日本における就職活動や起業準備に活用できる未来創造人材制度(J-Find)とは?
AIをはじめとしたデジタル化の急速な進展や地球温暖化に対する脱炭素化の推進などにより、従来の働き方や産業構造は大きく変わりつつあります。そのため、多くの企業が高度な知識や技術を持った優秀な人材確保に動いています。
そこで、海外からの優秀な人材の確保で課題となるのが、入国審査や在留資格です。
日本では、少子化高齢化や優秀な人材の海外流出を踏まえ、「未来人材ビジョン」を発表し、「教育未来創造会議」によって留学生を含む高度外国人材の受け入れの具体策がまとめられました。
これを受け、2023年4月から新たに創設されたのが『未来創造人材制度(J-Find)』です。
未来創造人材制度(J-Find)について
未来創造人材制度(J-Find)とは、対象となる大学を卒業した外国人が日本において就職活動や起業準備にかかわる活動を行える制度です。
では、具体的にどのような制度なのでしょうか?
『未来創造人材制度(J-Find)』とは
未来創造人材制度(J-Find)とは、優秀な海外大学などを卒業した方が、日本で「就職活動」または「起業準備活動」を行う場合、在留資格「特定活動」(未来創造人材)を付与され、最長2年間の在留が可能となる資格です。
未来創造人材制度(J-Find)は、優秀な外国人の就職活動や起業準備を容易にすることが目的の制度です。
日本で『未来創造人材制度(J-Find)』ができた背景
実は、すでに東南アジアや欧州などの諸外国では「優秀な外国人を自国に集めよう」といった受け入れ制度が設けられています。
一方、日本では、就職活動や起業準備をおこなおうとしても90日間の「短期滞在」の在留資格しか付与されず、外国人がなかなか参入できない状態でした。
そこで、今回創設された『未来創造人材制度(J-Find)』ではこれらの問題点を改め、在留資格「特定活動」(未来創造人材)を付与することで、能力のある外国人が日本企業を見極めた上で定着する環境の構築を目指すようになったのです。
なお、在留資格「特定活動」(未来創造人材)での在留期間は最長2年間となり、1年あるいは6カ月ごとの更新が必要です。
未来創造人材制度(J-Find)の要件
では、『未来創造人材制度(J-Find)』に選ばれるためには、以下のすべての要件を満たさなければなりません。
未来創造人材制度(J-Find)の要件
未来創造人材制度(J-Find)の要件は3つです。
- ・1.3つの世界大学ランキング中、2つ以上で100位以内にランクインしている大学を卒業、またはその大学の大学院の課程を修了して学位又は専門職学位を授与されている
- ・2.卒業から5年以内
- ・3.滞在当初の生計維持費20万円の所持(申請時点において日本円に換算した20万円以上の預貯金)
これらの要件すべてを満たす必要があります。
ただし、
- ・年齢制限はなし
※複数の大学でMBA(経営学修士)などを取得することも想定されるため
- ・「専門職学位」とは、昭和28年文部省令第9号の学位規則第5条の2に規定するもので、またはこれに相当するもの、または外国で授与された学位も含む
対象の大学
要件の1つ目にある「3つの世界大学ランキング中、2つ以上で100位以内にランクインしている大学」の対象校は以下になります。
- ・1.QS・ワールド・ユニバーシテイ・ランキングス(クアクアレリ・シモンズ社)
- ・2.THE ワールド・ユニバーシティ・ランキングス(タイムズ社)
- ・3.アカデミック・ランキング・オブ・ワールド・ユニバーシテイズ(シャンハイ・ランキング・コンサルタンシー)
上記に記載された大学を卒業あるいは大学院の課程を修了し、学位または専門職学位を授与されていることが必要とされています。
活動について
未来創造人材制度(J-Find)によって在留資格「特定活動」が許可され、具体的に可能になる活動は次のようなものです。
- ・1.就職活動
- ・2.起業準備活動
- ・3.上記の活動をおこなうために必要となる資金を補うことを目的とした就労
なお、在留期間は最長2年間となり、1年あるいは6カ月ごとの更新が必要な在留資格「特定活動」(未来創造人材)ですが、あくまで3つの活動の累計となります。
特定活動の継続就職活動や、卒業後の起業活動、また起業活動促進事業や特区創業活動促進事業といった類似の制度と併せて、累計2年を超えない範囲でなければなりません。
家族の滞在について
『未来創造人材』と認められた場合、その配偶者や子については、在留資格「未来創造人材の配偶者等」が付与され、家族で日本に滞在できるようになります。
これは、未来創造人材制度(J-Find)が申請者のキャリア形成のみではなく、家族との生活に重点を置く文化を持つ国も多いことに配慮した制度設計がなされているからです。
特定活動資格との違いは?
