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前科と海外渡航との関係とシンガポールへの渡航事情

罪を犯し刑事裁判で有罪判決を受けると、前科が生じます。

すると、就職や国家資格の取得など、さまざまな場面で影響を受けることになります。

 

そして、これは海外渡航においても同様で、何らかの影響を受けることがあります。

『前科』とは

『前科』とは、刑事事件で起訴され、裁判によって有罪判決を受けた履歴です。

 

日本では刑法第9条の規定によって死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料といった刑罰があります。

犯人の自由を剥奪する刑罰である懲役や禁錮などの自由刑はもちろん、罰金などの財産刑や執行猶予によって刑務所へ収監されなくても、これらはすべて『前科』となります。

 

なお、『前科』の情報は検察庁のデータベースに記録が残り、犯罪捜査や裁判の資料、選挙権や被選挙権の確認に使われます。

また、前科情報は極めて秘匿性の高い個人情報であるため、外部に漏れることはありませんが、その記録は対象者の死亡するまで抹消されることはありません。

 

一方、逮捕されても不起訴になったり、起訴されても裁判で無罪判決を受けた場合などは『前歴』となり、記録は残るものの、冒頭に挙げたような不利益を被ることはありません。このほか、少年審判で保護処分を受けた事実や、軽微な交通違反反則金を納めた場合も、『前科』とはなりません。

前科者でも海外に行くことは可能?

では、前科を有している場合、海外渡航にはどのような影響があるのでしょうか。

すべての海外渡航が制限されるわけではない

日本国籍の場合、たとえ前科が生じたとしても、日本の刑法では「海外に渡航がまったくできなくなる」ということはありません。

 

ただし、渡航先によっては入国が認められないケースはあるので、注意は必要です。

 

 

これらの場合、入国が認められないことがあります。

ポイントとなるのはパスポートおよびビザの取得と入国審査

実際に前科が生じ、海外渡航が制限される局面としては、

  1. パスポートの取得時
  2. ビザの取得時
  3. 入国審査時

これらのタイミングが考えられます。

 

そこで、それぞれの局面で起こりうる影響をみてみましょう。

パスポートの取得

パスポートとは、日本国国民が外国渡航の際に、日本国政府が発行することにより、その者が日本国籍を保有していることを証明し、渡航先の政府に対して便宜の供与と保護を依頼するものです。

 

パスポートの取得に関しては、これを定めた旅券法で、「禁錮以上の刑に処せられた場合、その執行が終わるか、執行を受けることがなくなるまではその発給が制限されることがある」と定められています。

 

このため、前科が生じたことでパスポートが発給されないとなると、海外に渡航できません。

ビザの取得

ビザは外国への渡航を希望する際、書類や面接にて「その国に入国しても問題がないこと」を事前に審査し、認められると与えられる証明書です。

 

自国で発行されるパスポートとは異なり、ビザは渡航先の国で発行されるもののため、申請の際に前科の申告が必要です。

そのため、以下の点に注意しなくてはなりません。

 

 

ビザ取得にあたって確認される前科の内容は、主に申請者本人の素行に関する情報が中心で、以下のような内容が確認されます。

 

 

渡航先の国ごとに判定されるため、「どういった内容であればビザの審査が通る」という保証がないので、注意しましょう。

入国審査

入国審査は渡航先において、その国へ入国する者の身元や渡航目的を審査する手続きです。

 

このとき、渡航する国によっては、前科に関する質問に回答しなければなりません。

前科の内容次第では、入国が許可されないこともあります。

なお、最終的な入国の可否は入国審査官に委ねられます。

 

また、虚偽の回答をし、発覚した場合も同様に、入国ができなくなることがあります。

前科が生じることによる海外渡航への影響

ここからは、前科が生じることによる海外渡航への影響ついて、より具体的に、詳しくみていきましょう。

パスポート取得における影響

旅券法13条では、1号から7号において、「外務大臣らが旅券の発給を拒否できる」と定められています。

これらが適用されると、パスポートの取得が制限され、海外渡航ができない場合があります。

渡航先の法律に基づき適用される1号

渡航先で施行している法規にて、「前科があると入国を認めない」と定められている場合、旅券法13条1号が適用され、パスポートが発給されないことがあります。

 

具体的には

などが該当します。

一定の罪を犯し刑事裁判中あるいは身柄拘束が予定されている場合に適用される2号

死刑や無期、あるいは2年以上の刑にあたる罪によって刑事裁判にかけられている場合、旅券法13条2号が適用されパスポートが発給されないことがあります。

 

また、これらの罪を犯した疑いで逮捕状、勾引状、勾留状、鑑定留置状が発せられている場合も同様です。

 

