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シンガポールに海外出張に行く場合のビザについて|新制度も解説
出張でシンガポールに行く方にとって、就労ビザが必要か否か、必要とすればどの種類のビザか、またビザを取得するためにどの程度の労力を要するかなど、ビザについて気になることが色々あると思います。
本記事では、シンガポールに海外出張に行く場合に必要となるビザについて、新制度と合わせて解説します。
なお、シンガポールドルの為替レートについては2023年末の状況に照らして1S$=108円として換算・表記しています。
シンガポールに海外出張に行く場合の就労ビザについて
シンガポールへ海外出張に行く場合、予定している活動が現地での「就労」にあたる行為を含まない商用目的のものである限り、原則30日間はビザなしで渡航・活動できます。
本章では、シンガポールに海外出張に行く場合に就労ビザが必要か否か、就労ビザなしで活動できる条件などを解説します。
日本国籍だと就労ビザは不要
日本国籍を持つ方は、下記の条件を満たす活動を行う目的であれば、観光ビザにあたるShort-Term Visit Pass(STVP)で30日まで滞在できます。
条件
海外出張の場合、STVPで滞在が認められる条件は下記のとおりです。
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滞在可能日数 |
30日 |
|---|---|
|
パスポートの 必要残存期間 |
シンガポール入国時点で6か月以上 |
|
認められる活動 |
・社内会議への出席 ・ビジネスパートナーとの会議への出席 ・研修旅行及び視察旅行 ・研修、ワークショップ、セミナー、会議、展示会 (参加者としての参加のみ可能) |
滞在する場合に必要なもの
ビザなしでの滞在が認められた場合、以下のものが必要となります。
- 出国用の予約済み航空券
- 滞在期間をカバーする資金
- (必要な場合)次の訪問予定国のビザ
ビザが必要な国籍
日本から出張でシンガポールに滞在する場合でも、以下の国籍を持つ方は就労ビザが必要です。
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アジア(インド以東) |
中国 香港 マカオ 北朝鮮 バングラデシュ インド |
|---|---|
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アジア(インド以西) |
アフガニスタン パキスタン イエメン イラン イラク シリア レバノン ヨルダン |
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アフリカ |
アルジェリア エジプト リビア マリ モロッコ ナイジェリア ソマリア 南スーダン スーダン チュニジア |
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旧ソ連(CIS) |
アルメニア アゼルバイジャン ベラルーシ ジョージア カザフスタン キルギスタン タジキスタン トルクメニスタン ウクライナ ウズベキスタン ロシア |
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欧州 |
コソボ モルドバ |
就労ビザが必要なケース
海外出張であっても、滞在期間や予定する活動内容によっては就労ビザが必要な場合があります。
本章ではシンガポールへの海外出張で就労ビザが必要なケースを解説します。
滞在期間が長い場合
滞在期間が30日を超える場合は、原則として就労ビザが必要です。
STVPは1回に限り、延長申請が認められます。
滞在可能期間は30日まで
STVPで滞在可能な期間は通常30日以内です。
この30日間については、予定する活動がSTVPで認められた範囲である限り無条件に滞在が許可され、短縮されることはありません。
滞在期間の延長は可能
滞在期間の延長を希望する場合は、移民局(The Immigration & Checkpoints Auhority/ICA)に対して延長申請を行うことによって、最大で30日の追加滞在が認められます。
延長を申請する場合は、STVPの有効期限が切れる2営業日前までにICAの申請サイトで手続きしてください。
無給であっても労働許可証(work pass)が必要
