日本人はシェンゲンビザ(短期滞在ビザ)が不要?ヨーロッパ渡航について解説
現在、ヨーロッパの31か国ではシェンゲン協定に基づく共通の短期滞在ビザ「シェンゲンビザ」を発給しています。国籍によっては、シェンゲン協定加盟国への渡航に際してシェンゲンビザの取得が義務づけられています。
日本国籍を持つ方は、観光など短期滞在でヨーロッパに渡航する場合はシェンゲンビザの取得が不要です。
ただし、2025年に予定されている欧州渡航情報認証制度(ETIAS)の導入後は、日本国籍保有者もヨーロッパ短期滞在に際してETIAS取得が必要になります。
本記事では、シェンゲンビザ及びETIASなど、ヨーロッパ渡航に際して必要となる手続きについて解説します。
シェンゲンビザ(短期滞在ビザ)とは?
シェンゲンビザ取得を免除されている国籍に該当しない方がシェンゲン協定加盟国に渡航する場合、シェンゲンビザの取得が必要となります。
本章では、シェンゲンビザについて、
シェンゲン協定加盟国内に渡航する際の短期滞在ビザ
シェンゲンビザとは、1985年にルクセンブルクのシェンゲンで調印された「シェンゲン協定」に基づいて発行される、EU諸国共通の短期滞在ビザです。
シェンゲン協定加盟国(31か国)に渡航する際、渡航者の国籍によってはシェンゲンビザの取得が必要です。
シェンゲン協定加盟国
2024年4月現在、シェンゲン協定加盟国は以下の31か国です。
※2024年3月、新たにブルガリアとルーマニアが加盟しました。
地域 |
加盟国 |
---|---|
北欧 |
デンマーク ノルウェー スウェーデン フィンランド アイスランド |
西欧・中欧 |
オーストリア スイス ドイツ リヒテンシュタイン オランダ ルクセンブルグ ベルギー スペイン ポルトガル フランス |
南欧 |
イタリア モナコ マルタ サンマリノ ギリシャ バチカン |
旧東側諸国 |
クロアチア ハンガリー スロバキア チェコ共和国 エストニア ラトビア リトアニア スロベニア ブルガリア ルーマニア |
180日間の期間に最大90日間、加盟国の国々の間を自由に行き来できる
シェンゲンビザを取得すると、「180日間の期間に最大90日間」加盟国の国々の間を自由に行き来できます。
この滞在期間については少しわかりにくいのですが、おおまかにいえば、任意の180日間の間に、合計90日間の滞在が認められることになります。その間に帰国したり、シェンゲン圏外の国に渡航することも可能です。
シェンゲンビザでの滞在期間のカウント方法については後述します。
日本人はシェンゲンビザなしで最大90日間ヨーロッパへ渡航できる
日本国籍を持つ方の場合、現在はシェンゲンビザなしで、最大90日間欧州諸国に渡航できます。
シェンゲン協定により日本国籍保持者はシェンゲンビザ免除される
シェンゲン協定により、日本国籍保持者は90日以内の、就労を目的としない渡航・滞在に対してシェンゲンビザ取得が免除されています。
ただし、91日以上の滞在や、就労を希望する場合はシェンゲンビザ(タイプD)の取得が必要となります。
シェンゲンビザは不要だが今後ETIASへのオンライン登録が必要となる
2025年にETIAS(欧州渡航情報認証制度)が導入された後は、日本国籍を持つ方も事前にETIASの取得が必要となります。
特に犯罪歴や海外でのオーバーステイ歴などがあると、ETIASの発行を受けられない可能性があるので注意が必要です。
シェンゲンビザの種類について
シェンゲンビザには、主にAビザ、Cビザ、Dビザと呼ばれる3つの種類があります。
このうち、長期滞在を目的とする方向けのDビザは、他と異なり、シェンゲン協定加盟国1か月のみの滞在が認められます。
ここでは、タイプAビザ及び、最も利用者が多いタイプCビザについてご説明します。
タイプAシェンゲンビザ(空港乗り継ぎの際のトランジットビザ)
タイプAシェンゲンビザは、トランジット(国際線フライト乗り継ぎ)を目的としたビザです。
タイプAビザを取得することで、シェンゲン協定加盟国の空港で乗り継ぎをして、第三国に渡航することが可能になります。
タイプCシェンゲンビザ(短期滞在ビザ)
タイプCシェンゲンビザは、短期滞在を目的としたビザです。
タイプCビザを取得することで、シェンゲン協定加盟国での観光や親族訪問、短期商用などを目的とした滞在が、渡航1回あたり最大90日まで認められます。
