とで異なります。どこでビザの申請をするかを決定した上で手続きを進めます。
結婚手続き
結婚する当事者二人ともに日本人ではなく外国人どうしで結婚する場合は、①日本方式、②外国方式のどちらかで結婚手続きを行います。
また、パートナーとの国籍が異なる場合は、原則として両方の国の方式で手続きを行う必要があります。ただし一方の国の手続きだけすれば、もう一方の国の手続きをしなくてもよい国もあります。自分の国の結婚手続きについてインターネットなどを活用して十分に情報収集しなければなりません。
以下、日本方式、外国方式についてご紹介します。
日本方式
日本方式では、届出人の住所地がある市役所の窓口に結婚を届け出ます。両外国人に結婚の要件が備わっていることが確認されると届出が受理されて有効な結婚が成立します。
届出をするときに提出する必要な書類は自治体によって異なりますが、多くの自治体で、①婚姻届け、②婚姻要件具備証明書、③外国人の身分証明書(パスポート、在留カード)を必要としています。
このうち②婚姻要件具備証明書とは、その外国人が自分の国で婚姻できる資格があることを証明する書類です。たとえば婚姻できる年齢に達していること、独身であることなどを証明します。市役所は、婚姻届を受理するときにこの証明書を参照して外国人に婚姻する資格があるかを判断します。
日本方式の手続きをした後、さらに外国人の本国の役所や、日本にある大使館に届け出をすることで、外国でも結婚が成立します。この場合、日本の市役所の「婚姻届受理証明書」「婚姻届記載事項証明書」などを提出します。
ただし、外国で届け出なくても日本に届け出れば、外国で結婚の成立を認める国もあります。
外国方式
外国方式は、外国人の本国に結婚を届け出る方式です。外国で届出をする場合や、日本にある本国の大使館または領事館に婚姻の届出をする場合があります。
外国方式で結婚する場合、必要な書類は国によって異なるので、それぞれの国の役所や大使館で確認する必要があります。
海外でビザを申請する場合
海外にいる配偶者が「定住者ビザ」を申請する場合、入管で「在留資格認定証明書」書類を交付してもらうことが必要です。この証明書は外国人が定住者として日本に滞在する資格があることを証明する書類です。この証明書が交付されれば、海外の日本大使館でスムーズに査証を発給してもらえます。
必要書類の収集・作成
「在留資格認定証明書」が交付されるため必要な書類を日本にいる「定住者」と「定住者」と結婚した配偶者が協力して収集・作成します。具体的な必要書類は後述します。
入管で在留資格認定証明書の交付申請
必要書類が完成したら、日本にいる「定住者」の居住地で申請します。
在留資格認定証明書の交付
日本にいる「定住者」のもとに在留資格認定証明書を同封した封書がとどきます。「定住者」はこの証明書を海外にいる配偶者のもとに郵送します。
日本大使館での査証の発給
配偶者は日本大使館に在留資格認定証明書を提出し、申請書に必要事項を記入して査証の発給を申請します。在留資格認定証明書の有効期限内に日本に入国しなければなりません。
日本でビザを申請する場合
日本にいる配偶者がビザを申請する場合、すでに配偶者は「留学」「技術・人文知識・国際業務」などのビザ(在留資格)をもっています。このビザを「定住者ビザ」に変更する手続きを行います。
必要書類の収集・作成
定住者ビザに変更するための必要書類を「定住者」と「定住者」と結婚した配偶者が協力して収集・作成します。具体的な必要書類は後述します。
入管でビザ(在留資格)変更手続き
必要書類が完成したら、「定住者ビザ」に変更する配偶者の居住地で申請します。変更申請が許可されれば手続き完了です。
結婚で「定住者ビザ」の必要書類
①夫婦の結婚が偽装結婚でないこと、②日本で生活するための収入が十分にあることを証明するため必要書類を提出します。以下に一般的な必要書類をご紹介しますが、①②を証明するため、ほかに必要な書類がある場合、積極的に提出することをおすすめします。
なお、海外でビザを申請する場合も、日本でビザを申請する場合も、必要な書類はほぼ同じです。
申請書
海外で申請する場合、「在留資格認定証明書交付申請書」に必要事項を記載して提出します。
日本で申請する場合、「在留資格変更許可申請書」に必要事項を記載して提出します。
身分を証明する書類
1.写真(縦4cm×横3cm)
申請前3か月以内に正面から撮影された無帽,無背景で鮮明なもの。
2.パスポート
海外で申請する場合、パスポートの写しを提出します。日本で申請する場合はパスポートを提示します。
3.在留カード
海外で申請する場合は不要ですが、日本で申請する場合は在留カードを提示します。
