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フィリピン人が日本で興行ビザを取得する方法を知りたい

フィリピンは得意とする音楽や踊りを披露するため、1960年代から興行ビザを取得して来日するエンターテイナーが多い国です。また国としても海外雇用を有望な産業と位置づけ、海外雇用管理局(POEA)のような機関を設けてこれを推進しています。

 

このため、日本国内においてもフィリピン人は在留する外国人の1割強にあたり、中国、韓国、ベトナムに次いで多くなっています。

 

そこで、こうした人材をよりスムーズに受け入れるために、日本に招へいする際には、興行ビザを取得するための正しい知識を身に着けておく必要があります。

興行ビザとは?

演劇や演芸、演奏、スポーツといった興行にかかわる活動、あるいはその他のさまざまな芸能活動をおこなうためのビザを興行ビザといいます。

 

この興行ビザは就労ビザのひとつで、特に外国人のモデルや歌手、俳優、ダンサー、音楽家、格闘家、タレント、プロスポーツ選手などがコンサートやTV出演、舞台出演などを目的に取得することから、エンターテイメントビザあるいは芸能人ビザ、タレントビザ、芸能ビザなどとも呼ばれることがあります。

 

また、興行ビザは過去に取得した外国人による不法就労や不法残留が多発し問題となったことから、平成18年6月1日の基準省令改正により基準が厳格化され、現在では審査が非常に厳しいのも特徴です。

 

このため興行ビザは、さまざまなビザの中でも申請の条件や必要書類が煩雑で、申請が難しいビザでもあります。

興行ビザの分類と取得要件

まず興行ビザの取得にあたっては外国人が日本国内においてどのような活動をおこなうかによって基準1号から4号に分類されていることを知っておく必要があります。

 

これはフィリピン人を招へいする場合にも同様で、それぞれ業務範囲や取得要件がそれぞれ異なります。

1号

演劇や演芸、歌謡、舞踏、または演奏の活動をおこなおうとする場合で、報酬は1日50万円未満、かつ客席定員が100人未満の施設での興行の場合に取得が必要となる興行ビザです。

 

このため、比較的小規模な施設でおこなわれるフィリピン人の演奏や歌唱、演劇、ダンスなどがこれにあたります。具体的にはレストランやショーパブ、スナックといった場所でのライブやショーパフォーマンスなどの際に必要となるビザです。

2号

1号同様、演劇や演芸、歌謡、舞踏、または演奏の活動をおこなおうとする場合でも、報酬は1日50万円(団体の場合は総額)以上、敷地面積10万㎡以上の施設で、かつ15日を超えない期間におこなわれる興行の場合に取得が必要となる興行ビザです。

 

ただし、その要件は客席において飲食物を有償で提供せず、客の接待を伴わない施設での興行に限られます。

こうした点から、フィリピン人による営利を目的としない自治体や学校などの機関が主催する興行や、客席が100席以上の施設でのライブやコンサート、演劇が該当します。

3号

演劇や演芸、歌謡、舞踏、または演奏以外の活動をおこなう場合に取得が必要となる興行ビザです。主にフィリピン人を招へいするプロスポーツ大会やサーカス、ファッションショーなどで必要となります。

4号

観客や聴衆を伴わない芸能活動において取得が求められる興行ビザです。フィリピン人を起用したテレビなどの番組や映画の撮影やファッション誌などの写真撮影、あるいは映画や楽曲、書籍などのプロモーション活動といったものが含まれます。

フィリピン人を招へいする際の流れ

では、次に興行ビザを取得しフィリピン人を招へいする場合、その流れはどのようなものになるのでしょうか。それぞれみていきます。

必要書類、在留資格認定証明書交付申請書の作成

フィリピン人を招へいする際にはまず、どの分類で申請するかを決め、法務省出入国在留管理庁(旧各地方出入国在留管理局)から在留資格認定証明書を発行してもらう必要があります。

 

これは海外の日本領事館でビザ発行をスムーズにするための事前審査に必要となるもので、上陸許可基準に適合していると認められた場合に発行される書類です。

 