複数回入国可能なシェンゲンビザを申請するための条件
タイプCシェンゲンビザの保有者は、180日間にシェンゲン協定加盟国に複数回入国することが可能です。
タイプCビザの申請にあたっては、以下の条件を満たしている必要があります。
- 滞在目的が観光、商用(会議・商談等)、知人訪問、外交・公用のいずれかであること
- 現地で報酬を得る目的を有しないこと
- 有効期限がシェンゲン加盟国からの出国予定日から3か月以上残っていて、かつ10年以内に発行されたパスポートを所持していること
- 1回あたりの滞在期間をカバーする資力を証明できること
- 滞在目的を証明できる資料を提出できること(観光目的の場合、滞在先のホテルのバウチャー、予約画面を印刷した紙、長距離列車やバスなどの予約画面を印刷した紙など)
基準日からさかのぼって180日の間に累積90日を超える滞在はできない
シェンゲンビザで滞在可能な日数は、「あらゆる180日の期間内で最大90日間」となっています。
この滞在期間は「90/180シェンゲンビザルール」と呼ばれています。
これは、任意の基準の日からさかのぼって180日の間に「累積で90日を超えて滞在することはできない」という意味です。
シェンゲンビザ申請の流れ
シェンゲンビザ申請は、以下の流れで行います。
1.必要書類を準備する
まず、必要書類を準備して、申請書に必要事項を記入してください。
必要書類
シェンゲンビザの申請に必要な書類は以下の通りです。詳細については、加盟国によって異なる場合があります。
1.申請書
- ビザ申請用紙
- 証明写真(3.5cm×4.5cm、背景白1枚:申請用紙に貼付する)
2.パスポート・身分証の原本及びコピー
- パスポート(ビザ失効日=帰国予定日から3か月以上の有効期間と未使用のページが2ページ以上残っているもの)
- パスポートのコピー(メインページと署名のあるページ)
- 在留カードとその両面のコピー(外国籍の場合:ビザ失効日=帰国予定日から3か月以上の有効期間が残っているもの)
3.訪問目的に応じた書類
【出張】
- 出張先の企業・組織などからの招待状(署名、日程や活動及び会議内容などが記載されていること)
【家族・親戚・友人を訪問】
- 当該加盟国在住者からの署名付き招待状(渡航者との関係、滞在理由、滞在期間中の活動などが記載されていること)
- 招待した加盟国在住者との関係を証明するもの(出生証明書、写真、会話の履歴など)
- 招待した加盟国在住者のパスポート(当該加盟国国籍以外の国籍の場合は在留カードのコピー)
【観光】
- 旅行計画書(旅行日程、利用交通機関、訪問予定の国と都市、宿泊予定先、活動計画の詳細)
4.日本との関係(以下から1点以上)
- 有効な日本国ビザ(外国籍の場合)
- 雇用証明書
- 在学証明書
- 日本国籍の方との関係を証明する書類
- 日本で不動産を所有していることを証明する書類
- 日本で事業をしていることを証明する書類
5.旅行保険
- 滞在予定の全期間有効な旅行保険証書の原本及びそのコピー(最低保証額€30,000[495万円])
6.資金(以下から1点以上、原本及びコピー)
- 本人名義の貯金通帳(円単位)の原本とそのコピー(過去6か月分の出入金の記録)
- 親や配偶者など第三者が経済的保証人となる場合:保証人による保証書(実印を押印)、その印鑑証明、保証人のパスポートのコピー及び在職証明書、関係を証明する戸籍謄本または住民票、保証人の銀行通帳原本とコピー(過去6か月分)
無職:保証人による保証書(実印押印)、その印鑑証明、保証人のパスポートのコピー及び在職証明書、関係を証明する戸籍謄本または住民票
7.申請手数料
- 申請を行う加盟国の大使館ホームページ参照(日本円で支払う)
申請書類に記入する項目
シェンゲンビザ申請書の申請書類に記入する項目は、以下の37項目です。
※番号は申請書記入事項の番号です。記入例はシェンゲンビザ取得が必要な日本在住の中国籍女性を想定しています。
申請書の記入項目 |
説明 |
記入例 |
---|---|---|
1. 姓名 |
申請者のパスポートに記載されている姓名 |
ZHANG |
2. 出生時の姓(旧姓) |
上記の姓と異なる場合 |
|
3. 名前(ファーストネーム) |
申請者のパスポート記載通り |
XUE |
4. 生年月日 |
日・月・年の順に記入 |