STVPで認められる滞在期間を超えて滞在する場合、シンガポール人と結婚するなどの例外的な場合を除き、原則として就労ビザ(まとめてwork passと呼ばれています)が必要です。
ボランティア活動など、労務を無償で提供する場合であっても、Work Permit(WP)と呼ばれる就労ビザを取得する必要があります。
仕事上のポジションや収入などの条件面で、後述するEPやSパスの取得ができない場合には、STVPの有効期間中にWPの申請を行ってください。
商用活動の範囲に収まらない場合
滞在期間が30日以内であっても、滞在中に予定している活動が、STVPで認められた商用活動の範囲に収まらず、シンガポール国内の法人との間で労務提供契約を締結して業務を行う場合には、就労ビザが必要となります。
ただし、シンガポール人材開発省(MOM)が定めた特定の活動については、シンガポール到着時にMOMに就労ビザ免除申請を行うことにより、年間で合計90日まで就労ビザなしでの滞在が認められます。
就労ビザ免除申請が認められる活動の例
就労ビザの免除を申請できる活動の例として以下のものが挙げられます。
①イベントの開催・実施に関わる活動
- ロケーション撮影及びファッションショー
- 演劇や音楽などの公演
- セミナーや会議の開催
- 政府組織などが支援するスポーツ関連の活動
- 展示会への出展者としての参加
②専門知識を提供する活動
- 仲裁または調停業務
- シンガポール国際商事裁判所における司法業務
- 新しいプラント及び機械類の設置・操業・整備
③その他
- カジノでのジャンケット活動
(世界各国の富裕層をカジノへ招待し、航空券・ホテル・滞在中の移動・食事等の世話をすること) - 報道活動
- ツアーコンダクター
禁止されている活動
以下のような活動を行うことは禁止されています。
- 商品またはサービスの販売または販売促進を主な目的とする活動
- 宗教全般に関連する活動
- 人種やコミュニティの問題に関連する活動
- 政治的目的に関連する活動
なお、就労ビザ免除申請が認められた場合でも、滞在1回あたりの滞在可能日数(原則30日)を延長することはできません。
何度も行き来をしている場合
1回あたりの滞在日数がSTVPの滞在可能日数以内であっても、STVPで頻繁にシンガポールを行き来して通算での滞在日数が長くなっている場合は、活動の目的を疑われて入国拒否される可能性があります。
一度入国を拒否されると、STVPでの再渡航だけでなく就労ビザの申請も不許可になるおそれがあります。
シンガポールへの出張の頻度が高い方は、商用目的を証明するレターを準備するなどの対応を行うことをおすすめします。
シンガポールの就労ビザの種類
シンガポールの就労ビザは、以下の6種類があります。
- EP(専門職・管理職・経営層人材向け就労ビザ)
- Sパス (中技能熟練労働者向け就労ビザ)
- Personalized Employment Pass (個人雇用許可証[PEP]:高所得者向け就労ビザ)
- Entre Pass(投資家・起業家向け就労ビザ)
- Overseas Networks & Expertise Pass (ONEパス:各方面の世界的トップ人材対象ビザ)
- Work Pass(ワークパス:半熟練労働者対象ビザ)
日本人の就労目的の渡航者の場合、認められるビザは①EPと②Sパス及び④Entre Passの3種類が大半を占めています。
本章では、①②及び④について解説します。
一般就労ビザ|エンプロイメント・パスとSパス
就労ビザの中で、外国人全体で取得者が多いのはエンプロイメント・パス(EP)とSパスです。
Employment Pass(EP)
主にマネジメントレベルや専門職の外国人を対象とする就労ビザです。
2023年9月より、EP申請にあたっては、従前の最低適格給与の要件に加えて、事前評価フレームワーク「COMPASS」のスコア40点以上取得していることが必要となりました。
詳細は最終章で説明しますが、COMPASSのスコアは個人属性項目(給与水準・スキル等)及び企業属性項目(従業員の国籍の多様性やローカル人材に対するサポート等)の4つの基準、及び個人属性・企業属性それぞれ1項目ずつのボーナス項目で構成されています。
各項目について、一定の基準が設定され、
- 「期待を上回る」と評価されれば20点
- 「期待に見合う」と評価されれば10点
- 「期待に見合わない」と評価されれば0点
が付与される仕組みです。
Sパス
Sパスは、マネジメントレベルに届かないレベルの外国人中堅熟練労働者を対象とする就労ビザです。
Sパスの申請要件のうち、最低適格給与についてはS$3,150(34万2,000円)と、EPよりもハードルが低くなっています。