このため、招へい元となる主催者や、契約機関となる会社の社員が作成し、その所在地を管轄する地方の出入国在留管理局に提出しなければなりません。

 

このほかにも、フィリピン人を招へいする際には各分類によってさまざまな書類が必要となりますが、こちらは別に詳しく説明します。

在留資格認定証明書交付申請書を海外へ送付

発行された在留資格認定証明書は招へい元に郵送によって送付されるので、次にこれを招へいするフィリピン人に対し、海外宅急便などで送付します。

 

このとき在留資格認定証明書は現地の日本大使館あるいは日本領事館でビザの申請の際に必要となる書類のひとつであるため、スキャンやコピーではなく、必ず原本を送付します。

 

ただし、来日の際の空港でのトラブルや紛失といった不測の事態に備え、招へい元でもコピーを控えておくとよいでしょう。

ビザの申請

在留資格認定証明書のほか、各種必要書類が揃ったら、招へいするフィリピン人本人、あるいは委任状を持つ代理人が日本大使館あるいは日本領事館でビザを申請します。

 

申請内容に問題がなければ「興行」と記載されたシールが招へいするフィリピン人本人のパスポートに貼られ、この時点でビザ取得に関する手続きが完了します。

来日

無事ビザが発行されると、「興行」の記載のあるシールが貼られたパスポートを携帯していれば招へいするフィリピン人は来日が可能となります。

 

ただし、麻薬違反歴や犯罪歴といった上陸拒否事由に該当すると、空港で上陸が拒否される可能性もあるため注意しなければなりません。

興行ビザの申請に必要な書類

フィリピン人を招へいする際には興行ビザ申請のための書類として在留資格認定証明書以外にもさまざまな書類が必要となります。また各種書類は共通のものもありますが、各分類によって異なるものもあります。

申請人に関する書類

まず申請人に関して、興行ビザ申請に必要となる書類ですが、各分類共通のものとしては、以下のようなものがあります。またここで申請人とは、興行ビザで来日するフィリピン人本人をいいます。

 

・招へいするフィリピン人本人の顔写真1葉

サイズは縦4㎝×横3㎝で、かつ正面から撮影された無帽、無背景で鮮明なもの。また撮影は申請前3ヶ月以内に限る。

・返信用封筒

簡易書留用で、404円分の切手を貼付し返信先住所が明記されたもの。

・申請人の経歴書、および活動に係る経歴を証する文書

このほか各分類それぞれで必要となる書類は以下の通りです。

 

1号

・フィリピン人の日本における具体的な活動の内容や期間、地位のほか、報酬を証する文書
(このうち、報酬を証する文書については報酬の支払時期や支払い方法が明示されていなければなりません。また、報酬から控除される費用や報酬受領後に支払うべき費用が予定されているのであれば、その額と算定根拠を明示した文書の提出も必要となります。)

 

2号

・興行に係る契約書の写し(契約機関や出演施設を運営する機関との間で交わされた出演に関する契約書などです。)
・フィリピン人の日本における具体的な活動の内容やその期間、地位のほか報酬を証した文書(雇用契約書あるいは出演承諾書などの写しなどです。)
・申請人となるフィリピン人が日本でおこなう具体的な活動の内容や期間、またその地位および報酬を証する文書
・滞在日程表あるいは興行日程表
・興行の内容を告知する広告のほか、チラシやホームページの写しなど

 

3号

・滞在日程表あるいは興行日程表
・興行の内容を告知する広告のほか、チラシやホームページの写しなど
・雇用契約書あるいは出演承諾書など

 

4号

・フィリピン人の日本における具体的な活動の内容やその期間、地位のほか報酬を証した文書
・雇用契約書あるいは出演承諾書など
・滞在日程表あるいは興行日程表
・興行の内容を告知する広告のほか、チラシやホームページの写しなど

招聘機関・契約機関に関する書類

つづいて、招聘機関・契約機関に関してはビザ申請の際に以下のような書類が各分類共通で必要となります。

・登記事項証明書
・直近の決算書の写し(損益計算書および貸借対照表などです。

そして各分類それぞれで必要となる書類は以下の通りです。

 