これは刑事裁判中であったり、身柄の拘束が予定されている当事者が出国することにより、裁判や捜査に影響が出るのを防ぐためです。

仮釈放中や執行猶予期間中に適用される3号

禁錮以上の刑に処せられ、その執行が終わるか、あるいは執行を受けることがなくなるまでの間は、旅券法13条3号が適用されパスポートが発給されないことがあります。

 

また、パスポートの申請にあたって、仮釈放や刑の執行停止、執行猶予期間中であることを隠して申請書類に虚偽の記載をした場合、旅券法第23条1項1号の規定が適用されます。

 

その場合は、「5年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金または併科」に処せられることもあるため注意が必要です。

 

なお、旅券法13条3号の適用が想定されるのは禁固以上の前科があり、かつ以下のような状態にある場合です。

パスポートの不正使用で適用される4号

旅券法第23条違反による前科がある場合、旅券法13条4号が適用されパスポートが発給されないことがあります。

 

これは、たとえばパスポートの交付を受けるにあたって、虚偽の記載をして交付を受けたり、他人名義のパスポートを不正に使用した場合などにあたります。

公文書偽造罪などで適用される5号

パスポートあるいは渡航書を偽造したり、偽造されたパスポートおよび渡航書を行使し、刑に処されると旅券法13条5号が適用されパスポートが発給されないことがあります。

 

これは、刑法第155条の公文書偽造罪、同第158条の偽造公文書行使罪を犯したり、未遂によって前科がある場合です。

国援法の適用によって帰国すると適用される6号

「国の援助などを必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律(国援法)」が適用され、帰国したことがあると旅券法13条6号が適用されパスポートが発給されないことがあります。

 

「国援法」とは、海外に渡航した日本人が生活に困窮し、自己の負担によって帰国できなくなった際に、帰国費の貸しつけなどを受けられることを定めている法律です。

日本国の利益あるいは公安を害するおそれがあると認められると適用される7号

外務大臣があらかじめ法務大臣と協議のうえ、著しく、かつ直接的に日本国の利益や公安を害する行為をおこなうおそれがあるか、これに足りる相当の理由がある場合、旅券法13条7号が適用されパスポートが発給されないことがあります。

 

具体的にはテロ行為や国際的な麻薬取引などによる前科が想定されます。

ビザの発給における影響

2022年1月の時点でビザの取得が求められる国は下記の国々です。

ロシア

北朝鮮

アルジェリア

アンゴラ

ブルキナファソ

ブルンジ

カメルーン

チャド

中央アフリカ

コンゴ共和国

コンゴ民主共和国

コートジボアール

赤道ギニア

エリトリア

ガンビア

ガーナ

リビア

マリ

ニジェール

ナイジェリア

シエラレオーネ

南スーダン

イラク

シリア

サウジアラビア

イエメン

キューバ

ナウル

アフガニスタン

ブータン

トルクメニスタン

パキスタン

リベリア

 

入国基準は各国で異なるため、渡航先の国の大使館に確認をする必要があります。

前科があり、海外渡航を予定している場合は、ビザの要否などを個々のケースにおいて確認しましょう。

 

上記のように、ビザの取得が必要な国々がある一方で、日本国籍であれば基本的に90日以内の短期滞在については、ビザ不要で入国できる国も少なくありません。

これは、日本が海外からの信頼が厚いからです。

 

このため、こうした国々であれば、前科の有無によるビザ発給の可否において、海外渡航が制限されることはありません。

入国審査における影響

空港や港湾施設で受ける必要がある入国審査は、各国でその基準が異なります。

 

たとえば、アメリカやカナダ、オーストラリアの場合、薬物などの犯罪歴があると入国について厳しい姿勢がとられます。なかでもアメリカは、前科がある場合の入国制限が非常に厳格です。

 

また、近年では多くの国で入国を事前に審査する『電子渡航認証システム』が導入されています。

このシステムは、前科があると利用できません。

特に悪質な犯罪の場合、入国はきわめて難しいと考えたほうがよいでしょう。

 

さらに、前科についての質問がなされるのかは、各国の施策方針や時期によっても異なります。

確実に渡航先へ入国するためには、知識や経験を持つ旅行代理店や行政書士などに相談し、渡航前に現地事情などを把握しておく必要があります。

シンガポールは短期滞在ならビザが不要

日本国籍を有している場合、短期滞在であればビザが不要になる国は少なくありません。

 

そのひとつにシンガポールがあります。

シンガポールであれば観光、商用を目的とし、滞在期間が3カ月以内の渡航であれば、ビザは不要です。

ただし、前科がなくてもシンガポールの審査は厳しくなっている

短期滞在であれば、ビザは不要なシンガポールですが、空港では入国審査があります。

そのため、前科の有無にかかわらず、シンガポールの入国基準によって入国を拒否される可能性がある点には注意しなければなりません。

 