一方で、Sパスはローカル従業員(シンガポール人または同国永住権取得者[PR])が一定割合いる企業を前提としており、企業の中でSパスの発給を受けられる外国人の上限割合(クオータ)が決められています。
現在では、建設・製造・造船・加工関連で企業全体の雇用人数※の18%まで、サービス業では10%となっています。
※シンガポール人・PR保持者・Sパス保持者・Work Permit保持者の合計。EPなどの他種就労ビザ保持者はカウントされない。
インターンとして滞在する場合
インターン等の研修プログラムのトレーニーとして、シンガポールに一定期間滞在する場合は、研修就労ビザ(Training Employment Pass)というビザを取得できます。
このビザは1回限りの短期研修用の就労ビザなので、研修後にシンガポールでの業務に就く場合には、EP等を申請する必要があります。
EP・Sパス・研修就労ビザの概要をまとめると以下の表のようになります。
|
ビザ名称 |
EP |
Sパス |
研修就労ビザ |
|---|---|---|---|
|
対象者 |
専門職・管理職・経営層人材 |
中技能熟練労働者 |
企業の研修プログラムのトレーニー |
|
最低固定給与月額 |
S$5,000(54万円)
※1 金融セクターはS$5,500(59万4,000円) ※2より経験豊富な40代半ば以降の候補者についてはS$10,500(113万4,000円) |
S$3,150(34万2,000円)
※1 金融セクターはS$3,650(39万4,200円) ※2 いずれも2023年9月1日以降の基準 |
S$3,000(32万4,000円) |
|
ビザ有効期間 |
初回:最大2年間 更新時:最大3年間 (更新可) |
最大2年間 (更新可) |
3か月 (延長・更新・再申請不可) |
|
配偶者等の扶養家族ビザ申請の可否 |
可能
ただしEP取得者の固定給与月額S$6,000(64万8,000円)以上 |
可能
ただしSパス取得者の固定給与月額S$6,000(64万8,000円)以上 |
不可 |
|
発給条件等 |
雇用者が申請
雇用者が変わった場合は転職先の雇用者による新規申請が必要 |
候補者の勤務先のローカル従業員の15%
(サービス業は10%)までの発給制限あり |
スポンサーとなるシンガポール企業が申請
(会計事務所・代行会社への依頼不可) |
投資家・起業家向けビザ
投資家・起業家向けビザEntre Passは、大企業で一定年数の役員または上級管理職の経験があるなど、一定の条件を満たした投資家・起業家に対して発給される就労ビザです。
Entre Passは
- Entrepreneur(起業家)
- Innovator(革新家)
- Investor(投資家)
の3つのサブカテゴリに分かれています。
各カテゴリの発給条件・Entre Passの有効期間・扶養家族のビザ申請の可否などの概要は下記の通りです。
発給条件
Entre Pass以下の条件を満たすことが必要です。
1. Entrepreneur(起業家)
- シンガポール政府認定ベンチャーキャピタル等から資金調達額S$100,000(1,080万円)以上
- シンガポール政府系のインキュベーターの対象となっているか、大規模な事業の立ち上げ経験と人脈を持っている
2. Innovator(革新家)
- 事業に関連して世界IP協会登録済み知的財産を保有している
- 事業に関連して一定の研究機関と共同研究をしているか、非常に優れた技術的専門性を有している
3. Investor(投資家)
- 大企業の上級管理職または役員の経験が8年以上ある
- 大規模な成長を見込める事業への投資経験があり、シンガポール国内で多額の投資を予定している
ビザ有効期間
ビザ有効期間は初回1年、更新1回目1年、更新2回目以降は2年です。
配偶者等の扶養家族のビザ申請の可否
扶養家族のビザ申請は可能です。
ただし、配偶者・子供・両親のカテゴリで最低事業支出基準S$100,000(1,080万円)以上、及びローカル採用人数基準を満たすことが必要です。
2023年9月より厳格化される新制度COMPASSとは
日本人が取得する就労ビザの中でも割合が多いEPに対しては、これまで審査基準の透明性が問題とされてきました。
この問題に対応するため、シンガポール人材省(Ministry of Manpower:MOM)は、2023年9月から「COMPASS」と呼ばれる得点制度を実施しています。