4.住民票
定住者の世帯全員の記載のあるもの。発行日から3か月以内のものであることが必要です。
結婚を証明する書類
1.「定住者」と配偶者の結婚証明書
2.質問書
結婚の経緯などの質問に答えます。入管の様式のものを使用すること。
3.スナップ写真 2~3葉
夫婦が二人で写っているもの、家族や友人と一緒に写っているものを提出し、二人が本当に結婚していることを明らかにします。
収入が十分であることを証明する書類
1.定住者の住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書
発行日から3か月以内のもの。
2. 定住者の身元保証書
発行日から3か月以内のもの。
3.在職証明書
「定住者」の勤務先の在職証明書を提出します。
4.預金残高証明書
「定住者」が休職中の場合や、収入が低い場合、預金残高証明書を提出し、当面生活するための資金があることを証明します。
理由書
夫婦の結婚が真実であること、夫婦が日本で安定した生活するための経済的基盤が確保されていることを説明するため、「理由書」を提出することがあります。
結婚で「定住者ビザ」の審査期間
入管はビザ(在留資格)を審査して結果がでるまでの標準的な処理機関を公表しています。令和4年の4月1日から令和4年6月 30日の「定住者」の標準処理期間は以下の通りです。また「定住者」と結婚して取得する「定住者ビザ」と共通点の多い「永住者の配偶者等」ビザのデータもご紹介します。
ビザ |
海外から外国人を呼び寄せる場合 |
日本に滞在する外国人のビザを変更する場合(在留資格変更許可申請) |
|
---|---|---|---|
処分(告知)まで |
審査終了 |
||
定住者 |
55.0日 |
33.2日 |
24.1日 |
永住者の配偶者等 |
47.8日 |
32.3日 |
22.8日 |
海外から「定住者」として配偶者を呼び寄せる場合約55日かかります。日本で「定住者ビザ」に変更する場合、約24日かかります。
もっとも「定住者ビザ」には、上で説明したようにさまざまな種類があります。この入管のデータはそのすべての定住者ビザの審査期間についての集計の平均であるため、参考にしづらいデータとなっています。
そこで、「定住者ビザ」と共通点の多い「永住者の配偶者等」のデータをみてみましょう。「永住者の配偶者等ビザ」で配偶者を呼び寄せる場合、約47日かかります。日本で「永住者の配偶者等ビザ」に変更する場合、約22日かかります。こちらのデータも参考にしてみてください。
もし入管から追加書類を提出する要請がある場合、審査期間が長くなることがあります。早め早めに申請の準備をすることがおすすめです。
結婚で「定住者ビザ」を取得する場合の注意点
結婚で「定住者ビザ」を取得する場合、いくつか注意しなければならないことがあります。以下、具体的にご紹介します。
結婚手続きの注意点
結婚するために必要な手続きや書類は国によって異なります。手続きや書類の情報は日々更新されるので、自分の国の大使館に問い合わせたり、ホームページを調査するなどして、最新の情報を入手してビザ申請の準備をすすめることが大切です。
また、定住者と申請人が異なる国籍の場合、一方の国で結婚した効力が、もう一方の国でただちに有効になる国と、有効とならない国があります。したがって、どちらの国で結婚手続きを行うべきかを考えた上で結婚手続きを行うことが大切です。
ビザ申請の注意点
「定住者」ビザにはさまざまな種類があり、法律の規定も複雑です。自分が本当に「定住者」としてビザを申請する条件をみたしているかどうかを外国人が判断するのはとても難しいです。
法律の規定の内容を十分に理解してビザ申請の準備をすすめることが大切です。 少しでも不安があれば専門家に相談しておいた方がよいでしょう。
まとめ
定住者ビザは活動内容に制限がありません。勤務時間、仕事内容にしばられず、日本で自由に働きたい外国人にとっておすすめのビザです。
また、永住ビザを申請するためには一般に10年以上日本に滞在することが必要ですが、定住者ビザをお持ちの外国人は、5年間日本に滞在すれば申請できます。日本と深いかかわりをもつ定住者の方にとっても、おすすめのビザといえます。
定住者と結婚する予定のある方、日本で自由に活動したい方は、ぜひ「定住者ビザ」を取得することを検討してみてください。
ただし、個別の事情によって不許可になることも多いビザなので、定住者ビザを申請する前に、ぜひ一度専門家に相談することをおすすめします。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応