6 FEB 1987 |
5. 出生地 |
パスポートの記載通り |
SHANGHAI |
6. 出生国 |
パスポートに記載されていない場合も記入する |
CHINA |
7. 現在の国籍 |
出生時の国籍と異なる場合はその国籍も含む |
CHINESE |
8. 性別 |
女性 |
|
9. Civil Status |
法的婚姻状況 |
Divorced(離婚)にX印 |
10. 未成年の申請者の記入欄 |
親権者または法定後見人の氏名・住所・国籍 |
|
11. 身分証明番号 |
該当する場合 |
NONE |
12. 旅券の種類 |
Ordinary passport(一般)にX印 |
|
13. パスポート番号 |
パスポート番号など |
GXXXXXX |
14.発行日 |
パスポートが発行された日 |
11 SEP 2022 |
15.有効期限 |
パスポートが失効する日 |
10 SEP 2027 |
16. 発行機関 |
パスポートの発行者 |
EMBASSY OF P.R.CHINA |
17. 申請者の自宅住所及び メールアドレス・電話番号 |
現在の自宅住所・電話番号・連絡可能なメールアドレス |
5-21-5-201, NISHI-OI, SHINAGAWA-KU, TOKYO JAPAN |
18.他国での居住の有無 |
申請者の国籍と異なる国に居住している場合は居住許可証番号と有効期限を記入 |
YesにX印 PERMANENT RESIDENCE RM1234567 30 NOV 2028 |
19. 現在の職業 |
申請者のパスポートに記載されている職業を記入 記載が現在の職業と違う場合は現在の職業と簡単な説明を記入 |
OFFICE CLERK (FORMER STUDENT) 会社員(元学生) |
20. 雇用主または教育機関 |
勤務先、在学中の学校名前・所在地、無職の場合はNONEと記入 |
PQR CO., LTD 2-26-3-301 , DOGENZAKA, SHIBUYA-KU, TOKYO, JAPAN |
21. 旅行の主な目的 |
該当するものにX印 |
Tourism(観光)にX印 |
22. 目的地 |
主な滞在国 |
GERMANY |
23. 最初の入国加盟国 |
最初にシェンゲン圏に入国する国 |
SWITZERLAND |
24. 入国回数 |
滞在中に加盟国への入国と出国を希望する回数で該当するものにX印 |
Double entry(2回)にX印 |
25. 滞在期間 |
10-DAY |
|
26. 過去3年間に発行されたシェンゲンビザの数 |
YesかNoにX印 の場合は発行日と有効期限を記入 |
NoにX印 |
27. 指紋採取履歴の有無 |
申請者が過去にシェンゲンビザ申請時に指紋を採取されたことがあるか否か Yesの場合は日付(わかる場合) |
NoにX印 |
28. 最終目的国の入国許可証 (取得している場合) |
最終目的地が加盟国以外の場合はその国で取得したビザの番号と有効期限を記載 |
Issued by NONE |
29. シェンゲン協定加盟国への入国予定日 |
10 AUG 2024 |
|
30. シェンゲン協定加盟国からの出国予定日 |
19 AUG 2024 |
|
31. 加盟国内の招待者 |
申請者を招待した人の氏名 または滞在するホテルの連絡先 |
HOLIDAY INN ZURICH MESSE WALLISELLENSTRASSE 48, ZURICH, 8050 TEL: +41-443161100 |
32. 招聘機関名 |
商用などの場合、申請者を招聘した、または受け入れる予定の機関 |
NONE |
33. 滞在費用負担者 |
本人(左側)スポンサー(右側)いずれの場合も該当する支払い方法にX印 |
by the applicant herself (本人負担) 支払方法 Cash(現金)、 Credit cardにX印 |
34-35.EU加盟国、EEA加盟国、スイス国籍の家族がいる場合氏名等記入 |
NONE |
|
37. パスポートと同一の署名 |
未成年の場合は親権者または法定後見人の署名 |
(本人署名) |
申請費用
申請費用は、日本円で10,000円~15,000円程度です。ほとんどの大使館では、現金、クレジットカード、デビットカード、為替、小切手での支払いを受け付けています。