1号

・契約機関の概要を明らかにできる資料
・契約機関の経営者あるいは管理者のほか常勤の職員の名簿(このうち常勤の職員は5名以上雇用していることが必要となります。)
・契約機関の経営者あるいは管理者が興行に係る業務を通算で3年以上経験していることがわかる資料
・過去3年間で契約機関が締結した興行契約に基づき、興行ビザで在留するフィリピン人に対して支払義務を負う報酬の全額を支払っていることをがわかる以下いずれかの文書

1.登記事項証明書
2.直近の決算書の写し(損益計算書および貸借対照表などです。)
3.運営機関の概要がわかる資料
4.運営機関の経営者、出演施設に係る業務に従事している常勤の職員の名簿(5名以上雇用していることが必要となります。)
5.運営機関の経営者と常勤の職員が入管法第7条第1項第2号の基準を定めた省令の「興行」の項で下欄第1号ハ(6)に掲げる者のいずれにも該当していないことを申立てる文書

 

2号

・契約機関の概要を明らかにできる資料
・従業員名簿

 

3号

・従業員名簿
・請負契約書の写し(招聘機関が興行を請け負っている場合に必要となります。)

 

4号

・従業員名簿
・パンフレットやホームページの写しなどの案内書

施設に関する書類

最後に施設に関してはビザ申請の際に以下のような書類が1号から3号で必要となります。

・営業許可書の写し
・間取りなどが記載されている施設の図面
・客席や控室、外観など施設の写真

さらに各分類それぞれで必要となる書類は以下の通りとなります。

 

1号

・出演に関する契約書(契約機関と出演施設を運営する機関との間で出演に関して交わされたものです。)
・契約機関、出演施設を運営する機関との間で交わされた出演に関する契約書など

1.登記事項証明書
2.直近の決算書の写し(損益計算書および貸借対照表などです。)
3.運営機関の概要がわかる資料
4.運営機関の経営者、出演施設に係る業務に従事している常勤の職員の名簿(5名以上雇用していることが必要となります。)
5.運営機関の経営者と常勤の職員が入管法第7条第1項第2号の基準を定めた省令の「興行」の項で下欄第1号ハ(6)に掲げる者のいずれにも該当していないことを申立てる文書

 

2号

上記の各分類共通の書類のみ

 

3号

・従業員名簿
・登記事項証明書
・直近の決算書の写し(損益計算書および貸借対照表などです。)

結核非発病証明書を提出する必要がある場合も

フィリピン人を招へいする際には、フィリピンが結核スクリーニングの対象国となっていることにも注意が必要です。これはフィリピンにおける結核患者数が多いことが要因で、招へいする外国人がフィリピン国籍で、中長期在留者として来日する場合には日本国政府が指定した医療機関を受診しなければなりません。そのうえで問診、身体検査、胸部レントゲン検査を受け、結核の疑いがないことを証明する、結核非発病証明書の提出を在留資格認定証明書交付申請の際に求められます。

 

また万が一結核の疑いがあると診断された場合には、喀痰検査のうえ、結核の発病がないことを確認するか、発病しているのであれば適切な治療ののち、再度医療機関を受診して、結核非発病証明書の交付を改めて受けなければなりません。

フィリピン人を呼ぶ場合のポイント

フィリピン人の招へいでは特に結核非発病証明書を提出することも念頭に置いておかなければならないことは上記の通りですが、さらにこのほかにも押さえておくべきポイントがあります。

ホステスとしての招へいは不可

かつてフィリピン人をはじめとした海外からのエンターテイナーは歌手やダンサーとして興行ビザで来日するものの、必ずしもプロフッショナルであることを期待されたわけではなく、飲食店における接待を「興行」としてビザを申請することが横行していました。

 

このため、こうした申請を抑止する目的から、特に基準1号では、「1日50万円未満の報酬でおこなわれる興行」や「客席定員100人未満の施設」といったように、その要件を飲食店で働くホステスを主として想定し、人身売買や不法就労、金銭的な搾取を防止するために非常に厳格な基準を設けています。このため現在ではホステスとして興行ビザでフィリピン人を招へいすることは非常に難しくなっているため注意が必要です。