本章では、この新制度COMPASSはどのような制度か、COMPASS導入によってEPの発給条件等がどのように変わることが予想されるかなどを解説します。
概要
COMPASSは「Complementarity Assessment Framework」(相補的な評価を行う枠組み)の略語で、新規EPビザ申請については2023年9月、更新の場合は2024年9月1日から適用されます。
この制度は、個人属性項目(給与水準・スキル等)及び企業属性項目(従業員の国籍の多様性やローカル人材に対するサポート等)で構成されています。
候補者は、COMPASS項目の合計が40点を超えることが求められます。
なお、候補者が以下のいずれかに該当する場合は、COMPASSの審査対象から除外されます。
- 候補者の固定給与月額がS$22,500(243万円)以上の場合
- 企業内転勤(Inter Company Transfer:ICT)による異動の場合
- 1か月未満の短期雇用の場合
新しく導入される点制度
COMPASSの項目は、以下の6つがあります。
- 個人属性C1・C2(及びボーナス項目C5)
- 企業属性C3・C4(及びボーナス項目C6)
個人属性項目
個人属性項目は給与・スキル及びスキルボーナスの3つです。
|
C1 給与 (20点満点) |
まず、前提としてCOMPASS導入前から設定されている最低給与基準を満たしている必要があります。 |
|---|---|
|
C2 スキル (20点満点) |
この項目では、候補者の卒業資格に基づいて点が算出されます。
① QS World University Rankingsに基づくトップ100大学、またはその他のアジアで高評価を得ている大学 ② シンガポール国内の大学 ③ 特定の分野で高い評価を得ている機関
これらの機関は
に分かれています。
ちなみに、日本国内の大学で①のグループAに分類されたのは東京大学・京都大学・大阪大学・東北大学・東京工業大学の5校です。 |
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C5 スキルボーナス (20点満点) |
※シンガポール国内で不足しているスキルを保持している場合 |
企業属性項目
企業属性項目は多様性・ローカル人材割合・優先的な経済施策への関与の3項目です。
|
C3 多様性 (20点満点) |
候補者の国籍が、スポンサーとなる企業の従業員(固定月額給与S$3,000[32万4,000円以上)の中で
となります。 |
|---|---|
|
C4 ローカル人材の割合 (20点満点) |
同じ業界のすべての企業の中で、スポンサー企業に在籍するシンガポール人従業員 (固定月額給与S$3,000以上)の割合を順位づけした場合に、
となります。 |
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C6 優先的な経済施策への関与 (10点満点) |
※政府機関と共同で推進するプロジェクトに関与していること、または国際組織を目指している場合 |
付与される点数
C1~C6の各項目に対しては、以下のように3段階評価で点が付与されます。
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点数 |
評価 |
|---|---|
|
20 |
期待を上回る |
|
10 |
期待に見合う |
|
0 |
期待に見合わない |
すべての項目で満点の場合は110点となります。
また、C1~C4の4項目で「期待に見合う」評価を受けていれば、合計40点となりEPビザ取得水準に達することになります。
今後どのように変わるのか?
MOMは、COMPASS制度導入によってEP取得が難しくなるわけではなく、従前の基準を満たしていれば、ほとんどの場合は取得が可能であるという見解を示しています。
しかし、明確かつ詳細な基準が設けられたことにより、企業はこれらに対応できるよう、従業員の現地化をはじめとする様々な対策をとることが求められます。
従って、事実上、新規のEPビザ取得は難しくなっているといえます。
まとめ
シンガポール就労ビザの取得はCOMPASS制度の導入により難化が予想されます。また、海外出張の場合に就労ビザが必要か否かの判断が容易でないケースも多くあります。
確実にビザが取得できるよう、シンガポールへの出張にあたっては、ビザ申請を専門とする行政書士にご相談ください。
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応