ただし、事前にどの支払い方法が可能か確認する必要があります。
2.加盟国の大使館や領事館で審査と面接をしたのちに発給
シェンゲンビザの申請は、訪問する加盟国の大使館または総領事館で行います。
複数の国を訪問する場合は、主たる滞在目的がある国の大使館/総領事館で申請を行ってください。
主たる滞在目的がない場合は、最初に訪問する国の大使館/総領事館で申請することになります。
申請を行った大使館/総領事館で面接があり、2週間~1か月ほどの審査期間を経て発給されます。
ヨーロッパ渡航におけるビザの申請は行政書士事務所に依頼しよう
シェンゲンビザを始め、ヨーロッパ各国のビザ申請手続きには多種多様の書類を作成・収集する必要があります。
そこで、ビザ申請手続きを専門とする行政書士事務所に手続き代行・サポートを依頼することをおすすめします。
本章では、ヨーロッパ渡航ビザの申請手続きを行政書士に依頼するメリットをご説明します。
ビザ取得の経験や知識が豊富
ビザ申請手続きを専門とする行政書士は、ビザ取得の経験や知識が豊富です。
2025年に欧州で導入が予定されているETIAS(欧州渡航認証制度)に対しても、最新の情報をフォローして申請者をサポートします。
ETIASが許可されないケースもある
シェンゲン協定加盟国では、2025年から欧州渡航情報認証制度(ETIAS)の導入が予定されています。
ETIAS導入後は、日本国籍を持つ方も、ヨーロッパに渡航する際には事前にETIASを取得することが義務づけられています。
ETIASは、以下のような事由があると、申請が却下される可能性があります。
- 過去にオーバーステイの履歴がある
- 何らかの理由により第三国から強制送還の対象となった履歴がある
- 重大な犯罪歴がある
- 犯罪の容疑で捜査を受けている
- 紛争中の国への渡航歴がある
- 申請書に記載された情報が不正確、虚偽、または意図的に誤解を招くものである
日本人でETIASの要件を満たさない場合、シェンゲンビザの申請は不可!別のビザ申請が必要
日本国籍保有者でETIASの要件を満たさない場合、シェンゲンビザの申請は認められません。
この場合、渡航を希望する国のビザ申請が必要となります。
ETIASが不許可の場合は異議申立てができる
ETIASの申請は迅速に行われ、多くの場合は即日審査結果がメールで通知されます。不許可または却下の場合は、結果とともに理由が通知されます。
同一のメールには、異議申立てを希望する場合のリンクが記載されています。不服審査は、申請却下の決定を下したEU加盟国の当局が行います。
却下理由が書類の誤記載や不備であった場合は、修正等を行った上で再度申請することも可能です。
状況に応じた迅速なビザ申請の手続きができる
ETIAS導入後は、日本国籍保有者も通常の短期滞在ビザと同様の書類作成・収集が必要になります。
行政書士に依頼することで迅速にビザ申請の手続きができます。
正確な最新情報をもとに申請できる
ETIASは不法移民対策とテロ対策強化のために設けられたシステムなので、申請要件は複雑で厳しいものとなっています。
また、導入後に要件の細部が変更される可能性もあります。
ビザ申請手続きを専門とする行政書士は、正確な最新情報を確認しながら申請手続きを行うので、書類不備や誤記載などのミスなく迅速に手続きを進められます。
情報収集のための時間を節約できる
ビザ申請で手間がかかることの一つに、制度の変更の有無を確認するなどの情報収集があります。
ビザ申請手続きを専門とする行政書士は、当該ビザに関する最新情報をフォローしているので、情報収集にかかる時間も節約できます。
まとめ
これまで、日本国籍を持つ方はヨーロッパでの短期滞在に対してビザ取得が免除されていました。
しかし、2025年に予定されているETIASの導入後は、通常の短期滞在ビザ申請と同様の申請書類の作成や収集が必要となります。
さらにETIASの審査は厳格に行われるため、申請者個人が行うと記載事項不一致や書類不備などにより不許可になる可能性があります。
ビザ申請の専門家のサポートを受けることにより、ETIASの認証を確実にするために適切な書類を作成・収集できます。
また、代行可能な手続きはすべて任せられます。
ヨーロッパ渡航をご希望の方は、ぜひビザ申請を専門とする行政書士にご相談ください。