大きな違いとして、大学などを卒業した後の日本での就職活動などにおいて、日本に残れる年数が特定活動であれば1年間のところ、未来創造人材制度(J-Find)であれば、2年間になることです。
「特定活動資格」とは、日本の大学・専門学校を卒業した留学生が、在学中に就職先が見つからない場合に、就職活動のための「特定活動」に変更することで、日本に残ったまま1年間は就職活動できるのです。
未来創造人材制度(J-Find)は、ここからさらにもう1年間の合計2年間は就職活動や起業活動ができる点がより有利となります。
高学歴版ワーキングホリデー制度のようなもの
従来から、「ワーキングホリデー制度」といった、外国の青少年に対して、休暇目的の入国や滞在期間中の旅行などにおける滞在資金を補うために、付随的な就労を認める制度があります。
未来創造人材制度(J-Find)とも共通する部分がありますが、募集要件が異なっており、「ワーキングホリデー制度」のほうが比較的取得しやすい傾向にあります。
このため、未来創造人材制度(J-Find)は各種優遇措置が付された、いわば高学歴版ワーキングホリデー制度のようなものといえます。
申請方法
未来創造人材制度(J-Find)の申請は
- ・4.在留資格「特定活動」を新たに取得する場合
- ・5.ほかの在留資格を「特定活動」に変更する場合
で、やや異なります。
また、申請において、いくつかの注意点もありますので、詳しく見ていきましょう。
申請の流れ
未来創造人材制度(J-Find)制度に必要な在留資格の申請は原則、申請人本人が日本査証申請センターに対し直接おこないます。
このとき、先ほどもお伝えした「在留資格認定証明書」をあらかじめ取得しておくと、日本への上陸許可がスムーズになります。
- ・1.あらかじめ在留資格認定証明書を取得しておく
- ・2.日本査証申請センターに申請する在留資格の変更の場合は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に対し変更手続きをおこなう
まずは在留資格認定証明書の取得が必要
未来創造人材制度(J-Find)を利用するためには、まず申請者が入国前に「在留資格認定証明書」を取得する必要があります。
この在留資格認定証明書とは、海外に滞在している外国人が日本でおこなう予定の活動をあらかじめ入国管理局で審査し、上陸のための要件を満たしていることを証明するための書類です。
そのため、まずは在留資格証明書の交付を受けましょう。
すでに在留資格を取得している場合は在留資格変更の許可申請が必要
すでに在留資格を取得しており、未来創造人材制度(J-Find)によって未来創造人材として日本での活動を希望する場合には、「在留資格変更」の許可申請が必要です。
この場合にも、在留資格認定証明書の申請の際と同様に、各種書類が必要となります。
その後の在留資格の申請については原則として申請者本人がその方の居住地を管轄する出入国在留管理官署でおこないます。
ただし、このときに申請する未来創造人材制度(J-Find)は申請者が申請時点で日本に在留していないことが想定されます。
そこで、受け入れ先となる企業など、あるいは行政書士が『取次者』として申請書類を提出することも可能です。
必要書類
未来創造人材制度(J-Find)制度を利用し、在留資格「特定活動」を取得するために必要になる書類は以下のとおりです。
また、これらは新たに取得する場合と在留資格を変更する場合、また申請者と配偶者や子でもそれぞれ異なります。
すべてに共通する必要書類
まずは以下の書類はどの手続きにおいても必要になります。
- ・在留資格認定証明書交付申請書
- ・縦4cm×横3cmの顔写真1枚(6か月以内に撮影されたもので無帽・無背景で正面を向いていること)
上記の書類は、申請者本人、配偶者や子供など、どの場合でも全員分必要となりますので、必ずご準備ください。
ここから下の書類に関しては、あてはまるものを追加してください。
新たに申請する場合の必要書類
- ・結果通知用返信用定型封筒1通(返信先の宛名を記入)
- ・404円分の切手(定型封筒に貼付)
- ・大学あるいは大学院を卒業または修了し、かつ学士以上の学位を取得していることが証明できる書面(大学の卒業証書のコピー、卒業証明書の原本、大学院の修了証書のコピー、大学院の修了証明書の原本など)
- ・経歴書など)
- ・滞在予定表
- ・通帳のコピーをはじめとした申請人名義の銀行などの預貯金口座の残高がわかるもの