プロであることが重要

興行ビザのうち基準1号の取扱いは実際にはほとんどありません。これは上記のようにホステスとしての招へいを抑止する理由から、他の分類よりも必要書類が多く、より厳格な基準が設けられているからです。

 

また、基準3号についても興行ビザを取得しようとするのがスポーツ選手であれば、単に契約上プロ契約をしているだけにとどまらず、在留資格が認められるのは、プロ野球やJリーグといったプロによる興行である場合に限られます。

 

つまり、興行ビザの取得は、分類によって異なるものの、プロフェッショナルであることも非常に重要な要素のひとつといえます。

日本で活動を行う施設の契約書、図面、施設の写真が必要

上記興行ビザ申請に必要な書類では、施設に関するものとして、間取りなどが記載されている施設の図面、客席や控室、外観など施設の写真も必要です。

 

また、興行ビザの基準省令によって、たとえば基準1号の施設要件では「13㎡以上の舞台」「9㎡以上の出演者用の控室」といったようにその基準も定められています。しかしながら基準2号の適用が可能であればこうした要件は求められないなど分類によっても違いがあります。

 

一方、無料の商品購入者向けイベントや演奏を伴わないファンミーティングなどであれば基準4号を適用することでどのような場所でもおこなうことができると考えがちですが、フィリピン人がプロであることが前提の場合、場所の要件を満たさなければならないことがあります。

 

このほかにも、飲食店での活動はたとえ飲食店営業をしていなくても、イベント開催は難しなど、興行ビザは他の要素が関係する場合には場所の選定が難しくなるため、判断が微妙なケースでは申請に必要のない分類であっても、開催場所の図面やイベントの詳細などを持参し、入管に事前相談するのがベターです。

日本で初めて活動する場合は経歴や活動内容の証明を提出する必要がある

興行ビザの申請では、特に招へいするフィリピン人が初めて来日する場合、日本でどのような活動をおこなうのかも重要です。これは上記のように必要な書類が申請者の経歴や活動内容によって審査内容や審査基準が全く異なり、興行ビザ取得の条件のどれに当てはまるかで必要書類の内容も大きく変わるからです。

 

また、これまで実績がないケースでは上申書や陳述書といった経歴や活動内容を証明する書類の準備も必要になります。

興行ビザの在留期間

最後に興行ビザにおけるフィリピン人の在留期間についても触れておきましょう。在留期間とは日本に滞在できる期間のことをいいますが、興行ビザでは15日、3ヶ月、6ヶ月、1年、3年となっています。

 

ただしこの期間は、実際に申請書に記入された「就労予定期間」や変更・更新の際の「希望する在留期間」あるいは日本滞在時のスケジュールのほか、招聘機関・契約機関の規模や安定性などから出入国在留管理局による総合的な審査で決定されます。このため、日本における興行活動が長く、実績があるほどその期間が長くなる傾向にあるものの、必ずしも希望通りの在留が認められるわけではありません。

 

また、在留期間が終了する前には日本から出国しなくてはならず、決定された期間を超えて日本に滞在する場合には、在留期間を更新(延長)する必要があります。

 

このほかにも、興行ビザ申請が許可されたのち、すぐに来日しない場合には興行ビザが取り消される可能性もある点にも注意が必要です。

まとめ

興行ビザでホステスとしてフィリピン人を招へいしていただけでなく、ごく最近まで、小規模なイベントなどでは、短期滞在としてノービザで来日を手配していたことも少なくありませんでした。しかしながら現在では法令順守の観点から、演劇や演芸、演奏、スポーツなどでフィリピン人を招へいする際には興行ビザの取得は必須となっており、場合によってはフィリピン人側から拒否されることもあります。

 

このため、たとえ小規模な興行や芸能活動をおこなう場合であっても、しっかりと興行ビザに必要な要件を確認したうえで、入念に書類や資料を作成し、フィリピン人を招へいすることが大切です。

 この記事の監修者

さむらい行政書士法人 代表 / 小島 健太郎

さむらい行政書士法人
公式サイト https://samurai-law.com

代表行政書士

小島 健太郎(こじま けんたろう)

 

プロフィール

2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立

専門分野

外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応

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