また、滞在が90日を超えて長期にわたる場合には、ビザ取得を求められる国々と同じように、渡航目的に応じたビザが必要となります。

さらに、シンガポールにおけるビザの取得は、近年厳格化される傾向にあります。

 

シンガポールでのビザ取得の厳格化の背景には、新型コロナウイルスの影響によるものがあります。

シンガポール経済の状態が悪化したことから、雇用に対する不安が高まり、シンガポール人の雇用を優先する方針をシンガポール政府が打ち出しています。

 

このため、渡航する外国人に対しては、入国に厳しい要件が課されます。

就労ビザの取得は前科がなくても難しい

多くの国々で「就労ビザは取得のハードルが高い」といわれています。

これはシンガポールも同様で、長期滞在のうち、就労ビザは前科がなくても取得が特に難しい代表的なビザとなっています。

シンガポールの就労ビザは8種類

現在、シンガポールでは、日本人に関わるビザが主に8種類あります。

これらには、それぞれ対象者や設要件が設定されています。

以下の表にて要件などをまとめていますので、ご覧ください。

ビザの種別

対象者

要件等

Employment Pass
(EP)

専門職・管理職・経営者

  • 最低月額固定給がS$5000以上であること

S Pass
(中技能熟練労働者)

中技能熟練労働者

  • 最低月額固定給がS$3300以上であること

Training Employment Pass
(TEP)

実務に関連した研修生

  • 最低月額固定給がS$3000以上であること

Personalised Employment Pass
(PEP)

Employment Pass保持者か高所得者あるいは外国人専門家

  • Employment Pass保持者は最低月額固定給がS$12000以上、その他はS$18000以上であること

Work Holiday Pass
(under Work Holiday Programme)

18才~25才までの学生

  • ワークホリデープログラムの規定による約6カ月の就労か休暇に限る

Entre Pass

シンガポールで起業を目指す起業家または革新技術を持つかあるいはベンチャー事業を起こそうとしている起業家

  • シンガポール公認のVCなどから資金提供を受けている、知的財産を保有している、大企業の上級職あるいは役員であるなど

Tech. Pass

大手および急成長を遂げたテクノロジー企業の創業者やリーダー、技術専門家

  • 個人単位で申請し、有効期間は初回発行から2年間

Overseas Networks & Expertise Pass
(通称ONE Pass)

芸術・文化・スポーツ・科学技術・研究・学問の分野において優れた業績を上げている者

  • 基本給と手当などの月給が合計S$30000以上であること

シンガポールにおける就労ビザの取得には政府の意図を汲むことが重要

上記の就労ビザの種類からも読み取れますが、近年のシンガポールでは外国人に専門的なスキルを求めています。

「シンガポール・コア」と呼ばれるスローガンのもと、外国人については専門的なスキルがある人材のみを厳選した上で、雇用する方針を打ち出しているからです。

 

また、人材募集や採用選考に関するルールが厳格で、外国人の採用の際には、シンガポール人も平等に採用選考しなければなりません。

そのため、企業が求人をする場合は『最低でも14日間、シンガポール人も対象とした求人広告を掲示すること』が義務づけられ、これに違反すると厳しい刑罰が課せられます。

 

こうした難易度の高い条件下で、就労ビザを取得し、シンガポールに入国するためには、審査をおこなうMOM(シンガポール人材開発省)の意図を汲まなくてはなりません。

就労ビザの取得には新制度の導入も予定されている

シンガポールでは、外国人への就労ビザの取得にあたり、2023年9月より新たなポイント制度を導入すると発表しています。

 

この制度は「COMPASS」と呼ばれ、大きく2つに分けた【基礎基準】と【ボーナス基準】、そしてその中の6つの基準で構成されています。

【基礎基準】
【ボーナス基準】

 

これらは各項目でポイントが設定され、合計40ポイント以上を獲得すると、就労ビザのうち『Employment Pass』が取得できます。

 

こうした制度の導入により、今後は従来であれば就労ビザの審査を通過していたケースでも通過できなくなったり、反対に、通過できなかったケースが通過しやすくなるといった変化も予想されます。

まとめ

前科がある場合でも、条件次第ではパスポートの発給を受けることができ、海外渡航が可能です。

 

また、渡航先によっては短期滞在の場合、シンガポールのようにビザが不要な国も少なくありません。

 

そこで、状況に応じてパスポート発給の可否やビザ取得の必要性、各国の入国審査の詳細などを確認しながら海外渡航を検討してみるとよいでしょう。

 この記事の監修者

さむらい行政書士法人 代表 / 小島 健太郎

さむらい行政書士法人
公式サイト https://samurai-law.com

代表行政書士

小島 健太郎(こじま けんたろう)

 

プロフィール

2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立

専門分野

外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応

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