他の在留資格を「特定活動」に変更する場合の必要書類
- ・在留カード
- ・大学あるいは大学院を卒業または修了し、かつ学士以上の学位を取得していることが証明できる書面(大学の卒業証書のコピー、卒業証明書の原本、大学院の修了証書のコピー、大学院の修了証明書の原本など)
- ・修了証明書の原本)
- ・経歴書
- ・滞在予定表
- ・通帳のコピーをはじめとした申請人名義の銀行などの預貯金口座の残高がわかるもの
海外から呼び寄せる配偶者や子の必要書類
- ・結果通知用返信用定型封筒1通(返信先の宛名を記入)なお、扶養者と一緒に申請する場合には扶養者分と合わせ、1通で可
- ・定型封筒に貼付する簡易書留分の切手(ただし申請人の人数によって404円~414円に金額が変わります)
- ・申請人と扶養者の関係を証明できる書類1通(結婚証明書あるいは出生証明書など)
- ・扶養者のパスポートのコピー(顔写真のページまたは在留カードの表裏)
現在日本に滞在している配偶者や子の必要書類
- ・パスポート
- ・在留カード
- ・申請人と扶養者の関係を証明できる書類1通(結婚証明書あるいは出生証明書など)
- ・扶養者のパスポートのコピー(顔写真のページまたは在留カードの表裏)
申請にかかる期間
在留資格認定証明書は、申請から交付までの標準処理期間は1〜3ヶ月とされています。
ただし、必要書類に発行に時間がかかるものが含まれるとその期間は長くなる可能性があります。
また、必要書類のうち在留資格認定証明書の有効期限は交付から3ヶ月となるため、注意してください。
海外に滞在している場合は、3カ月以内に必ず入国し、申請をおこなわなければなりません。
注意点
未来創造人材制度(J-Find)利用における注意点は、在留資格認定証明書の取得にかかわる部分となりますので、ここで確認しておきましょう。
行政書士は在留資格認定証明書交付の申請代理人にはなれない
在留資格認定証明書交付申請については、未来創造人材制度(J-Find)の場合も、申請人本人が外国に滞在中であれば申請代理人が可能です。
また、申請を行政書士に依頼することは少なくありませんが、在留資格「特定活動」においては、申請代理人と認められるのは以下のように定められています。
- ・1.申請者本人が18歳未満の場合、日本に住む親権者
- ・2.申請者本人を雇用している者
- ・3.法務大臣が指定して、申請者本人が所属し活動をおこなう機関の職員
- ・4.法務大臣が指定する活動に則し、その告示をもって定められた者
このため、行政書士はあくまで『取次者』であり、『申請代理人』となることはできず、出入国在留管理局で申請をおこなうのみとなります。
申請人が外国に滞在している場合は『申請代理人』を立てられないことがあるので注意
未来創造人材制度の利用は、大学を卒業あるいは大学院の過程を修了していることが条件のため、対象となるのは基本的に18歳以上の外国人です。
このため、未成年であれば申請代理人になれる親が日本に滞在していたとしても、この制度では在留資格認定証明書の『申請代理人』にはなれません。
また、就職活動であれば、申請代理人となりえる申請人が所属する機関をはじめ、本人を雇用する者、さらには法務大臣が指定する者もいないことになります。
これらの点から、申請人が外国に滞在している場合には、在留資格認定証明書取得のために在留資格「短期滞在」を取得する必要があります。また、取得が難しい場合は、現地の日本大使館に直接申請しなければなりませんので、ご注意ください。
まとめ
国際的な人材獲得競争に対応することはもちろん、日本で就職や起業を検討している外国人にとっては未来創造人材制度(J-Find)は活動の幅をひろげる魅力的な制度といえます。
実際、未来創造人材制度(J-Find)を利用し、在留資格を取得することで次のようなメリットも生まれます。
- ・日本に最長2年滞在期間が可能
- ・特定活動の在留資格が得られ、かつ就職・起業準備活動に必要な就労も可能
- ・配偶者や子も帯同できる
そこで、企業やその人事担当者などであれば、未来創造人材制度(J-Find)について理解を深めておくことは、海外の優秀な人材獲得を目指す際の有効なアピールポイントにもなると考えられます。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
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