国際結婚で結婚式をしない場合に在留資格審査に与える影響は?
中長期の在留資格がない外国人と日本人が結婚をした場合、日本で一緒に生活するためには、外国人は「日本人の配偶者等」という在留資格を取得する必要があります。
そこで、この「日本人の配偶者等」についてインターネットで調べると、入管庁への提出書類に「結婚式の写真」とあるのを目にする方が多いのではないでしょうか。
また、実際にご自身で審査書類を記入しようとすると、「質問書」という提出書類の中に、結婚式(披露宴)の時期や参加者について記載するところがあります。
では、実際に「結婚式の写真」の提出や「結婚式の時期・参加者」の記載は必須でしょうか。
1 結婚式について入管庁が聞く理由とは?
入管庁に提出する書類に「結婚式の時期や参加者」の記載がある理由はなんでしょうか。
入管庁は公的書類で証明される入籍日の他に、なぜ「結婚式」の時期が知りたいのでしょうか。ましてや参加者まで知りたいとはどういうことでしょうか。
結論からいうと、入管庁が確かめたいのは「結婚の信憑性」です。
今回の結婚がいわゆる偽装結婚の場合は、外国人は在留資格だけ取得できればよいので、なるべくお金をかけたくないというのが心情でしょう。
披露宴まで開くとなると多くの場合、何十万~何百万円という費用がかかります。したがって、結婚式・披露宴を行うということは、お二人の愛が真実であることを示すものなので、結婚の信憑性が上がるということにつながります。
また、結婚式・披露宴では家族を招待する方がほとんどでしょう。そうであるにもかかわらず、もし家族が参加していないのであれば、入管庁は結婚の信憑性を疑います。
「家族を参加させたくない理由があるのではないか」「形式だけの結婚式だったのではないか」と疑ってきます。
このように、基本的に入管庁は疑いの視点から審査していると考えた方がいいでしょう。
では、なぜ入管庁はこんなにも疑いの視点を持っているのでしょうか。
2 「質問書」の項目
その前に、入管庁への必須の提出書類である「質問書」について見てみましょう。
質問書では、以下の内容を聞いてきます。
①申請人(外国人)と配偶者に関する個人情報
②結婚の経緯
③夫婦間の会話の言語
④婚姻届の証人について
⑤結婚式(披露宴)の時期・場所・出席者について
⑥結婚歴
⑦来日回数・時期
⑧配偶者が申請人の母国へ行った回数・時期
⑨申請人の退去強制の有無等
⑩親族についての情報
⑪親族で結婚を知っている人はだれか
このように質問書では、結婚に関して色々聞いてきます。他の在留資格ではこのような質問書はありません。
なぜ、配偶者ビザだけこのような質問書を提出しなければいけないかというと、それは偽装結婚の多さにあります。
3 入管庁が疑う理由
先ほど述べたように、配偶者ビザ取得の際には、入管庁は疑ってかかっていると思った方が良いでしょう。
これは、偽装結婚の多さに原因がありますが、偽装結婚が多いのは、偽装結婚が容易かつその利点が大きいことが理由です。
就労ビザとは異なり、配偶者ビザには学歴はもちろん不要です。したがって、だれでも申請ができます。
また、人の本当の心は外からはわからず、ましてや書面ではもっとわかりません。したがって、二人が愛し合って結婚しましたといえば、すぐに否定することは難しいでしょう。
これが偽装結婚が容易といわれる所以です。
そして、配偶者ビザを取得する利点としては、配偶者ビザには就労制限がないことが挙げられます。様々な要件をクリアして取得できる「技術・人文知識・国際業務」ビザといった就労ビザでも就労制限があり、やりたい仕事を何でも自由にできるわけではありません。
一方、配偶者ビザは就労制限がなく、現場作業や風俗関係の仕事も可能になっています。
これは、「学歴や実務経験がないけど日本で働きたい」と思っている外国人にとっては、とても魅力的なビザになります。したがって、偽装結婚をしてまで取得したいと考える外国人が多くいるのが実情です。
このような点から、入管庁は結婚自体を疑わずにはいられなくなっているのです。
4 結婚式を挙げていない場合の影響
「結婚式の写真」の提出は、結婚式を挙げていることを示す証拠になるので、結婚式を挙げている場合は、提出した方が良いでしょう。
では、結婚式を挙げていない場合は質問書にも書けないため、不許可となってしまうでしょうか。
入管庁は結婚の信憑性があるかを確かめたいので、結婚式の有無は一つの判断材料に過ぎません。したがって、結婚式を挙げていない場合であっても、そのことで直ちに不許可となるものではありません。
実際に、弊社のお客様でも結婚式を挙げていない方は多くいらっしゃいます。もちろん、配偶者ビザを取得できています。
もっとも、結婚式をしない場合は、少なからず在留資格審査に影響を与えます。ただ、先ほど述べたように、結婚の信憑性の材料に過ぎないため、他の点で真実の結婚であることを証明すればよいということになります。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
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